上洛準備は後顧の憂い無く
年が明けて戦いも小競り合い程度で平穏な日々が続く、北条に対する監視を強め今川とも三河の一向がいるので停戦をしつつ様子を見ている。
内政は吉原城を拡大し城下町を整備して港も大きく波が入らぬように石を防波堤のように沈めて多数の船が往来しており賑わい始めている
農業は関東武者のまつえである農民の抵抗はなかなか氏康もてこずった位なのだが信春(馬場)がうまく切り盛りしており私は道の整備に全力を向けていた。
「そこを削ってその土で埋めてしまい斜面にはこの木を植えよあまり密集しないように管理を徹底させよ」
数十年の管理が必要だが道が踏み固められて広くして歩きやすくしており国道や県道のように優先順位を決めて足軽や金を払い農民を動員して行っていく、運搬用の馬や荷車も行き来するため細かい石を敷き詰めて削れた所は領主の責任で補修させることにした。
「徳川からの援軍か、一向衆も相変わらずだな」
三河は混沌とした状況が続き家康も元家臣からの依頼で出兵しており秋山も与力として出陣している。
松平元康と坊主と農民が三河に敵がいなくなった空白地帯になり主導権と自由を求め争いが絶えず、坊主は長島の一向衆と元康は今川に農民と元康に組しない松平の家臣は家康に援軍を求め代理戦争さながらに戦い続けており手を出したくはないが三河の今後の覇権を得るために兵をだし続けていた。
「長島を叩けばだが遠いし信長が尾張と美濃を押さえるまで忍の一文字か」
秋山には必要なら兵糧や兵を援軍を送りながら対応をしていった。
「輝虎殿が芦名へ出兵をするので援軍をと言うわけか」
兵を率いて上洛をするため揚北衆にちょっかいをかけてくる芦名を討伐すると言うことで同盟国として依頼が来たと言うことで評定での話となる。
「上洛をするため後顧の憂いなくと言うわけだろう、我々もそれに合わせてと言うことだが兵は1万、北信濃経由で出陣する。今回は東だが次回は西だ」
そう言うと上洛を皆意識して士気が上がり集結場所に到着をした。
「信輝殿ご苦労、感謝する」
相変わらず生真面目に対応する輝虎に笑顔で挨拶を返すと出陣する。
場所的には今の新潟郊外から猪苗代迄抜けられる道がありそこを進んでいった。
「しかし芦名盛氏はなかなかの武将と聞いておりますが、当然伊達晴宗が援軍を出してくると思われます」
こちらは2万3千で向こうも同じくらいと言うことだが、
「本来なら将軍をお助けするために協力をすべきものを、伊達も奥州探題であろうに」
輝虎の考えに苦笑したくなるが自分にとっては天皇は大切でも将軍はどうでも良いと考えているのでこのまま泥沼化しそうな状況に不安を隠せず、
「三好討伐は氏康殿も当然参加されるのでしょうか」
「伝えてはいるが建て直しに時間がほしいと言い今回もじたいしてきた」
そりゃ今出せる余力は無いと思うが数年後に討伐で疲弊した武田と上杉に反旗をひるがえす事になるかもと思い、
「それでは兵糧などの補給を出してもらうようにしてはいかがかと」
「そうだな伝えておく」
その短い返事が家臣を不安にさせ離脱してしまうことになりうるのだがこれは良い意味でも悪い意味でも輝虎の持ち味と諦めながら武田はどうするかと考え織田と斎藤と共に連合軍を合流させるのもと思いながらすすんだ。
先ずは阿武隈川をはさんでこちら側にある下荒居城を包囲した。
「対岸に芦名伊達の連合軍3万」
予想より多いが輝虎は気にすることもなく評定を行う、
「車懸の陣で突破を計る。信輝殿には両翼から叩いてもらいたい」
一万三千の上杉勢が先鋒となり両翼に四千ずつ信春と昌景が率いて本陣は私の二千で必勝を確信した後がない陣で迎え撃つ、
「しかし戦場でのあの自信は軍神といって良いな昌信(高坂)」
