「なんでこんなにもエキセントリックな出会いがあるんです?初春っていうのはさ。」
スクールオブマーダーズ
murderer。
殺人鬼。
こいつらが蔓延っている世界にいきなりぶち込まれたら、君はどう思う?
いや、聞きたくない。聞いても意味がない。
.............................................................................................ははっ。なにその顔。
じゃあさ、俺がその生き残りだったら、君はどう思う?
.......................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................うん。きつい。
このキャラで初日をスタートするのは相当きつい。いや、キツいのほうがあってるか。
なんでこの俺様がわざわざ田舎の学校にわざわざわざわざわざわざわざわざわざ出向かなならんのだ。っていうスタンスでいかないとほんとに殺されてしまう。田舎の高校は特にそうだ。陰湿な奴らばかりだからな。人のココロに付け込んで、チューチューチュー味が濃いところを吸っていくグルメのヒルの群衆を真正面から駆除的に相手にするには、このぐらい高圧的にミステリアスにいかないと、絶対に、殺されてしまう。社会的に。
お前は人間関係に何かトラウマがあるのか、と言われると、そうでもない。が、
過去にそれが原因で自分を殺してしまった人が身近にいた。
自分で自分を殺す。
これ以上の虚喜劇を俺は知らない。
「にゃおっすー!ゆーりんちー」
誰が美味しく揚げられているんだ。
「ちょっとー聞いてんの?よっと、」
そいつの痛快な左フックが俺のリュックの悲鳴を上げた。
「ちょっと、え?」
「え?」
「は?」
「僕は油淋鶏じゃないです」
「あ、あのあえっと、えっと」
往生際があまりにも悪いやつだな。そんなことよりさっさと、
「何かいうことは??」
「あーごめんさーい」
あー殺意。あいにく僕は短気でね。
「なんなんですか、その態度、」
こうなったらこっちもその気になってしまう。
「まるでニュウドウカジカみたいな顔になってますよ。朝っぱらの田舎の通学路に、ニュウドウカジカが俺の目の前に出現するなんて、どうりでここは水深六百メートルから千二百メートルほどの圧力を感じるわけだ。ひー恐ろしやー恐ろしやー」
「はあ?」
「は?」
「あ?んだよ!」
「お前がなんだよ」
「オマエこそなんなんだよ」
「人をいきなり油淋鶏呼ばわりしといて、一体なんなんだよ。あいにく俺はそこまでおいしくいただけないぞ」
「よく喋るねえ、ゆーりん“チー“くん。どうやら、あっしの目には節穴は見当たらなかったようだよ〜」
ウゼェなこいつまじでいちいちよ。ちなみに初対面だぞこいつ。初めて会った気がしない空気感で会話劇を売り広げているのが不思議でならなかった。
「あの、真剣に話し合いません?」
「あっしは最初からそのつもりだけど?」
あれで?油淋鶏で?
「単刀直入に言わせてもらうけど、キミ、私とペアを組まない?」
何?
「ペア?なんのペアですか? 今は忌まわしき体育か、翳を落とすような英語のペアワークの時間ではないですよ」
「今は冬じゃないことを確認しておきたいな〜。そのキミの言い回しについてさ〜」
「そういう性分なんでね」
「そんなことより、ペアの話ね。キミが今からいく高校ってもちろん、あの城みたいな学校だよね?山のほうにあるさ」
遠くを見ると、健康そうな緑の中に、一つ、真っ白なお城のような建物が佇んでいた。
「そうですけど、同じ制服来てますしお寿司」
「うんそれでさ、(「うんそれでさってなんだよ」)あっしとペアを組んで欲しいんだよね。あの高校で生き残るために。」
生き残る? ははっ。そりゃたいそうな目標だけど、そんな生き残るなんて大事ではないでしょ。スクールカーストの圏外に位置付いてしまうのがそんなに怖いかね。そりゃ、俺も経験あるけど、実際そこまで困ったことにはならなかったけどな。自由でいい。自由で。そう、自由でいいんだよ。怖いほど自由なんだから。ほんと。彼女はそれが心底嫌らしい。
「冗談ですよね?」
「冗談だったらいのにね」
「冗談ではないと。」
「全く、冗談じゃない」
「こちらとしては、冗談じゃないですよ」
「エア?」「ジョーダン。」
ほう。ふーん。
一応息はぴったりらしかった。
「あの、生き残るってどういうことですか?」
「それは、」
彼女が重要事項を言い出そうとしたその時、一台のバスが俺たちの横を颯爽と走り抜けた。
そして。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおやべええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええおいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい走れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ殺されるぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお待ちやがれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええうわあああああああああああああああああああああああああああああ」
はあああああああああああああああああああああ!?
