「これは僕が超能力者だから提案できることなんだよ?」
「あああああああああああああああああああああああああもう!!!!!んでこんなことになっちゃったかなああ?」
「まあまあ、少しは落ち着いたらどうかな?メガネくん」
「はいはい、私はメガネですよ、ただのメガネメガネ」
「そのメガネがとうとう殺人を犯したのである!」まるで首を獲ったかのように。
「んがああああそれ言うのやめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「まあまあ、もう起きたことは仕方ないのだし、何せここはそう言うところだしね」
「一応言っておくが、俺は殺してない」
「殺してない?そんな返り血でいっぱいなのに?」
「これは不可抗力だ」
「ほ〜ん〜と〜に〜?」
こいつは悪戯な八重歯をちらつかせた笑みをこちらに向ける。
「断じて!断じて断じて殺していない!あいつが花束の中に包丁を自身に仕掛けていなければ、俺だって彼女の抱擁を避けようしたわ!」
「でも君は避けることをしなかった」
「避けることができなかったんだ!あまりにも早すぎてな!」
「うーんまあでも彼女そんなに死にたかったのかな?」
「知るか」
「っまあキミはそんな悪いことしてないなから、別にいいんじゃない?そこまで気にすることじゃないと思うよ」
「いやいや何言ってる…そんな……じゃあこの死体どうすんだよこれをよお」
「んまあそうなるよね〜殺人を犯すときは念入りな計画が必要になってくるけど、今回ばかりは特例だもんね。“思いがけない殺人“ あははっ!海外犯罪小説」にありそうななまえ〜!」
こいつは殺人のことになったら妙に饒舌になりやがる。
そんな二人の目の前には、先ほど誤って殺してしまった一つ上の先輩が血まみれで倒れていた。
“殺人“があの場で起こった後、運がいいのかわからないのだが、埜真子がやってきたのだ。
んえ〜!何これロマンチック〜!と目を輝かせていたが、黙らせ、状況を説明し、また興奮させてしまい、の繰り返しを経て、とりあえず死体を誰もいない屋上へ移動させた。誰にも見つからなかったことが奇跡だ。誰かが始末してたりして。んなわけあるかい。
と思いつつ、埜真子がいうにはここが一番人通りが少ないららしい。どうかな。ここで人を殺すならもってこいな環境だがな。
そうして今ここである。
「どうしたらいいいんだあああああ」
「あっしにいい提案があります!」
あ?
「なんですか?そのいい提案っていうのは」
「その名も、過去に戻ろう大作戦!それか、悶々火葬してしまおう大作戦!」
ぶっ殺してやろうかこいつ。
「ははは、とうとう返り血の飲み過ぎで頭がおかしくなってしもうたかお前は。火葬って、どこで燃やせってんだよ!食堂の窯でか!?ああぁ!?つかどうやって持ってくんだよ!」
「あっしは基本殺すときは不意打ちで腹部刺して凶器を百八十度回転させて内臓を抉り取るやり方だから、あんまり返り血は跳ねないんだけど、思いっきり抜いたりしない限り。ゆっくり抜いたほうが血はドロドロ出るし、映えるよ?」
映えるよ?じゃねぇよ。殺人を芸術だと思ってる奴のセリフだぞそれ。
「おけおけおけおけおけ。マッジで、マッジで一回真剣に考えよう?」
「あっしは最初っからそのつもりだけど」
さいですか。
最初っから、そいつ(埜真子)に教えて貰えばいいんじゃないのって思うかもしれないが、こいつは毎回“業者“に頼んでいるので、隠滅の仕方を知らないのだ。
「手伝ってあげようか?」
後ろから透き通った少年の声が聞こえた。そして俺たちは振り返る。
「そこにある死体についてどうやらお困りのようで。」
(さつじんき)
やばい。バレた。他の人間にバレてしまった。
しかも口調的に、先ほどから俺らの会話を聞いていたように思える。
「その死体を“なかったことにする“には、文字通り、さっきその女が言った通りにするしかないね」
こいつがもしさっきの会話を聞いていたのだとしたら、本当に聞いていたのかと思わず首を傾げてしまう。それぐらいに、先ほどの埜真子の発言は常軌を逸していたからだ。
そうして少年はトンデモないことを言う。
「これは僕が超能力者だから提案できることなんだよ?」
で、でたー。
超能力者。psychic。
実にかっこいい名前を持つ響きのいい持ち主が、今俺たちに協力しようとしている。
超能力者!?超能力者って言ったか?
もう何が出てきてきても驚かないと思っていたが、こりゃ驚いた。超能力者だなんて。
えぇー!?
