The Man from Nowhere
「ちょ……ちょっと待って……そ……それ……まさか……」
僕と同じパーティーのメンバーだった筈のシュネとローア……。
そう名乗っている2人に会ったはいいけど……わからない。
本物のシュネとローアなのか……何かの理由で、そう名乗っている別人なのか……。
そして……やっぱり……思い出せない。
シュネとローアの顔やしゃべり方の特徴……何も……。
冗談じゃない。
やっぱり……。
「僕は……『聖騎士ロンメル』なの……」
「そうだよ。2号機だけど」
「2号機?」
「『聖騎士ロンメル』ってのは芸名。あんたの前任者は……精神操作で記憶を封じてるとは言え、マズい事を知り過ぎてた。だから、新しい『聖騎士ロンメル』を作った。たまたま、良く似た顔の素体が手に入ったんでさ……魔法の美容整形で初代そっくりの顔に変えて、自分が『聖騎士ロンメル』だって偽の記憶を植え付けてね」
「な……何で……そんな事をする必要が有るの?」
「ま……色々とね。半分は冒険者ギルドの都合、半分は……あたしとお姉様の都合」
「ね……ねえ……芝居みたいに、悪役が自慢気に自分の悪事の詳細を説明してくれたりとか……」
「あんたは急拵えの2代目『聖騎士ロンメル』なんで、あたしらが今までやってきた悪事を自慢気に説明してやっても……それを理解するのに必要な前提知識が無い」
僕は……ベッドに縛り付けられ……これから、あのみじめに死んでいった元冒険者達と同じ半人半魔の改造人間に変える為の手術を受ける所だった。
手術用具は……2種類しか無い。
頭に穴を開ける為のドリルと……作り物の……でも、呪われたマジックアイテムである「角」。
「作り物の角を頭に付けて、自分は魔族になったと思い込んで、町中で暴れた馬鹿が居たんで、それをヒントにしたんだ。いいアイデアだろ?」
「で……でも……その角付けたら……」
「大丈夫、改良型だから、前のヤツより魔力そのものは落ちるけど、筋肉が膨張し過ぎて動けなくなるなんてマヌケな事は無い。ああ、そうだ。今の『邪悪騎士エルヴィン』が、いよいよ壊れたら……あんたを次の……あたしらの表向きの大将……2代目の『邪悪騎士エルヴィン』にする手も有るか……」
そう説明しながら、ローア(多分)は、僕の頭に穴を開ける為のドリルの調子を確認していた……。
「じゃ……じゃあ……これだけは教えて……。僕は……本当は誰だったの?」
「誰でもない」
「誰でもない人間なんて居る筈が……」
「『誰でもない』が言い過ぎなら……名前は無かった」
「えっ?」
「冒険者ギルドが、ドワーフやゴブリンの素体にする為に生み出した小人症の家系……その家系から突然変異か先祖返りかで生まれた普通に近い体格の人間……同じ家系の奴から『出来損ない』と見做され、名前さえ与えられずに虐待され続けた哀れなガキ。……それがお前だ」




