14話
遅れてすいませんでした。
やはり私は現実の描写が苦手のようです
1月11日 誤字と改稿忘れのため修正しました。
「わっ! これ美味しー!」
「あ、ありがとうございます」
どうしてこうなった。
今私とハルナさん、もとい木崎 晴さんは、自宅にいる。もちろん私のだ。
あのあと、色々と聞きたいことが多すぎておろおろしていたら、晴さんが場所を変えようと言ってきたのだ。
それに対し、私はヨネでも行こうかと誘ったのだが、買った食材を家に持って行かなくてはいけないので一度家に帰ると伝えたら、付いてきてしまったのだ。
そして、私の作ったそばを美味しそうに頬張っているというのが、現状である。
しかも聞いてみれば、ノリで他人の家に無断でついてくるようなこの人が、私の学校の三年生だというのだから驚いた。
つまり、晴さん、ではなく、晴『先輩』だったのだ。
「こんなもの食べられるなら、会奈ちゃんと結婚してもいいよ!」
そう、この人が。である。
私の家なので追い出そうと思えば追い出せるが、私も少し申し訳ないことをしてしまったため、余程やかましくない限りは許容しよう。
「いやっふぅ!」
……早速追い出したくなってきた。
「……近所迷惑ですよ」
「あ、ごっめーん。あまりに美味しくてつい」
「そう言われると、怒れないんですが…」
「えへへ」といいながら頭をかく晴さん。しまった、忘れていたがこの人は商人。交渉や誘導は大得意だった。
「……で、会奈ちゃん」
私が食後のミルクティーを受け皿に置くと、晴さんが唐突に話しかけてきた。
先程とはうってかわり、真剣な表情。
「……なんでしょうか?」
「昨日、私は君に信用をくれって言ったよね。返事は頂けなかったけどさ」
「あ……あの時は、すいませんでした」
私は、あの問いに対し答えを返すことが出来ず、結果的に無視してしまったのだ。
「良いよ。それに、あれは私が悪かったんだし」
「え……?」
「私、知ってたんだ」
一瞬、言われた意味が分からなかった。
それを知らない晴さんは、次々と言葉を発していく。
「知ってたといっても、気づいたのは君が刀を貰うの断ったときの反応から。つまり私は、君が『あのいじめ』の被害者かも、って気づいていながらあんなこと言っちゃった。ホントにごめん」
「………」
晴さんが言いたいことは、大体理解した。人の感情に疎い私でも分かるほどに、自責の念を抱いてることも。
それに対して、私の謝罪は何なんだろうか。不信を言い訳にして、大した誠意もない形だけの謝罪。
心には、心で返さなくてはいけない。
「こちらこそ、すいませんでした」
「……良いの? そんな簡単に許して。自分で言うのも何だけど、私の言動は、場合によればいじめともとれるんだよ?」
「ええ」
私が毛嫌いする人間は、他人を虐げてまでその人の好感度をあげようとする人。他人を糧にするのを悪いと思わない人だ。
彼女はどちらにも当てはまらないどころか、正反対ですらある。
まだまだ治る気配のないこの人間不信も、彼女なら……
「ホントに、ありがとう」
「もう気にしないでください。私としても、あまり触れたくないので」
「……そっか」
それよりも、聞きたいことがある。
「そういえば、何で私が『あのいじめ』の被害者だと?」
「ああ。この地方訛りが特徴的だからね。まず君がこの辺りの人かもとは初対面から思ってた。私は中3で転入してきたからそこまででもないけどさ」
「あ、じゃあ私の訛りで?」
「うーん、会奈ちゃんあまり訛って無かったから、それはきっかけだね。確信したのは、私が信用してくれって言ったときの表情かな……って、ごめんごめん。結局戻っちゃったね」
やっちゃった。という風に顔をしかめながら、両手を顔の前で合わせて謝る晴さんに「気にしないでください」と手を振りながら答える。
「それにしても、凄いですね。表情や訛りでそんなに特定できるなんて」
「まぁ、商人には必須だからね。『avil・anel』って無駄にリアルでさ。NPCですら、言われた言葉によって表情が変わったり、言葉の発音だったりが変わるんだよ。だから交渉だったりとか、そういうシステム外スキルが必要なんだー」
「な、なるほど」
なかなか難しそうだなぁ。少なくとも、私には無理だとわかった。
「あ、もうこんな時間じゃん。ごめん、私帰るね。部活が長引いたって言い訳も効かない時間になっちゃったし」
「そうですか」
呼んだ覚えがないから、謝る必要が無いなんて口が裂けても言えない。
「んじゃあ、ごちそうさま。私今日はログインできないけど、会奈ちゃんは来てよ。面白いのが見れるよ」
「面白いの? 何ですかそれ」
「秘密。見てのお楽しみだよ。じゃあね」
そういい残して、晴さんは玄関を出ていった。
私の『ハルナさん(晴さん)の習性メモ』に、嵐のような人、と追記された。