もういちいち口に出してリアクションするのも面倒くさいので、心の中で完結させておくことにした。毎度毎度に過剰に驚いていたら、俺の身が持たない。
あれ?どこかで言ったセリフだな。
そうしてこの瞬間、俺は、“この世界“が“そういう“世界なんだなということを諦めて飲み込むことにした。
「そんな都合のいい話があるようには思えないのだが…」
「うん、そう思われても仕方がないよね。あまりにも都合がいいタイミングで僕が出てきてるもんだからね」
「よくわかってんじゃん」埜真子がチャチャを入れる。
「でも、今の君たちを救うことができるのはこの僕、雷神くんしかいないだろう。それは断言できるね。もし君たちがこのチャンスを逃してしまったんだとしたら、この物語が一気にシリアスがらギャグに変化してしまう。」
雷神って言うのか、こいつ。
スパークリングが得意そうだが。
しかも、よく見るとその少年、なかなかに美形だった。もしかして、
「お前、鬼ごっこの時の、あいつ?てかさっき入れ違いで、」
「あーー!あいつ!?顔可愛いかったけどクソダサかったあいつ?」
「クソダサいって思ってたのか!?」腹から声が出ていた。
「いや誰でも思うよあれは、めちゃくちゃ安全圏から威嚇してたし」
「戦略だよ!あれが普通だろ!」
「じゃあその“超能力“とやらで俺らのことを助けてくれてもよかったんじゃないのか?」
「ンまあ?あのとき僕は力を蓄えてたんだ。様子を見ながらな。けれど僕が力を発揮する前に奴らが木っ端微塵になったもんだから、僕の出る幕はなかったてわけ!」
ふーん。
「何だお前らそのふーん。って感じは!」
「てかきみさ、人殺したことあるの」
「ないよ、あるわけない」
何ぃ!? ついに仲間にいた!
と思ったけど俺は事実上もう殺人を犯しているのだった。
「何?ないの?メガネくんと同じ?じゃあなんでこの学校に?」
「それはまだ言えない」
「え?何で?教えてくれよ」
俺は早く理由を聞きたかった。聞けば俺自身が救われるかもしれないと何となく思ったからだ。
「とにかく言えないんだ。その時が来るまでは」
「というか、そろそろ本題に入ったほうがいいんじゃないのか?」
その通りすぎた。
もう一度言うが。
俺たちの前にあるこのいかれサイコパス変態野郎の死体。
どうするんだ?
「つかぬことを聞くけど、何で殺したの?」
「え?」
「いや、君はどうも、ひとろ快楽的ないしは模範的な殺人鬼に見えないもんでね。」
「いや、実は…」
俺は事の顛末を一言一句漏らさず話した。
「な〜る〜ほ〜ど。そう言う事だったのか?」
「今説明してて思い出したんだが、お前、あの時俺の横を通らなかったか?」
「ん?何のことだ?」
「え?いや、美形なやつがその場を通り過ぎたと思っていたんだが…」
「いや、僕はさっき君たちを見つけたばっかだし、好奇心で後をつけてきただけだ」
はい?
じゃああれは誰だったんだ?
「ンまあ、とりあえずは状況を理解したよ。でも僕のこの力を使えば、万事解決だね」
「その、タイムリープってやつか?」
「うーん。正確には“事実上時間相対経過地点変換能力“って言うんだけど…」
まどろっこしいな。タイムジャンプやリープとやらでも表せられるじゃないか。
「よし。じゃあ早速使わせてもらう。」
「え?ただて使わしてくれると思ってたの?」
そうなりますよねやっぱ。
「うーーーーーん。そうだなあ。じゃあさ!俺と友達になってよ!」
「え?そんなんでいいのか?もっと、その報酬を多く払えとか、カラダで払えとか、寿命をいただくとか、そう言うことじゃなくて?」
「僕は野蛮人でも未成年男子好きの変態でも死神でもないよ」
「そうなら話は早い。よし、お前と俺は今日から友達だ!」←自分で言うのもなんかハズい。
なんか話が上手くいき過ぎてる気もする。しかも友達になるだけって。以前社会現象を巻き起こした妖怪が数多く出てくるゲームのようだ。これ以上は言えない。言う権利もない。
「それでそれで!どうやって時空を越えるの!?やっぱタイムマシン?」
「そう言うのは二次元の世界だけだよ。メガネくんには今ここから飛び降りてもらいます」
は?飛び降りる?