彼女はそのバスと並走を始めた。鉄腕DASHのように。これが収録できてたら、なんたる伝説だっただろう。
このエキセントリックガールに出会ったのが、俺の運の尽きであり、運の貯金生活の幕を開けたのだった。
*
なんでこんなにもエキセントリックな出会いがあるんです?初春っていうのはさ。
あのバスを追いかけてはや三千里、にも及ぶわけない距離でそのバスは停車した。
あの彼女の発狂を返してあげて欲しいものだ。まるで果てた男性器みたいになってるじゃないか。だがしかし、そのバスの運転手さんがえらい巨乳だったので、今回は許そうとしようかな。
「きもっ」
あ?
………………………。
それにしても、あの巨乳はやーばい。やばすぎる。この世界にあるどんな山頂よりも、いい景色だった。このバスに乗車して、運転席からちょっと遠い場所に座ってしまったのだが、それでもまだ存在感があるのだ。FUUUUUUUUUUUUUUU!!!!! たまんねえぜええええええ!
「マジでキモいんだけど」
やっぱ絶対言われてるわ。
誰だ?辺りを見渡す。しかし多くの学生が乗っているため、特定できない。にしても東京マラソンぐらい人がいるじゃないか。いつの間にか。
「ふん、マヌケが」
あぁん?
「これだから男子は。ヘンタイディックが。」
えげつないな。でも誰だかがわからない。脳内に直接語りかけてるのか?
「その通りよ。」
え、まさか。
「あんたの横にいるそのニュウドウカジカの水分を少し抜いたようなカワイイ娘ではないわよ。」
さいですか。てか同じ感性なんですか。というか脳内に直接語りかけてんすか。
「そうよ。あなたのココロの声があまりにも鬱陶しくてね」
そんなに?
「そんなによ」
どっちなんですか。
「その逆のほうよ。」
マワリくどいなあ。
「あなたと同じ感性なのはほんと死にきれないぐらいに吐き気がするけど。一つ忠告しといてあげるわ。あなた、見た感じ何もできなさそうね」
どんな忠告だよ。なんも忠告してねぇじゃねぇか。
「その減らず口と世間知らずなところが危険だということを忠告してあげてんのよ。」
あっさいですか。でもなんで俺にそんな親切に?
「別に親切にしてあげているつもりはないけれど、意外とあなたみたいな人間が敵に回るとめんどくさいからね。先手を打ったの。」
ふーん、別に俺はやられたらやり返す精神でしか攻撃しないけどね。
「まあ、今にわかるわ」
何がよ、正体も明かさんくせによう言うわ。
『次はー白百合ヶ丘勿忘学園前で〜す』
え?
俺は、少し身を乗り出し、運転手の方を見る。
『大変混雑しておりますので、お降りの際は…』
いや巨乳が話しかけてきてたんかい。なんやねん。こう見たら顔かおっぱいどっちが本体かわからんわ。
「あんた絶対殺す」
俺はドMなので、巨乳のお姉さんに窒息死させられるのは無論最高だが、殺されるなら、あいにく俺は、好きな女の胸にでしか殺されたくない性分なので、あなたにはゼッタイに殺されたくないですね。ご奉仕で十分かな。ははは
「やっぱ殺す絶対殺してやる」
まあまあ、落ち着いてください、全くもう、心の声がダダ漏れですよ。車内に響き渡っちゃってる。てゆうか俺と敵対関係を結ぶおつもりですか?あなたはそんな関係を望んでいないはずです。公共の場で巨乳お姉さんと一般的な学生がヤリアッタラ、すぐネットの海坊主たちに祟りまくられますよ。まっったく。
もし望んでいたとしたら、あなたはとっくに僕の首を絞めあげていることでしょううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいいいいいいいいいい!
