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【明けぬ獄夜に縋る糸】~少女の愛が届かない 異世界と繋がる人外暗躍復讐譚~  作者: 三十三太郎
3章ー運命集う魔法学島

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肉を切り裂き上へと昇れ


 「ぐ、ぅ……ひぅ……っ」


 痛ましい怨嗟渦巻く濁流の中、必死に意識を繋ぎとめる。


 「わたく、し……は、あ、あ/:」@.Hiigiiぃッ――誰誰誰誰?」


 頭と心が侵される。自分の殆どが、もう自分の物でない。染められる、汚される、奪われる。

 魂の奥の奥まで、入り込まれる。


 「い、やいやいや、いやいやいやぁぁ」


 誰かの手が乳房を掴んだ。誰かの指が、足から尻……最後に股の間で這いずり回る。

 感触は女の指なのに、触り方は欲まみれの動き。(わたくし)は知っている、この感触を知っている。


 舌で(ねぶ)られる恥辱、(なか)を貫かれる衝撃と痛み。


 気持ち悪い、汚らしい―― (わたくし)の感情。

 気持ちいい、もっとして―― (わたくし)のモノじゃない! 


 思い出させないで。(わたくし)の汚れきった記憶を、勝手に(もてあそ)ばないで!


 「ぃ、ぃ、ぃ、ああ˝……っっ」


 蠢く手指の海に(まぎ)れて、自分の指もカラダ中の穴と言う穴を撫でまわしていた。

 もう耐えら■ない。何■分か■ない。何故耐える必■が?

 悲鳴■聞こ■■。


 ――渡Seッ,bcth;/p@/明KE渡せ


 誰かの苦悶。(わたくし)の声で叫んで■。


 ――(わたくし)ノKodoモ、何処\/@何;]:p処何処


  「((わたくし)の、赤ちゃ■、奪われ■、(わたくし)■――)」


 ――オマエのja無iィィ、男siネ死いいね死死


 「(憎■、(わたくし)■穢した■■、神の名■騙■、獣っっ■■■■■■)」


 ――いい一緒Niぃ穢穢穢殺殺、わたクしを誰モ救ってKUレナイ


 「■■■■…………違う」


 ――:/.@:@:@/./-/?


 不意に、怒りが湧いた。(わたくし)が孤独だと憐れむ声を否定する。大切なひとへの侮辱が、頭にかかった霧を吹き飛ばした。


 「(わたくし)には、あの夜に見た光がある」


 思い出す。(わたくし)が、10年寄りかかり続けた背中を。

 渦巻いていた怨嗟が、距離を置く様に弱まるのを感じる。


 全てを傲慢に否定した竜の炎。流れ着いた夜の(みずうみ)。そこで出会った、何よりも美しくて悲しい光景。

 あの時に(わたくし)は、彼と……彼の抱く光に救いを見出したのです!

 もう一度(わたくし)に、愛と願いを与えてくださったのです!


 「七郎――七郎七郎七郎七郎ッ。彼は必ず来てくれるっ。(わたくし)はあの(ひと)と共に、運命への復讐を誓ったのですからっ」


 ――嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘


 「彼は来ます。だから耐えられる。さあ、水底の千手。我慢比べと参りましょう?…………ふ、ふふ……それ、に」


 水の腐る臭いと、カラダを灼く熱を受け入れながら、汚濁の向こうに精一杯の笑顔を向ける。


 「(わたくし)と似ている貴女(アナタ)。貴女とお話してみたかった……‘ありがとう’とお伝えしたかった。10年の間ずぅっと(わたくし)達を支えてくださった、他でもない貴女へ……」


 シルヴィアは再び千手の汚濁に沈む。愛する男を信じ、今度は自らの意思で濁流へと身を投げた。

 彼女の狂気は、怨念の(かわ)の中でさえ、愛を支えに儚くも強く輝き続けていた。


 ・

 ・

 ・


 名を奉じられた 水底(みなそこ)千手(せんじゅ)鬼母(きぼ)妃神(ひじん) は、神としての威光をそのまま呪詛の強さへと変える。

 夜闇から()(したた)(あお)(しずく)も、艶めかしく揺れる数千の白腕も、咲き誇る蓮花に劣らず意気衝天。


 ――ゴぼッ、Ooooooンッッ

 ――ほホホほほほほほほ!