「確かにあの自信は神がかっているといってよいですが、味方的には迷惑と言ってよろしいかと」
強いのは良いが周りは引っ張られ余計な損害を出してしまうことにもなり戦場の華と言える単騎の突撃は憧れる若者を無用に犠牲にしてしまうので嫌われており慶次郎の事で確かに困ったよなと昔を懐かしみながら芦名と伊達に襲いかかる越後の龍を見続けた。
伊達勢は魚鱗の陣形で上杉勢に楔を撃ち込み回転を止めようよしたが逆に先から次々と崩されていく、
「隊列を組ゆっくりと前進させよ」
諏訪太鼓のテンポが大きくひとつづつ鳴り響き信春と昌景が整然と両翼から流れてくる敵を討ち取っていく、さながら回転する鋸の刃で芦名と伊達の木を削り、残りかすを武田が吹き飛ばしており耐えられなくなった双方は崩壊し始めた。
「よし両翼を伸ばして左右に鉄砲隊を展開させよ」
諏訪太鼓が大きく3つ叩き、バチをロールさせて途切れぬ音をつくりだし再度3度大きく叩きを繰り返していくと一番大外に鉄砲隊が伸びて流れ始めた敵を打ち倒し始めた。
「上杉勢陣を分裂させ個別に突撃を開始しました」
私が手をあげると太鼓の音はゆっくりと単純な音の繰り返しにかわり信春と昌景は鉄砲隊を残して突撃を開始していき私は鉄砲を吸収すると周囲を警戒しながら戦利品を回収して下荒居城を包囲した。
「戻ってくる前にって降伏してきたか」
軍神の恐ろしさを目の前で見せつけられ城は降伏してきたので入って待機しているとようやく帰陣してきた。
「大勝ですな、城は引き渡します」
兵糧以外は戦利品としていただき今回の遠征をどうするのかと思って評定を待つ、
「黒川城を落とすぞ」
さようですかと思いながらそのまま東へ阿武隈川を渡り黒川城を包囲した。
士気の上がる上杉勢が攻城を始めてしまい武田勢は周囲の警戒と遮断を家臣達が不満に思いつつもおこなう、
「戦利品も相当数得ることができそれを恩賞として与えるから我慢してくれ」
余程の業物以外は持って帰る面倒があるので家臣に渡していき帰りの輸送に手間をはぶきつつ攻城を見続けた。
「鉄砲隊をお貸し願いたい」
一週間が過ぎ落ちないのに業を煮やしたのか依頼が来たので昌景に引きいらせ向かわせる。
後年会津若松城へと改築されたがそれでも堅城にはかわらずに上杉勢もてこずっていた。
「揉めている様です」
数刻後に昌景からの知らせで向かうと輝虎配下の色部勝長が指揮を渡せと言っている。
「我らの指揮下に入ったはずだなれば当然ではないか」
どうやら武田を格下に上杉が今回は主で戦っているせいかもしれぬが、
「我らは盟友として輝虎殿のお願いできている」
「なれば我々に指揮を渡しても良かろうぞ」
勝長って細かいことにも難癖つけてくるのを思いだしのらりくらりと話をしていると怒って刀を抜いた。
私は馬上筒を抜いて火縄をつけて構え近習も同じにならいにらみ合いになる。
昌景も兵を私の後ろに戻すと私の横で槍を構えた。
「お待ちくだされ双方戦場ですぞ」
話を聞き付けた景綱(直江)が馬を飛ばしてきており私に、
「鉄砲を下げてくださいませ信輝様お願いにございます」
「直江か色部が刀を抜いたからな危なくておろせん、敵味方もわからぬ愚か者の指揮にはいるいわれはない」
わざと勝長にも聞こえるように言うと勝長は馬を走らせこちらに走ってきた。
私は右手を一度だけ上げて他の者には手出しはしないように命令して狙うと目の前に迫ってきた勝長に昌景が間に入ろうとしたときにそれは起こった。
景綱が私と勝長の間に入り振り下ろされ私を狙った刃をその身で受け落馬する。
「景綱殿」
呆然としている勝長をほっておき馬をおりて直江を起こすと私を見て、
「軽々しく御身を出さずとも、輝虎様に先に逝くことお許しくださいと伝えてくだされ」
