願った再会
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「すごい!すごい!オイミャクと全然違うよ!」
「こんなの見たことないなぁ……エリディアンって凄いんだね」
イーダとシャナは、初めて見る文明に目を輝かせていた。
「立ち止まるな。さっさと歩け」
シタデレは興奮する2人を冷たく促し、そのまま廊下を進んでいく。
やがて1つの部屋の前で立ち止まり、ドアを開けた。
「ほら、ここがお前らの部屋だ。好きに使え」
中にはベッドや机など、最低限の設備が整った部屋が広がっていた。
「え……いいんですか?こんな……」
シャナは戸惑いながら呟く。
「ああ?別に大した部屋じゃないだろう」
ぶっきらぼうに返しながら、シタデレは2人の様子を横目で見た。
(……こいつら、こんな環境ですら驚くのか……)
脳裏に浮かぶのは、あの難民キャンプの光景。
(あれ以下が、日常だったのか……)
わずかに眉をひそめる。
「でも……私はお姉ちゃんと一緒がいいな……」
イーダがぽつりと呟いた。
「早く……会いたいよ……」
その声を聞いた瞬間、シタデレは目を閉じる。
ほんの一瞬だけ。
「あー……分かった」
「会わせてやる」
その言葉だけを残し、彼は踵を返した。
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研究室の扉を、乱暴に開ける。
「うわっ!……ってシタデレか……ノックくらいしてよ......ていうか帰ってきてたんだね」
リトムが振り返る。
「ああ、殿下達は出たのか?」
「うん。ちょうど入れ違いだね。シタデレも後発組で行くの?」
「……そうか」
短く返し、シタデレの視線は奥のカプセルへ向いた。
「今から、あいつの妹を連れてくる」
リトムの表情が曇る。
「……本気で見せるの?」
「ショックは受けるだろうがな」
シタデレは淡々と続けた。
「その方が、目的ははっきりする」
「……確かに......そうかもだけど......」
「連れてくる」
それだけ言い残し、部屋を出ていく。
「ちょ、ちょっと……!」
取り残されたリトムは頭を掻いた。
「……もう……ほんと強引なんだから……」
少しだけ視線をカプセルへ向ける。
「……ごめんね」
小さく呟いた。
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部屋に戻ると、2人はベッドの上ではしゃいでいた。
「おい、2人とも付いてこい」
短く告げて、そのまま歩き出す。
その声の重さに、2人はすぐに気付いた。
静かに後を追う。
廊下には、足音だけが響く。
誰も口を開かなかった。
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「ここだ」
シタデレが扉が開く。
「お〜い、早いよぉ……」
リトムの声が、場の空気をわずかに和らげる。
「君達がイーダちゃんとシャナちゃんだね!私はリトム!よろしく!」
「は、はい……!」
「よろしくお願いします!」
「うん、元気でいいね」
一瞬だけ、空気が軽くなる。
だが――
「見せれるか?」
シタデレの一言で、すぐに張り詰めた。
「……うん……」
リトムは小さく頷く。
「イーダ」
シタデレが呼ぶ。
「今から、お前の姉に会わせる」
その声には、感情がなかった。
「え……?どこに……?」
イーダは部屋を見回す。
答えは、返ってこない。
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「……開けるよ」
リトムが操作する。
カプセルが、ゆっくりと開いていく。
白い煙が立ち上る。
静寂。
やがて煙が晴れ――
そこに、シリウスがいた。
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「……お姉ちゃん……?」
イーダの声が、震えた。
次の瞬間、走り出す。
「お姉ちゃん!!」
駆け寄り、その身体に触れる。
「会いたかった……!」
頬に手を当てる。
温もりは、あった。
だが――
「……あれ……?」
反応がない。
「ねぇ……起きてよ……?」
少し強く揺らす。
「お姉ちゃん……?」
返事はない。
呼吸も、動きも――
「……なんで……?」
声が、崩れ始める。
「ねぇ……なんで……返事しないの……?」
その隣で、シャナが息を呑んだ。
「イーダちゃん……これ……」
言葉を失う。
理解してしまったからだ。
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後ろで、シタデレは視線を逸らした。




