なに、喜んでるんですかっ
なんだかんだで結局、 未悠たちは盗賊と一緒に酒を呑んでいた。
いや、盗賊なのかは知らないが――。
虎の毛皮の男は、リコと呼ばれているようだった。
「で、結局、貴方がたは何者なんですか?」
未悠はリコにそう訊いてみた。
「トレジャーハンターだ」
とリコが言うと、左右のいかつい男たちが酒を吹く。
「廃墟に眠る財宝とか」
とリコが言うと、右の腕にトゲのような腕輪をやっている男がぼそりと、
「廃墟の城のタンスに落ちてた銀貨を拾ったり……」
と言う。
「独り身の金持ち女から金を奪ったり」
いや、それは強盗ですよ、と思っていると、反対側の足にトゲのような足輪をやっている男がぼそりと、
「なんか年増の女に言い寄られて、ひどい目に遭って、また来てねーって金握らされただけですよね。
もう帰りましょうよ、坊っちゃん~」
と泣きついている。
どうやら、この『坊ちゃん』の護衛らしい二人の言葉を無視しながら、リコは未悠に向かい、言ってきた。
「ところで、お前は何者だ」
つまみになるような料理を運んできたイラークが、お前らは出会ったとき、まず自己紹介をしないのか、という顔で見ていた。
いや、まず、名前を知らなかったんだが、と思いながら、未悠は言う。
「た、旅芸人の一座です」
沈黙があった。
「あのとき着てたドレスは?」
「あれは仮装です」
自分で言っていて、そこだけは間違いない気がしていた。
自分のような庶民があんなドレスを着ても、ただの仮装にすぎないような気がしていたからだ。
ところが、リコは、
「そうか?
ずいぶんとサマになっていたが。
お前は出自の良さそうな匂いがする」
と言ってきた。
うっ、と未悠はつまる。
その一言が、自分が王の子であるという事実を裏付けしているように聞こえたからだ。
リコは軋む木の椅子の背に大柄なその身体を預け、
「旅芸人の一座ということは、芸ができるんだな」
と言ってくる。
できるわけないだろう、と思う横から、自分の連れのはずのヤンが、
「芸とかできるんですかっ、未悠様っ」
と驚き、言ってくる。
いや、旅芸人の一座なら、貴方もできなきゃ駄目でしょうよ。
もうこの時点で駄目な感じだが……、と思ったとき、派手な音がして、宿屋の入り口の扉が撥ね開けられた。
リコたちみたいな、なんちゃって盗賊団ではなく、本当にヤバイ感じの男たちが現れた。
「この宿はずいぶん景気がいいようだな。
こんな時間まで、客が大勢居て」
先頭のスキンヘッドの男は肩に太い棒を担いでいる。
それを見ながら、
「……めん棒」
と未悠が呟くと、料理を手に、たまたま横に居たイラークが、
「さすがに、あれは棍棒だろう……」
と言う。
「おっと。
いい女が二人も居るじゃねえか」
とその男がこちらを見て、にたりと笑う。
未悠は思わず、周囲を見回した。
今、この食堂には、自分とあの妹さんしか居ない。
よかった。
いい女に入れてもらえて……。
「なに喜んでるんですか、未悠様っ」
とヤンが言ってくる。