そう言うと静かに目を閉じ手当てをしようと駆け寄る小太郎に首をふり昌景に手伝ってもらい担ぎ上げると未だにこちらを見て何も言えずにいる勝長を一別すると輝虎の元に向かった。
「大和(守)よ」
輝虎が驚き楯の上に寝かされる景綱を驚き私を見る。
「私に切りかかった勝長に対して景綱殿が身をもって守ってくれました」
そう言うと勝長を呼ぶように言うと顔を白くした老体が連れてこられた。
「申し開きはあるか」
怒りを押さえた輝虎は勝長に聞くが同僚を誤って切り殺してしまった事で何も言えずに連れていかれた。
「すまぬが」
「甲斐へ戻ります」
どうであれ刃傷沙汰を起こしてしまったのでとどまるのは良いとは思えないので撤退を開始する。
これで輝虎との関係がどうなるわけではないが家臣同士でしこりは残り上杉は特に同僚を切ったと言うことで後々と思いながら戻った。
「来年までは上洛も言ってくるまい、内政を重点的に行う」
吉原からの荷物の流入は爆発的に増えており関所を設けて税をとらずにいたので当然であり前から進めていた後年建てられた甲府城を完成させるとその平らな土地に四方八方城下町が栄えていき、武蔵や信濃そして上野に人と物との流れが出来ており農業では貧しいが商業で栄えていくことができた。
楽市楽座も領土にようやく浸透しておりクーデターを起こしてからようやく結び付いたものだった。
「報告します」
小太郎から領内についての報告が上がってくる。
公式には目付が信繁の監督下で行われているがごまかそうとする者もやはりいるので小太郎配下を増やし(直属とは別に)報告が出ると小太郎直属配下が裏取りをして直ぐに報告をあげてくるようになっており簡単なものは信繁に通報され取り締まりをする。
しかしそれ以上に大事はと言うことで報告に上がってきたということで、
「美作守(跡部)が数人と領地の農民に圧政を加え娘達をかどかわしております」
長坂と言い何れにしても処分は免れぬと情報を引き続き集めさせた。
2ヶ月かかり黒川を落としたと輝虎から連絡が来て続いて加賀に一向衆相手に戦端を開くと言われ自ら行くか信繁に幸隆を副将にたてて向かわせるか考えることになる。
「いざこざした場合には殿がおられた方がよろしいでしょうが来ないだの事を考えると」
しかし加賀には信玄が待ち構えており信繁では気後れをしてしまう事も考えられ義兄弟である信春に幸隆とともにと送り込みもう一つ自分のもう一つの人生であった一条信龍、今は武田信龍として元服して初陣を飾ることになり、
「兄上お任せください、必ずや大兄(信玄)を打ち破って参ります」
「頼もしいぞ、しかし大将は馬場だからわしと思ってよく命令を守り手柄をたてよ」
自分てこんなに元気がよかったっけと言うくらい明るくしている信龍に嬉しさを感じながら見送ると秋山から連絡が来た。
「一向衆が騒がしいか」
加賀の一向衆討伐を叫ぶ輝虎に反応したのか長島と三河の一向衆も動き出す。
上洛をする上での問題となるので対応したいが織田は斎藤の合力があるとはいえ難しく長島はしばらくはと再度思いながら義元から三河についての提案を受け駿河の国境の寺に顔を出した。
「久しぶりだな信輝殿、黒川では大変だったようだな」
色部との事が伝わっているらしく上杉か武田にも今川に通じている者がいるとあらためて言われたようでため息をつきながら、
「家臣の中にも居ますよね一人や二人佞臣は」
誰とまでは言わないが腹の探りあいを始めてしまい元康の事も含めて話していると、
「その元康だが氏康と繋がりおった、ばれてないと思っておるようだがな」
色々反抗するために動いているとはいえ何処まで手を伸ばしているのかと思いながら義元の話を聞く、