「はあああああ!?何言ってんだお前!やっぱり俺を何かと理由つけて殺すつもりだな!」
「あはははははははははははははははははっはっははは!!死ぬ!死ぬ!」
「何が面白い!殺すぞ!」
「違う違う!ここからの高さから飛び降りないと、“ジャンプ“が“開花“しないんだ。だから、必要のあることなんだよ。」
信用できない。
が。
今はこいつを信用するしかない。
「……わかった。んで?説明しろ。」
「今から僕は君をここから突き落とす。そうしたらある程度の落下スピードがつくと思うから、その瞬間に開花するはず。そうしたら、気付いた頃には君は過去の世界に戻ってると思うよ。でもね、これ難点が一つあって、“過去は過去でもどこまで飛ばされるかわからない“ってことなんだよね。それが難点なんだよね〜。死体を過去のどこかで隠すとするなら、その時の死体本人は君がジャンプした時点で死んでしまうことになるし。色々問題が山積みだな、こりゃ」
こりゃあああああああああああ!って怒鳴りたい気分だぜ。全く。
「うん、うんうんうんうん。てかそうだよね。“今のこの死体“と“過去の生きているこの死体“って、その時点で同時に存在してしまうことになるもんね。それってなんかやばいんじゃないの?」
「うんまあ、やばいかもしれないけど、実際今死んでしまってるわけだし、多分死ぬってことは、もともと決まってた運命なんじゃないかなって。ただ死ぬ時間が早まっただけ?的な感じ。でも歴史のほんの一部を変えるわけだから、代わりに誰かが被害をに巻き込まれるかもしれない。今思えばこれは本当に危険なギャンブルだね。」
死。って時間超過でも変えられないのか。恐ろしいな。死ぬって。
「じゃあ、そろそろ行こっか」こいつが俺のそれを掴む。
「待て待て待て待て待て待て!!まだ心の準備がああああ!」
「そんな悠長なこと言ってる暇ないでしょ!」
ピーンポーンパーンポーン。一年A組、佐藤埜真子、…雷神、……。至急職員室に来なさい。
「あっちゃ〜あっし達まっずい状況に立たされてるね〜これは。授業はとっくに始まってたか…」
「何がどうまずいんだ!?」
「僕たちの命運がかけられるほどまずい」
「えええええええええええええええええええええええええええええええ何でええええええ」
「だーかーら!私たちの命を救うつもりで!早くさっさとこの死体を持ってってよ!」
えてか俺だけ行けばいいんじゃないか?と思ったが、それは難しいと悟った。なぜなら、着地時間がわからないからだ。
だから、もし殺した直後に着地してしまえば、まるで意味がなくなってしまう。ここまでと同じ展開になるとは限らないので、とりあえずは死体と同行するしかないのだ。クソっ。
俺の目的は、『死体を誰も見つからないところへ隠すまたは隠滅すること』
こんなにも葬儀屋が友達にいて欲しかったことはない。
「それじゃ、準備はいい?」
俺は死体を抱えてながら、屋上の端になっていた。シュールすぎて走馬灯にねじ込まれるだろう。
これは、自分自身とこいつらを救うためでもあるのだ。
寒い。とても風が吹いている。今にも倒れそうだ。思わず足が立ち竦んでしまう。所謂バンジージャンプの構図になっているのだが、命綱があるのとないので、スリルが人生レベルでダンチだ。
「ああ…」
「じゃあ行くよ?よーい………………どん!
っと言ってから飛んでくださーい!!!」
「ぶっっ殺す!!!!それ競争でやるやつだろ!!!人生RTAしてねぇんだよおおおおおおおおおおおおおお!」
「ナイスツッコミ!おおぉ!風も強くなってきました!!おおおおおおおおぉ!!パワー溜まってきたあああああああ!!!!!」
雲行きがだんだんと様々な意味で怪しくなっていく。それに伴い雷神の髪型がウニのように変化していく。
「はいスリーツー…わーん」
く、くる…………!怖い………!!!!
「さっさとイッちゃえ〜★」
ポンっ。
あっ。
あ、これ死ぬ。今度こそ死ぬ。
俺は高さ20メートルの高さから、そして脳天から落ちていった。
死ぬ間際でスローモーションになるのはどうやら本当らしかった。
間抜け面で、力を持て余した奴らが、無気力ながら座学を受けている姿が徐々に視界に入ってくる。
俺も今頃、あんなふうに過ごしてたのかなあ。別の高校で。
普通の青春、送りたかったなあ。
彼女、欲しかったなあ。
友達と馬鹿騒ぎしたかったなあ。
普通は、偉大だなあ。
普通に怠けたいぜ。
普通に、生きたかったぜ。
そして、
俺は、トイレの個室で例の死体と対面座位のような形で便座に座っていた。




