46.家族紹介は遠慮します(4)
この回は生きているとか死んでいるという言葉が多くなっております。
不快に感じる方がいたら申し訳ありません。
安藤が下敷きにされて数十分が経った頃、佐伯は森川君を連れて戻ってきた。
部活中にも関わらず森川君は中庭までやってきて、その光景を見て悲鳴を上げた。
「栞が死んでる!」
死んでない。
死んでいたら、森川君じゃなくて警察を呼んでいる。
重くて苦しいが、安藤の心の中は冷静だった。
「誰がこんなことを……」
どう見たって上に乗っている(美人だけど関わりたくない)人がしているとわかるだろう。きっと森川君には見えていないのだ。
はぁと思わずため息が漏れた。
何でもいいからさっさと彼女をどけてくれませんかね。
「そうだ!死んでても生き返る方法が」
森川君は何か閃いたようだけど、まず死んでいないから。根本が間違っている。
もし、仮に。仮に死んでいたとしても生き返らせる方法はないから。
突っ込みたいが苦しくて声が出ない。
佐伯も佐伯だ。
呼び出しておいて何も説明しないんじゃ勘違いしたままじゃないか。明後日の方向に突っ走る勢いだよ、彼は。
きっと森川君の様子を見てにやにやしているに違いない。
そんなことを考えていたら頭の上に影ができた。と思ったら、何か森川君の顔が近づいてきてるんですけど!
一体何する気なの!?
「お前一体何する気だよ」
佐伯の突っ込みとともに小気味良い音が聞こえたので、おそらく森川君は頭を叩かれたんだと思う。
「……いや、……すると生き返るかと思って」
「あ?何するって?」
いや、問題そこじゃない。死んでるってところを訂正して。
「…………キス」
「ああ!?お前、何乙女みたいなこと言ってんだよ。そんなもんで生き返るわけねぇだろうが!」
なんてことしようとしてたの、森川君!
人が動けないことをいいことに。それは駄目。反則だよ。あとでビンタしてやる。
佐伯も怒っているのだが、だから根本が違う。私、生きてる。
「だって、白雪姫では生き返るじゃん」
「あれは童話だろうが!それにもともとキスで生き返る話じゃないぞ、あれ」
「じゃあ栞は死んだままなの!?」
だーかーらー。……もう面倒くさいな。このままだったら本当にそうなるかもしれないからもういいや。
安藤は心の中で今までの人生を振り返り出した。高校生になってからひどかったな……。
「安藤、まだ生きてるか?おい、森川。早くそれどけてやれ」
「へ?栞生きてるの??」
「いいから早くどけてやれよ」
佐伯が促したことで、ようやく森川君は安藤の上に乗っかっている人に気づいた。
「花凛!なんで栞の上に乗ってるの!?栞が死んじゃうよ!!」
「ご、ごめんなさい、隼君……。なんか居心地が良くておりられなくなっちゃったの」
居心地が良いって何だ。人の上だぞ。
「お姉さまもごめんなさい。悪気はなかったんです……」
ようやくどいてくれたことで、安藤は思い切り息を吸うことができた。ああ。生きてるって素晴らしい。
悪気がないならすぐにどいてくれ。居心地が良いと言われても許さないからな!むしろそれこそ悪気だろうが。
しばらくうつ伏せになっていたので体がしびれていたが、立ち上がる。制服は土埃がついてしまったが、クリーニング代は請求してもいいのだろうか?
「で、どちら様ですか?人を呼び出して自分の都合の良い要求をしたあげく人の上に数十分も乗っていたあなたは?」
安藤は穏やかに微笑んだ。
一見すれば聖母のような微笑みだが、後ろに般若の姿が見えた。
いつもありがとうございます。
ここまでしかできていないので、また不定期になると思います。