「後がない氏康め、なりふり構っておれないと言うことじゃがどうにかするつもりはないのか信輝殿」
口実などいくらでもつくって氏康を滅ぼせと言うことだが、
「輝虎殿が納得すまい義によって助太刀いたすと言っておる。降伏した北条を攻めると言うことは上杉と事を構えることになってしまうのでな、義元殿が攻めるなら目をつぶりますが」
「そうすると遠江に一向衆が乱入して来よう最近信者を精力的に増やそうとしておるからなイナゴのように増える」
三河の一向衆は周辺に勢力を増やそうとしており奥三河の家康は家臣については転ばぬが領民についてはじわじわと浸透してきており苦慮している。
「奥三河は目をつぶるが信濃と甲斐には入れさせるつもりはないです」
小太郎に国境線は警戒しており本来ならば河の民にも手伝ってもらいたいが上なしをお互い公言している一向衆と同じなので当てにはできずにいた。
「なれば三河を平定したい、岡崎は任せてもよいがな」
岡崎をって言われて裏があるし火中の栗を拾うのは危険だが上洛が始まる前に氏康の件も含めて対応したいのが本音で三河に出兵することを決めた。
同時期に輝虎が加賀を攻めるので信春と幸隆を送り出しており私は昌景と昌信と昌豊に動員と輝虎に氏康に援軍をどちらかに出させるように伝えると私からと言われ使者を出した。
「疲弊しており兵は出せぬと言うことか」
答えは想像できていたので昌豊に使者に行くように言い、
「氏康に伝えよ、出陣せぬ場合今川からの知らせどおり三河の小僧と組んだと反意があると認めたとそう伝えろ」
上洛での危険は留守中の氏康の動きでありそれを少しでもと言うことできつく出て反応を見る。
昌豊は小田原に向かい氏康に会うと強弁に言ったらしく重い腰を揚げさせることになり皆喜んだが、
「かなり活発に三河とやり取りをしており出兵中に何かを起こそうとしているかも知れませぬ」
小太郎から言われて警戒しながら甲斐と駿河の国境を越えて義元と共に氏康を待つ、
「相変わらず氏康めはこそこそしておろう、強弁に出させたと言うことか」
「力を蓄えさせるわけにはいかないですからなお互いに、先鋒は当然氏康につとめて貰いましょう」
それについては義元も同意して三河へと行軍を開始する。
何気無く事は進んでいるはずだが小太郎からの義元や氏康が嫌みやその他の事を言わずに進軍しているのが気になり小太郎に草を増やして色々な情報を得るように言う、報告の量が増えておりその中から必要と思われる情報を抜き出し整理していくとおぼろげながら見えてきて小太郎に確認をすると、
「全てが敵と考えた方がよろしいかと」
義元と氏康にはめられた可能性があり氏康のしたたかさが見えており川越の夜戦のようになりふりかまわず行動している。
「信春(馬場)に急ぎ加賀への出兵をとりやめ奥三河から侵入せよと」
輝虎には悪いがこちらもなりふりかまわず輝虎に知らせればどこからか漏れるので言わずに急ぎ戻させた。
「家康にも三方ヶ原に出て指示を待て」
情報では元康は一向衆と共に岡崎を出発してこちらへ向かっていると言うことでもう少し時間を稼ごうと行軍速度を落として進み余分に2日かけ引馬城(後の浜松)に到着をする。
「ここで2日程時間を稼ぐか」
家康の動員が遅れていると言い訳をして急かそうとする義元にそっけなく、
「万全にしたいと兵力は四万以上と、今川殿が一万八千、氏康殿が七千で我らが一万六千で五千も満たぬですが同数との連絡もあるので2日待って頂きたい」
そう言うと義元はしかたなしにと同意してくれ家康からは出陣の知らせを受け重い腰をあげた。
氏康を先頭に武田そして挟むように今川が引馬から出陣することになる。
「挟ませはしない」