 ――苦カ禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍っ


 同じく神の手足である“山犬”、“姦姦蛇螺”、“姑獲鳥” の存在感も凄まじい。山犬などは既に神聖城壁へ穴を空け、外に飛び出さんとしていた。

 霊園山と妖怪たちの禍々しさに、義瑠土(ぎるど)員には失神者が続出している。しかしそれでも、上を目指し走り出す者がひとり。


 「じゃあ打ち合わせ通りに」


 駆け出したのはやはり墨谷七郎。城壁に空いた穴に黒剣を突き入れ飛び込む。

 割れ目に取り付いていた山犬を吹き飛ばしながらの突貫だ。


 「ま、待って墨谷七郎っ――く、行くわよヴィトーラ! 彼を援護するっ」


 「しゃーねーなあ! ガドランっ、着いてこいっ」


 「オオッ、シチロウの為ならバ!」


 続いて(しろがね)伽藍(から)、ヴィトーラとガドラン、さらに遅れてメセルキュリアや辻京弥らも神聖城壁の内側へ入る。


 「ほんっとに大丈夫なんスかセンパーイ!?」

 「俺達は魔導隊の“あかいくつ”や他の義瑠土員と一緒に周りの雑魚担当だ! 油断すなんよっ……もしもの時は俺に任せろ」

 「 ! ぷぷ、むりしちゃってー……かっこいいッスよ、セェンパイ」


 壁の中は変わらず地獄。より一層存在強度を増した肉の魔物が、全ての生者を憎んで襲う。

 そして先頭を突き進む墨谷七郎に対しても、悪鬼の追跡が及んでいた。


 ――Guオオウ˝!


 「首が無いのに相変わらず素早いな、魔犬っ」


 “山犬”は黒水の溜まる墓地や木立を獰猛に走り抜け、先ほど自身を斬り飛ばした――のみならず数か月前に己を焼き殺した仇を追う。

 ヒトが歩くだけで呪われる汚水の海を、山犬は意にも介さず疾走していた。当然だ、自身も同じモノで形造られているのだから。


 「お前の相手は、伽藍っ」


 ――Gyaウん!?


 しかし山犬の前に割り込み、獣を立ち止まらせる人影が現れた。聖剣を抜き放った烈剣姫(れっけんき)である。

 かつてより成長を遂げた聖剣遣いは、山犬の前に立つと同時に一太刀振るい、犬の前足を斬り飛ばしていた。


 「く、もっと深く切り込んだつもりだったのに……! 硬いし、再生速度も速くなってるっ。作戦通りだけど、骨が折れるわね」


 伽藍の驚愕が、本来以上のチカラを取り戻した山犬に愉悦を与えたようだ。明らかに伽藍へ敵視を移し、首の大穴から黒い粘水を‘ごぽごぽ‘と吐き出す。


 「手伝おうか?」


 「いい、あなたは上に行って! コイツの担当は伽藍。すぐに倒して追いつく」


 「――ありがとう。任せた」


 「っ、うん!」


 もとより、用意された 水底千手鬼母妃神 の攻略方法は単純明快。

 まずひとつ、チカラを削る。名の定着によって在り方が定まり、”いい気”になって消費魔力を爆増させた女神を外側から削る。例え根源が無限であっても、出て行く量が補充される速度を上回れば弱体が可能。

 次が決定打。女神の心臓である迷宮核の破壊。削りによって生まれた隙に致命打を叩きこむ。

 これが墨谷七郎の役目。


 「(これは俺がやらなければ。霊園山の中枢を見せるわけにはいかない。もとより、水底千手鬼母妃神の核に女性が近づけば汚染されるのが関の山だ)」


 他の者は削りと露払いが役割。さらに抜きんでた実力を持つ数人には、あらかじめ相手取る“(くさび)”が割り振られている。


 「魔犬の王――今度こそ伽藍が引導を渡す!」


 ―― ウ˝ ウ ッ


 墨谷七郎は異形の群れを吹き飛ばしながら進む。烈剣姫はその背中を憧れに満ちた目で見送り、因縁深い異形の巨獣と対峙するのだった。


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