第43話 いきなりデート大作戦
祭りで賑わうカネッラの街。街中にはいくつもの露店が並び、サーカスや演劇等の大型のテントもある。通りは多くの人でごった返していて、気を付けていないとはぐれてしまいそうな人込みだ。
そんな街の中、道の外れで僕は唸り声を上げる。
「むむむぅー」
僕のすぐ近くにはお馴染みリトライズの面々とブレイドファングの人達。だけど全員は揃っておらず、2人ほど数が足りない。シシルーとリュートが居ないのだ。
そのシシルーとリュートはというと、僕達とは離れた所で二人並んで歩いている。僕はそれを感知スキルで遠距離から覗いていた。
そんな僕にレイラが質問を投げる。
「ねぇ可奈芽ちゃん。2人は今どんな感じ?」
「うーん。良い雰囲気ではあるだけど、2人とも照れてる感じ。僕としては手ぐらい握ってほしいんだけどねぇ」
僕の報告に他の皆は言葉が続く。
「やっぱそんな感じかー」
「お互い好き同士で付き合いも長いんだし、そんな照れなくても良いだろうになぁ」
「だが、お互い意識し合っているのは良い傾向。これならば、何かキッカケがあれば一気に関係も進むであろうな」
「まぁ急に2人っきりになった訳だしなぁ。心の準備とかが出来てなかったんだろ」
わいわいとそんな話しをしつつ、僕の感知スキルを頼りに二人を尾行していく。
なんでそんな事をしているのかというと、事は10日前にさかのぼる。
僕達リトライズとブレイドファングは、10日後にカネッラにて祭りがあるとの事で一緒に遊びに行く計画を立てていた。
「今年もこの時期が来たぜ、ミズディア祭」
「あぁ。毎年恒例だもんな。シシルーも一緒に行けてよかったよ。パーティーから抜けて、今年は一緒に行けないかもって思ってたからな」
「やっぱりお祭りは皆で行きたいよねー」
「ですね」
ロッツを除くブレイドファングの面々とシシルーは毎度お馴染みといった感じで話している。
カネッラの街はシシルー達の故郷の隣街で、近場という事もあってシシルー達は幼い頃からよくそこの祭りに行っていたらしい。パーティーを組んでからは毎年皆で通っていて半ば恒例行事になっていた様だ。
(ねぇミズディア祭ってどんな祭りなの?)
僕が頭の中で神様に聞いてみると、待っていましたと言わんばかりに祭りの神が語り出す。
(繁栄を象徴する神ミズディアに捧げるものでな。これまでの繁栄に感謝し、これからの繁栄を願うための祭りだ。産業の発展そのものを祝い願うもんだから、今年に取れた新鮮な食材を使った料理を振る舞ったり、新しい技術で作られた商品を紹介したり、新しい娯楽とかを公開する場でもあるんだ。神に捧げるって言っても厳格なもんじゃなくて、思いっきり楽しんじゃおうってノリの祭りだから、可奈芽ちゃんも楽しめると思うぜ?)
(ほうほう。神事的な側面よりも娯楽的な側面が強い祭りなんだね。結構楽しそうじゃん。そう言えば、このミズディアって神様は豊穣神の名前でもあるんだよね?)
(はい。国の産業全般を司っている神なので私も含まれますね)
僕の問いに豊穣神は同意の言葉を返した。
この世界の神様にはある特徴がある。これは僕がこの世界に来て1月程した頃に分かった事なんだけど、どうも僕に話しかけている神様というのはこの世界の特定の物質や現象といった特定の分野を司っている管理者的な存在らしい。だから特定の国家や部族等が信仰している存在というよりは、それぞれの信仰ごとに呼ばれ方が違うという感じ。豊穣神と言っても信仰ごとで様々なのだ。
だから別の国に行くと当たり前の様に呼び名が変わるし、石と土をまとめて大地とする様に複数の神々が一つの名前で呼ばれたりもする。名前が多すぎたり被ったり呼び名が増えたりしてややこしいから、神様同士の会話だと名前ではなく自分達の管轄する分野で呼び合っているとの事だ。
そしてカネッラでは繁栄の神ミズディアが豊穣の要素も含まれているから、そこでは豊穣神はミズディアという名で呼ばれている。
(じゃあ豊穣神さんもその日はお楽しみって訳だね)
(はい。私も毎年楽しみにしているんですよ)
自分のための祭りという事もあってか、心なしか豊穣神もテンションが上がっている様子。とても嬉しそうだ。
神様とそんなやり取りをしつつも、僕は皆と当日の計画を話し合っていく。
「当日は何処行く?」
「とりま食べ歩きっしょ」
「サーカスとかどうですか?」
「やはり演劇は外せんな」
「締めの花火も見ておきたいよねー」
「あー、あのカップル2人っきりで一緒に見ると永遠に結ばれるってやつね」
「回る順番はどうします?」
と、こんな風に。僕達は予め何処へ行くかを話していく。出し物はある程度分かっているからそれを元に当日の予定を組んでいき、粗方決まった所でブレイドファングのレイラが皆に告げる。
「さて。予定はだいたい決まった事だし、今日はここらでお開きにしよっか」
レイラの解散宣言に続き、僕は挙手して皆に言う。
「んじゃ、僕ちょっと野暮用があるから抜けるねー」
それに続いて、皆もそれぞれ理由を一言言ってこの場を離れていく。
「俺トイレ行ってくる」
「オレは買い出しに行ってくるよ」
「リディルカはゆっくり読書するとしよう」
こうして皆がバラバラに離れていったのだけれど、リュートとシシルーを除いた皆はすぐに別の場所で集合した。事前にリュートとシシルーを除いた皆が集まる様に示し合わせていたのだ。
「それじゃあ計画通り。当日はここの皆は待ち合わせの場所に行かずに、リュートとシシルーの2人だけにするって事で」
「祭りの日を2人きりのデートの日にするって事だな」
「あの2人。あのままじゃあいつまでも進展しなさそうですもんね」
「んで、僕の感知スキルで遠くから様子を見るって事だね」
「あぁ。頼むぜ可奈芽ちゃん」
僕達はリュートとシシルーを2人きりにする計画を事前に裏で話し合っていた。
祭りの当日に皆で約束をブッチして、リュートとシシルーの2人だけで落ち合う状態にし、僕の感知スキルでそれを尾行していく作戦だ。
「でもいいんかなー。皆で行こうって言ったのに、いきなり2人っきりにするなんてさ」
約束を破る事に少しばかりの負い目を感じているニーリェに、それを笑い飛ばす様にレイラは言う。
「良いの良いの。リュートもシシルーも祭りとかも皆で一緒に行こうってタイプだから、全然2人っきりになんないんだもん。ちょっとくらい強引にいかなきゃ素直になんないよ」
「うんうん。時には周りの後押しも必要になったりするよね」
「周りに応援されて実る恋。これもなかなかに乙なものであろう」
レイラに喜々として賛同する僕とリディルカを見て、ニーリェは呆れ顔だ。
「って可奈芽もリディルカも面白がってるだけじゃないか?」
「ははは、まぁ否定はしないよ」
そんなこんなで、僕達は約束の時間に約束の場に行かない事でリュートとシシルーが2人きりになる状態を作り、僕の感知スキルを駆使してその2人を尾行する事となった訳だ。