小太郎に命令をして引馬城の兵糧庫を燃やす準備をさせており武田が動くと同時に放火させ炎上するようにしており義元が確認のため遅れることになる。
氏康を先頭に進む、大手門を抜けて進と城内が騒がしくなり煙が上がり、
「兵糧庫が火事にございます。消火出来ずに燃え広がっております」
後ろで騒ぐのを聞き耳たてながらそのまま進む、北条勢はそのまま直進するが私は右に向きをかえると三方ヶ原に向かって進軍を開始する。
途中気がついた義元が何度か使者を送ってきたが、
「三方ヶ原で待つ」
そう返事を伝えて信春と家康に合流して展開を終えた。
「驚きましたが北条もですが今川も三河の小倅もとは、決戦が楽しみですな」
前日に到着していた信春がいまだ現れぬ敵に気合いをいれており、
「指示通り草を結んで罠を作り終えております」
幸隆が報告をしてくる。
「通り道と左右の端以外は転ぶ、鉄砲は道に集中させ反撃は左右から信春と昌景に任せる」
場所の設定をしており向こうは七万近くこちらは三万と兵力差があるので準備しており長篠を越える八千にも及ぶ鉄砲を準備しており空堀と柵も幸隆が準備を終えており待った。
「しかしこれを見て義元や氏康が動かないのではと思っていよう、問題は一向衆と元康にある。必ずやこよう」
元康には家臣に逃げられた無能やお飾り大将等書いた書簡を送っており怒りで来ると思いながらようやく現れた。
「先ずは氏康が左翼に真ん中が義元か」
一向衆の合流は未だかと思いながら義元が馬に乗り来る。
「信輝殿何でこの様なことを」
「それはその後ろに到着した愚か者が答えですよ」
元康が到着したのか道を抜けて先頭に単騎で出てくる。
「義元殿も見切りをつけられれば良いものを、数で戦うのではないですよ」
「まったく食えぬ男だ、どうしても戦うと言うのだな」
「それはその後ろで岡部に止められてる小僧に行っていただければ」
そう言うと戻り元康を連れて本陣へと義元は消えた。
「皆の者よく聞け、敵はこちらの倍だが命令道理に動けば勝てる。姑息な罠も仕掛けており地形的にも有利である。最初は敵に踊るの任せよそして反撃をする」
そう叫ぶと喚声が上がり気合いをいれて各隊毎に準備を確認した。
敵は陣形を鶴翼に展開させ中央は一向衆、左翼は北条勢で右翼は今川勢が陣を整えているが中央は坊主に動員された農兵と農民そして女子供であり数は多いが烏合の衆であり注意は氏康と思いながら焦れた元康の松平勢が学習能力皆無で登り坂を走る。
四万はなかなかの迫力だがこちらは柵の前で鉄砲うぃ構え静かに待ち続けていると罠が発動した。
ただ草を縛っただけだが広範囲に1万人が道と端っこ以外にいくつも作っており先頭が転び後ろに飲み込まれ悲鳴が上がるが消えていく、不謹慎に笑いそうになるがまわりがいるので澄ましながら見つめ続ける。
「連中は止めると言うことを知らぬのですかな」
幸隆が言うのを頷き、
「坊主に逃げれば地獄に落ちると言われているからな救いがたい」
一向衆相手の作戦であり普通なら先頭がこけた時点で止まるはずだがそうならずに次々と親子供に踏まれ死ななくとも足をくじき体を踏まれて怪我をおっておりあと少しでと言うところで昌豊が手をおろした。
「はなて」
一斉射で放たれた弾は決められた方向にいた者を次々となぎ倒す。
「これは一方的な戦いではありませぬな」
誰かが言うのを頷き、本来は武田が本来受けていたが今は武田が行っており今川勢は草原ではなく街道を隊列を組みこちらへ来る。
合図をせずとも目印の石を置いてありそれを通過した瞬間担当の組が鉄砲を放った。
「右翼は森との境目を通り抜けつつあり」
