16話
遅れて申し訳ありません。
難産でした。
私は街を出、街道に入った。
「メニュー、装備選択」
声に出してメニューを開き、装備選択画面へ移動する。
別に声に出さなくても良いけど、その場合はちょっとだけMPを使ってしまう。
まぁ、あのときは、『装備選択、猫耳のカチューシャ』なんて言いたくなかっただけだけど。
「黒鉄刀」
その言葉と共に私の手の中に現れたのは、ずしりと重く、黒い刀。
柄は漆塗りの木で、同色の鞘に一切装飾はない。
ゆっくり抜いてみると、濡れたような模様を持つ白刃が現れた。
黒とは反対色のその刃は驚くほど薄く、もはや儚さを感じる程だ。
「……」
予想外の美しさに思わず見とれつつ、私は黒鉄刀の性能確認をした。
黒鉄刀
攻撃力280(380)
絶対不壊 防御力20アップ技量補正
高っ、性能高っ。思わず心の中で突っ込んでしまった。因みに、~補正とは、~に入るステータスの数値で攻撃力が+αされる仕組みだ。
これは本格的に、ハルナさんに何かしないとダメだ。色々と借りを返さなくてはいけないし、何より私の気が済まない。
「…まぁそれは後で考えるとして」
今は隣町へ行くのが先だ。
1つ息を吐き、私は、腰に黒鉄刀の新たな重みを感じながら、クエストを受けるためリーディに向かった。
「あ……」
私の目の前には、半透明の板がある。
システムウィンドウなのだが、それはいつも私が出すものではなく、幅8メートル、高さ5メートル程の大きなものだった。
そこには、今いるリーディで行われるイベントの詳細が書いてあるのだけど、参加条件の一項に、このような記述があった。
『パーティで参加してください』
無理。絶対に無理。
「はぁ」
わざわざここまで来たけど、無駄足だったなぁ。
とりあえず始まりの街にもう一回戻ろうかな。
「あの……」
不意に、後ろから声が聞こえてきた。似たような事が現実であったなと、ハルナさんの顔が頭に浮かぶ。
ん? でも、ハルナさんはインできないって言ってたような。
ハルナさん以外に私に声かける人居ないし、きっと人違いだ。
「あの……すいません」
どうやら違うみたいだ。私は声の主へ顔を向けた。
「あ、やっと気づいてくれた」
私に声をかけたのは、小柄な女性だった。何とも保護欲を掻き立てられる容貌をしており、ハルナさんとは真逆のおどおどした話し方が、それを助長させている。
彼女は、私が顔を向けると深くお辞儀をした。朱色の長い髪が揺れる。
「……なんでしょうか」
「えっと…このクエスト、受けるんですよね?」
「ええまぁ。パーティが無くて、帰るとこでしたけど」
口にしてみて、自分をボッチだと公言している事に気づく。
しかし彼女は馬鹿にすることなく、むしろ明るい笑みを浮かべた。
「本当ですか!? パーティの誘いも来てないんですか?」
「え、ええ」
「私もなんです! 是非、私とパーティ組んでくれませんか?」
「え」
……どうやら、私はパーティの誘いを受けたらしい。
補正で得られる攻撃力
D25
C50
B100
A150
S??
上昇が大きいのは、まず~補正がついている武器が少ないからです。