新しい世界 Ⅲ
本来Ⅱにつなげて投稿する予定だったものです
小分けになってしまいました
「それじゃ新しい職員も決まったことだし、行きましょうか」
「いくって……、どこに?」
「分からない? 助けに行くの」
そういってアンナは立ち上がりドアに向かう。
「あ、ちょ。荒木課長はいかないんですか」
「お土産期待して待ってるよー」
橘がしどろもどろしているとアンナに早く、と催促されアンナの後についていった。
「橘君、現地の言葉はラテン語と英語の混ざったような言語だから注意して」
「はぁ」
「それと向こうに着いたら驚かないこと。そして直ぐに慣れなさい」
生活においてはアレやソレに気をつけろ、給料は現地で支給、特殊な地域なため日本人はいない等、細々とした説明を受けているとこのフロアまで降りてきたエレベーターに着いていた。
そして一番下にあるボタンを押すと、地下十階とかではなくGFと点滅した。
「最後に何か質問ある?」
「えーと、じゃあ円滑に仕事するために聞いておきたいけど、アンナは一体何歳なんだ? 俺からすると十六歳やそこらに見える。けど領事館長なんて早くても三十五歳を超えないと就任したと聞いたことが無い。一体どういうことなんだ」
「なんだそんなこと」
「そんなことって、俺は結構真剣に悩んでるんだぞ」
「はぁ、これだから人間は嫌いなのよ」
と、丁度タイミングよくエレベーターが目的地に着いてベルの音が鳴った。
音が合図になって扉が左右に開くと、突如突風が橘を襲った。
その時風に舞った砂埃が目に入る。視界を確保するため手で瞼を擦ると、つい先程まで足元にあった鉄の床が綺麗さっぱりと消えていた。
代わり、土の地面がある。
顔を上げると、あらん限り緑豊かな平原が続いていた。
「どこだ、ここ」
現在地をしるため携帯を取り出すと、不意に耳をつんざく咆哮が辺り一面に響く。
音の正体を探るべく橘は見上げた。
燐に覆われ刺々しい翼で空を駆ける映画でしか見たことのないワイバーンが2匹飛んでいた。
現実じゃあり得ない光景に不安で鼓動が速くなる。
「そうだ、アンナはどこだ。アンナ!」
未知の世界にすっかり気圧されてアンナの名を叫ぶと、甘い香りが風に乗って橘の鼻を擽った。
振り返った橘が見たものは、髪が風で掻き上げられ小さな耳を露わにして、太陽の光を気持ちよさそうに浴びるアンナだった。
「アンナ。まさか君は――」
アンナは横に付いている尖った耳を誇らしげに撫でると、橘が喉にまで出かけていたアンノの存在を自ら口に出した。
「私はエルフ。年齢は1682歳、貴方と同じ人間で換算したら17歳」