氏康は森を通りこちらの側面に出ようと動いているが途中から幸隆が木をなぎ倒していたので出てこざるおえなくなり狭い端っこに出ると鉄砲の餌食になり森は戻れず草原に出ると足を引っ掻け倒れて脱落していった。
「攻撃をゆるめるな、もう少しで反撃ぞ」
昌信が督戦をして叱咤激励を行い目の前に次々と迫る恐れを知らぬ恐怖の狂信者から逃げ出さぬようにしている。
「今回しのげば」
「そうだな勢いも落ちてきているし信春と昌景に任せる」
数刻たち目の前には倒れた門徒達が折り重なり柵まで届かぬ状況であり今川勢も士気が上がらぬ状況に積極性はなかった。
何波めだか数えるのも忘れた瞬間太鼓のテンポがかわり両翼後方から喚声が上がり左翼から黒づくめの信春の騎馬隊が、右翼は赤備えの昌景が林沿いを一気に下り本隊からも足軽が街道沿いを下り鉄砲隊は息の根をとめて追撃を行う、
「今川勢も北条勢も撤退を開始しておりますが両隊捕捉した模様」
撤退の準備はしていたようだが下る騎馬の速度と勢いは止められず飲み込まれていく、氏康は必死にしんがりをしているが赤備えが蹂躙して壊滅的な被害を出し今川勢も引馬城に入れず東へと撤退しており天竜川に飛び込み増水していたので飲み込まれていくのを見届けると別動隊で動いていた家康が落とした引馬城に入った。
「皆の者ご苦労」
皆勝利した事に満足しており功績をてらしながら恩賞を与えていく、
「報告します。長野業正殿江戸城や玉縄城等を落とし小田原城を包囲したと」
皆喜び業正を誉めて後は小田原のみとなっており小太郎が、
「命令通り小田原および北条の領内で兵糧を買い占めは完了しており1ヶ月分も備蓄はないと、負けた北条の家臣は御屋形様の言う通り生活に困っていたので倍で買おうと持ちかけると城内のでさえ売りにはしりました」
「氏康め無事に戻れたときの驚き想像にかえがたいですな」
銭の力で敵の兵糧でさえ掠め取り元々出兵しないかわりに兵糧を供出させていたので驚くべき結果に繋がり業正へ合流した1か月後には城内の食べ物を食いつくした状況であった。
「信春、すまぬがすぐに加賀へ向かってくれ飛騨経由で富山へ抜ければ時間の短縮にもなろう」
輝虎に援軍到着遅れと今回の件の報告を書状に書き送り出し引馬は、
「城代だが徳川殿に任せる。忠次(酒井)の言うことをよく聞き周りの城を攻め落とせ」
若い家康は喜び礼を何度も言い忠次は丁寧に礼を言う、
「それと引馬では名前が悪い何かないかな」
「浜松が良かろうと思います」
私は頷きながら子のセンスの無さは変わらぬのかと思いながら浜松城を後にすることになった。
飯田から高遠経由で甲斐に戻りそのまま小田原で業正と合流する。
「さすがは業正殿、この戦いが終わった後で上野一国を任せる。金山城の道及(山上)は与力として頼む、ただし厩橋と館林は直轄として残しておく」
長野の配下は驚き業正と共に礼を言ってくれ包囲を続けた。
「逃げ出し途中で生き絶えた者の胃を調べましたが何もありませぬ」
領民と共に2万程が籠城しており駿河経由で船で供廻りのみでしか戻れなかった氏康は兵糧庫がほとんど空っぽに近い状況に絶望しながらも稲刈りの時期に我々が撤退する事に望みをかけていると、
「我らは御屋形様の言う通り足軽に兵科をかえてきましたからなこのまま落ちるまで続けましょう」
寝返った水軍も小田原城を海から包囲しており陸では堀と柵で城を包囲して砦をたてて誰も出れないようにしていた。
「上杉への使者を捕まえました」
小太郎からの報告で中身を見ると前回の北条を残したのかの理由が書いてあり義父である前関東管令である上杉憲政に手を回してじわじわと北条を追い詰めるためと言う理由をつけそれを輝虎に言わせたと言うことでため息をつきながら業正とその元配下に見せると皆怒り信ずるに足りんと言うことであった。