巨乳運転手が運転を疎かにして真っ先に俺の首を絞めているではないか。強い。あまりにも強い強さで。車内は一瞬の出来事すぎて理解が追いついていないようだった。この場合なら被害者本人が理解に追いついていない状況ではあるが、まさかのその逆。そして、全体重をかけて俺に馬乗りになり、首に彼女の青白く柔らかい手がこれでもかという程めり込んでいる。トンネル効果が発生しそうなぐらいに。乗客に見下されながら殺されかけてゐる。
死ぬ。マジ死んじゃう。なんで、なんで誰も助けてくれないんだよおおお!
「ぎゃああははははははははははははは」
「ぐっっっ……があっっ」
彼女は巨乳をこれでもかと揺らしながらそして絞めながら魔女のように笑う。
かつてこんなにイカれてる魔女がいただろうか。魔女ってそんななのか?
あまりにも俺に余裕があると思ったそこのお前、今ならギャラ全部あげるから俺と変われ。
すると彼女の三本目の腕が彼女の背中から生えてきて、その手が俺にアイアンクローをお見舞いした。頭蓋が徐々に両側から押し潰されていく感覚。痛い痛い痛い痛い!
そうだ、運転は? 誰が俺たちの早朝の命を預かっているんだ!
かろうじて運転席を見やると、トイレの花子さんのような黒髪のおかっぱちゃんがいた。
おいおいおいおいおいおいおいおい、ニュウドウカジカじゃねぇか。
あいつ、バス運転できるんだなあ。まあ、バスと並走してたしなあ。
やば……い。マジで………まだ、バージンも預けてないのに………………
最愛の奥さんとも、まだ、出会ってないのに………。
キィっぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!
意識が飛びかけたその瞬間、バスに大きなカンセイが働いた。そのおかげで俺は、魔女の呪縛から逃れることができ、一命を取り留めた。
後方へぶっ飛んだ魔女は、立ち上がり、警戒しながら俺も立ち上がった。ノロノロになりながら。とんでもない吐き気が俺を襲ったが、これ以上、敵を増やしたくないので、抑える。
バスの扉が開き、乗客は一斉に降りた。ん?
魔女の右フックが俺に向かってきた。思わず体を左側にそらし流した後に、手首を掴み、膝蹴りを入れようとする。だが、まともに戦える技能をあいにく持ち合わせていないのと、思ったよりも彼女の身長が高かった。巨乳に膝がソフトタッチしただけだった。効果があったとすれば、俺のラッキースケベ記憶保管庫に厳重に収納されたことぐらいだった。そして、その足を掴まれ、レバーのように上に持ち上げられ、俺は背中から転倒する。イッテエエエええええええええええええええええええええええ!!
グハッ、となっている俺を横めに相手はすかさず俺の腹に蹴りを何発も入れる。これが案外気持ちいいことは内緒だった。
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!この腐れ外道がああああ」
「そこまっ、でっ、くっ!いまなくてぇっ!ああぁ!いいだロオオオオ!!グハッあああっ!」
攻撃が止んだかと思いきや、また馬乗りになって俺の顔を何発も殴ってきた。俺は田中星人に殺されかけているのか?そのぐらいの再現度はあると思うぞ。とりあえず両腕でガードしても痛いものは痛い。腕とおっぱいが逆ならいいのになあ!
ざくっ。
はあ、はあ、はあ。
攻撃、止んだ……?
ボコボコの腕をそおっと開いて視界を明けた。
目の前には、首をニュウドウカジカに鉈で串刺しにされている魔女の姿がそこにあった。




