第44話 追跡中
感知スキルで様子を眺めていると、2人が何やら話し始めた様子。
僕は意識を集中させてその会話の内容を聞いてみる。
「まったく、あいつらときたら。急に俺1人で行けって言うから何か思えば」
「だね。私も、皆急用ができたって言いだして、何だろうおかしいなって思ってたらさ。リュートの方も1人で来ててびっくりしたよ」
歩きながらも少し間を置き、再び2人は一言。
「まぁ中止ってのも何だし、今日は2人で祭りを回ろうか」
「うん。せっかくのお祭りだしね」
頭を掻き照れながら提案するリュートと、もじもじと照れながら同意するシシルー。しぶしぶ的な事を言いながらもまんざらではない様子の2人。見た感じは完全に付き合ったばかりのカップルで、とても初々しい雰囲気だ。
ひとまずはリュートとシシルーは2人で祭りを回る運びとなった。第一段階はクリアといった所か。僕は計画通り、2人を見失わない様に感知スキルでの注視を続けていく。
「それにしても、街中を感知するのってめんどくさいなぁ。黒塗りばかりで見ずらいったらない」
感知スキルで上手い事探れない事に拗ねる僕をなだめる様にニーリェは言う。
「それはしゃあないよ。ダンジョン内でならともかく、街中だからな。感知スキル対策なんてそこら中にある」
この世界では感知スキル対策はごく当たり前のものになっている。まぁ壁を透過したり遠くの状況を見聞きする能力を持った人が居る世界なのだから、それの対策が発展するのは当然ではある。
感知スキルを阻害する魔道具は一家に一つはあるくらいまで行き渡っているし、小さなお守りくらいの大きさなので持ち歩く人も多い。だから感知スキルで見える映像は所々黒いモヤで塗りつぶされている感じになっている。建物は基本的に中の様子は見えないし、所々で黒いモヤが歩き回っているしで、正直とても見辛い。
そんなめんどくさがっている僕に神様が提案する。
(良ければ私がシシルーさんとリュートさんの状況をお伝えしましょうか?)
(え?神様って現地の様子とかも分かんの?)
(普段は街の様子は見えないのですが、今日は祭りの日、この祭りは豊穣神である私に捧げられたものでもあるので、見る事ができるんですよ)
(なるほどね。ダンジョン配信が神への捧げものだから神様達が見れる様になるのと同じ理屈か)
(はい)
(じゃあ僕が見失ったりした時とかにはお願いね)
こうして僕は見失った時の保険を用意しつつ尾行を続けていく。
リュートとシシルーは屋台を巡り、いくつかの屋台飯を買い、ベンチに座ってゆったりとした食事を始める。最近あった事や自分のパーティーメンバーの事やこれからの事、そんな世間話をしながらも二人は屋台飯フルコースを堪能している。
一方僕達は張り込みスタイル。各々買ってきた屋台飯を手に持ち、立ち食いしている。
僕はサンドイッチと串焼きの二刀流をしながらも皆に状況を報告する。
「2人とも良い雰囲気。今世間話に花咲かせてる。照れも無くなってきて、お互いに笑顔を向け合ってるし、もうこれカップルの会話って感じだね」
2人の距離感にカップル誕生を予感する僕だったけれど、ブレイドファングの面々は晴れない表情。何か思う所がある様だ。
「そうなんだよねー。2人とも良い距離感ではあるんだよねぇ」
「だよなぁ。2人だけになると見て丸わかりなくらいに互いを意識しているし、2人とも話していると会話は弾むし、もう付き合ってる様な距離感なんだよ」
「付き合いの浅い僕が見ても分かるくらいですもんね」
「あれで付き合うまで行かないから、悩ましいんですよー」
どうやら2人の距離感は元々十分に縮まってはいるらしい。恋人同士の距離感になっているのに、付き合うまでいっていない。だからキッカケが必要だとなったという訳か。
「アタシらもさ、小さい頃から2人の関係を見てきたから、2人の恋は応援したいんだよね」
ここで僕はふと気になった事を聞いてみる。
「ねぇねぇ。リュートとシシルーってどんな感じに両想いになったの?僕シシルーがリュートを好きになった理由とかは知ってるんだけど、リュートがシシルーを好きだってのは知らなかったよ」
僕の質問にシシルーの幼馴染である3人は各々語る。
「多分一緒に遊んでいく内に惹かれていったんだと思う。最初は引っ込み思案なシシルーがなんか懐いてるって感じだったんだ。元は積極的に喋らない子だったんだけど、そんなシシルーがリュートにはよく話しかけたりして、たまに手作りのお菓子とか送ったりしてさ。そんな意識している素振りを見せていく内にリュートも意識していったって感じかなー」
「だな。元はシシルーの片思いだったのが次第に両想いになったって印象だ」
「シシルーって奥手な感じですけど、アプローチは積極的でしたもんね」
話を聞いた僕は食べ物をモゴモゴと頬張りながら言う。
「へぇー、シシルーにそんな一面がねぇ」
そう言えばパーティーのためにと自分が抜ける決断をしたりしているし、シシルーは案外積極的で思い切りがいい性格をしているのかもしれない。
まぁ年頃の男子が可愛い女子からのアプローチを受けたのなら、意識しない方が無理というものやもしれない。
しばらくしてリュートとシシルーは会話交じりの食事を終え、食べ物の屋台が多くある所から移動、主に展示品や試作品が公開されている場所へと向かう。
国の繁栄を祝うミズディア祭。そこでは最新の技術を公開と宣伝等も行われており、それが展示や販売をされている所もミズディア祭の見所の一つだ。
リュートとシシルーはまだ市販されていない様な真新しい商品をお揃いで買ったり、研究開発されたばかりの最新の設備を試用したりで祭りを満喫していく。
人気なだけあって列に並ぶ事も多いけれど、2人は買ったばかりの品を見せあってはしゃいだり、次にどこ行こうか話し合ったり、列に並んでいる間すらも楽しそうにしていた。
他の皆も色々と見て回りたい欲が出てきた様で、さっきまで一まとめに動いていた皆も各々祭りを堪能しつつあった、そんな時だ。
リュートとシシルーがとある最新の魔道具の試用をしていた。適性が全く無い者でも感知スキルを使う事が出来るという代物で、大型な設備なせいで椅子に座り様々な器具を付けた状態でしか使えない代物ではあるけれど、普段体験できない感知スキルの感覚が分かるとあってシシルーはウキウキで試用している。
「へぇー。可奈芽さんっていつもこんな感じで調べてたんですねー。大量の情報が頭に流れてきて、なんだか頭がクラクラするなぁ」
と感想を言うシシルー。そんなシシルーは何かに気が付いたのか言葉を漏らす。
「あ、可奈芽さんが居るじゃん。よく見たら皆も来てるし」
どうやら尾行がバレた模様。あの装置で体験できる感知スキルは結構な広範囲高精度な様で、遠くからでも僕達の存在に気付いたらしい。
「あちゃー。見つかっちゃったかぁ」
バレたならもう尾行しても仕方がない。僕は他の皆へ尾行がバレた事を伝え、ひとまず全員集合する事にした。