「これを輝虎殿に見せよ、どう行動するか」
そう言うと幸隆が心配そうに、
「わざわざ騒動の種を与えずともよろしいかと、間違えば上杉と事を構えることに」
「心配してくれるのはありがたい、しかし輝虎殿宛のを勝手に見たのはだからな」
この手紙は多分輝虎ではなく憲政宛だろうと思うがそれを気付かないふりをすると言うことに人が悪いと言われて笑いながら頷いた。
それから1か月、馬も食いつくし同僚が倒れそれを食らっていたがとうとう氏康は自分の身と引き換えに降伏を申し出ておりそれを了承する。
「ようやくですな、しかし上杉がああなるとは」
書簡が輝虎に渡り輝虎は気にする事は無かったのだろうが直江等の重臣達は怒っておりそれを聞いた憲政は船で敦賀に出て京に逃げ込んだと言うことで氏康から金さえもらっていたと言うことで話は終わり氏康とその一族は首を切り関東にようやく安定がもたらされた。
領地の再編を行い南信濃と奥三河と岩村と飛騨は昌豊(内藤)が代理として飯田に入り秋山が与力として配下に入る。
北信濃は幸隆が海津に入り村上の遺児を教育をしていく、上野は業正がおさめて下野は宇都宮養子に出した信廉がおさめており武蔵は信春が河越城から江戸城にかえて10年計画で沼地を町に開拓しながら納めさせ私は甲斐と小田原と伊豆を直接おさめて遠州は徳川家康にと言うことで加賀の遠征軍の報告を待つことにしながら秋を迎えた。
「泥沼化しておるか」
予想はついていたが外敵を迎えたことにより一向衆は結束して戦い始めたらしく上杉勢と血を血で洗う戦いになっており、勝ち続けているはずの上杉勢はイナゴのようにわいてくる門徒に輝虎以外はうんざりしていると報告を受けており、兄である信玄も大聖寺に入り指揮していたのも長期化の理由であった。
こちら側では蒲原城を落として駿府を目の前に義元と講和をして天竜川から西を割譲して徳川の領地として支配させ三河へと出兵した。
「戦いに負け多くの門徒を失い元康と一向衆及び坊主ともめていると、何時もの事だろうがあきれる」
三万を動員して家康の五千と共に三河へと侵攻する。
抵抗がどのくらい有るのかと思ったが民は隠れて姿は見えず寺にこもる坊主と一部門徒以外は姿が見えず一気に押し潰していくと坊主から停戦の申し込みがあった。
「停戦を希望する」
手前勝手で上から目線での提案に返事をせずにいると私の反応にあせり言い訳を始める。
「今回の事、松平と門徒が勝手にしたこと本願寺からは強制したことはない」
そう言いきる坊主に呆れながら、
「それでは三河と長島で本願寺の名で一揆の終息を宣言してもらいたい」
無理はわかっているがこれで終息ができるならと言うが、
「それは、我等は三河の一向衆の僧侶でありますから」
「それなら三河からの退去を、それ以外は認める気はない」
そう言うと顔を赤くして、
「出来るわけがなかろう寺を捨ててなど」
「さんざん門徒を扇動して被害を出した責任をどう考える。出来ぬなら潰すのみ一刻後に返事を」
そう言うと騒ぐ坊主を追い返した。
「しかし長島や本願寺そして門徒の姿さえ見えませぬが」
「お互い主導権争いをした結果、門徒に愛想つかされ他の坊主を追い返したまでは良かったがと言うことだろう」
権力は意識していない限りその者を腐らせる典型であり、後ろで門徒を煽り自分達は安全なところで見ていたつけが出たと言うことだろうしばらくすると戻ってきた坊主は、
「我等三河の一向衆は争いを放棄します。それで何卒」
「わかった急ぎふれをだしてくれ」
甘いと言われるかもしれないが妥協しなければ自分がジェノサイド(殺戮)を続けていかなければならないのでそれはごめんだと思いながら了承して岡崎城周辺の城を次々と落とすと包囲した。