(4)
芝居や吟遊詩人の詩の定石通りなら……主人公は中盤で最大の苦境に陥る。
でも、仮に、僕が何かの物語の主人公だとしても……この苦境を打開出来そうに無い。
いや、まさか、本当に僕が何かの物語の主人公だった場合……まだ、物語は序盤で、これから更なる地獄のズンドコが待っているのか?
僕は……路上で吐いた。酒なんて、とっくに抜けてて、胃の中には何も残ってない筈なのに……吐き気だけは酷い。
一緒に居るシャロルとジュリアの服はボロボロで体中痣だらけ……何が起きたかは小説投稿サイトの規約で詳しくは書けないけど……読者の皆さんの御想像通りか、それより更に酷い事だ、とだけ言っておこう。
「もう……やだ……」
路上にうずくまって泣き出してるシャロルと、それをなぐさめてるジュリア。
「あ〜……マズいとこに居合わせたようだな……出直すか、大将?」
「その方が良さそうだな……。全く……」
僕は……その声のする方を見る。
そこに居たのは……。
「えっ?」
青く染められた革鎧を着た男と、赤いマントの白髪交じり髭の禿頭の魔法使い。
スーパーヒーローギルドの中でもトップ級の実力者である通称「主君なき戦士」。
退魔師ギルド最強の魔法使いと言われる通称「大賢者」。
「あ……あの……何故、あなた達が……ここに?」
「冒険者ギルドのかつての本部に潜入する必要が有ってな。ある程度でいいから間取りを知ってる者が必要なんだ。そこで、冒険者ギルドの元メンバーを片っ端から当たっていたのだが……えっと……あまり、そう云う話をする雰囲気じゃなさそうだ……。あ……これも無神経な言い方かも知れないが……」
「ど……どう云う事ですか?」
「かつての冒険者ギルド構成員が、次々と問題を起こしてる事は知っているな? 大半は移籍後の仕事が巧くいかなかった事による過度のストレスによるものだが……少数ではあるが『本物』が居るらしい」
「ほ……本物って……?」
「経緯までは判らんが……本当に何らかの邪悪な力に取り憑かれ半ば魔物と化した奴が居るようなんだ。そして、そいつの拠点こそが……冒険者ギルド本部の地下だ」
「え……っと……何者なんですか、そいつは?」
「少なくとも姿は若い男。『邪悪騎士エルヴィン』と名乗っているそうだ」
エルヴィン? でも……そんな名前の冒険者なんて……?
「聞いた事がない名前なんですが……」
「おそらくは……偽名だろう。そいつが、自分が置かれている現状に不満を抱いている、実力は有るが今の仕事が巧くいっていない冒険者を扇動しているのだ。そして、テロリストと化した元冒険者にゴブリンなどの下級モンスターを提供しているらしい」
「やめようよ……嫌な思いをするだけだよ」
「そうですよ」
シャロルとジュリアは……そう言った。
「そうだ……強制は出来ん。我々も駄目元で頼んでいる」
ああ……シャロルとジュリアの言う通りになりそうな気はする。
でも……。
「やります。やらせて下さい」




