(11)
この都市に出現した魔物達同士で、勢力争いが起きて……その勝者になったのは……邪悪騎士エルヴィンを名乗る奴らしかった。
そして、僕は何故か、その邪悪騎士エルヴィンとか言う奴から指名手配されていたそうだ。
この都市が魔物達の巣窟になる切っ掛けになった、あの夜の火事……それを起こした奴を生きたまま連れて来いと……。
ああ……。
ほんの数日前の事なのに……遠い昔みたいだ。
自分がやった事の……筈……なのに……自分がやったって実感が無い……。
あれ?
ここは……?
かつての冒険者ギルド本部。
僕を連行した暴徒達は……ゴブリンから、大金が入ってるらしいズダ袋を受け取る。
金なんて……この状況で何の役に立つか判んないけど……。
「言ッタダロ……出来損ナイノのっぽガ……オ前ハ……所詮……出来損ナイダ。出来損ナイノ癖ニ、下ラナイ夢ヲ見タ神罰ダ……。俺達ヲ『ざまぁ』出来ルトデモ思ッタカ?『ざまぁ』スルノハ俺達ダ。『ざまぁ』ッテノハ、オ前ミタイナ出来損ナイジャナクテ、俺達ミテェ〜ナ、マトモナ人間ノ方ガヤルモンナンダヨ……ケケケケケ」
縛られたままの僕を……この建物内のどこかに連れて行こうとしているゴブリンは……意味不明な事を言っている。
「な……何を言ってるんだよ? 人間って言うのは僕みたいなのの事で……お前は……ゴブリンだろ」
「違ウ。忘レタカ? 俺達ノ村デハ……俺達ミタイナノガ、マトモナ人間……オ前ハ……神様ニ引キ取ラレル事ガ無イ欠陥品ダ」
「神様? どんな神様だよ?」
「ココガ……神ノ館。神ニ選バレタ、まともナ人間ハ……ココデ……新シイ姿ニナリ、神ニ仕エル僕トシテ、崇高ナル御役目ヲ担エル。ソシテ、御役目ヲ果タシテ死ネバ、天国ニ行ケル。ダガ、欠陥品トシテ生マレタオ前ハ……欠陥品ノママ死ニ地獄ニ堕チルダケダ」
何を……言ってるんだ……。
いや……何かが……。
『冒険者になってランキング1位になる? 夢見てんじゃね〜よ、ばぁ〜か♪』
突然……頭に浮かんだのは……子供の頃の記憶。
僕をいじめた奴を見返してやる為に……冒険者になった筈……。
でも……記憶の中のいじめっ子達の体は……。
小さい……。
何で……?
何で、僕よりも小さい奴らが……いくら集団とは言え、僕をいじめる事が出来たんだ?
いやだ……。
だから……僕は……誰……?
「連レテマイリマシタ」
「そいつだけ、この部屋に入れて……お前は下がれ」
「ハイ……」
ギルド本部の地下の一室。
どうやら、ここが……僕の……冒険の……旅の……人生の終着点らしい。
そこに居たのは……。
3人。
人間? 人間とエルフ? 何で、魔物じゃない奴らが……魔物同士の内輪揉めの勝者なんだ?
1人は顔まで隠れる鎧に腰にはサムライのカタナ風の曲刀。
1人は……如何にもな「聖女」風の格好の人間の若い女。
もう1人は……魔法使い風の格好の若いエルフの女。……って言ってもエルフなんで実際の年齢は知れたモノじゃないけど……。
「あ……あ……え……えっと……どこかで見たような顔……」
そう言った奴が……おそらく、邪悪騎士エルヴィンを名乗ってる奴なんだろう……。
でも……その口調は……威厳もクソもないマヌケな……何か……混乱してるような声。
「おい、シュネ……ローア……何で……こいつの顔は……」
待て……その名前は……。
邪悪騎士エルヴィンらしき男は兜を取った。
「ど……どうなってんだよ? 何で……こいつの顔……俺とそっくりなんだよ?」
兜の中から出て来た顔は……顔は……顔は……ああああ……そ……そんな馬鹿な……。
聖女風の姿の女は……聖女らしからぬ舌打ち。
「ま……まさか……手前だったとは……聖騎士ロンメルの2号機」
「おい……ローア、何を言ってる。俺の2号機? ドワーフじゃあるまいし……」
「お前、本当に底抜けのマヌケだな……。小人症の人間をドワーフやゴブリンに改造して、使い捨てにするような組織が……普通の人間を使い捨てにしないとでも思ったのか」
その時、エルフの魔法使いが……邪悪騎士エルヴィンだか……もう1人の僕だかの頭に手を置いた。
「ふにゃっ?」
ドタン……。
邪悪騎士エルヴィンだか……もう1人の僕だかは……マヌケな声と共に……床に倒れた……。
「あの……お姉様……こいつ、精神操作のかけ過ぎで、脳味噌ブッ壊れかけてんで……」
「判ってるわよ。でも、丁度良かったじゃない。代替機が、ここに居る」




