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Angel(5)

「やだー! やだよー! こんなの絶対痛いじゃんよー!」

「んーまあ、あんなに尖ってるからね」

「刺さるじゃん! すげえ刺さるじゃん!」

「まあ、刺さるように出来てるからね」

「やだよ! 絶対痛いもん! 絶対痛いもんあれ!」

「はぁー……ところで、何やったんだっけ、あんた?」

「人を3人殺しました」

「理由は?」

「むしゃくしゃしたから」

「はい、ドーン!」

「ぎゃああああああああああああ」


 うわー刺さってるわー。ものすんごい刺さってるわー。

 


「どうだ、カガリ」

「あーレグさん。順調っすよ」

「何の躊躇いもなかったな」

「いやだって理由がひどいから」

「地獄に来るやつはそんなもんだ」

「ええ、ホントろくな奴いないっすね」

「にしても、お前は手際が良すぎる。カガリ、お前本当に天使なのか?」

「ベテラン獄職員にそう言われると自信なくなってきましたよ」

「ベテランじゃねえよ。これでも若手だ」

「そうなんすか?」

「ああ。毎日毎日これの繰り返し。何が良くて何が悪いかもよく分かんねえ」

「大変っすね、地獄は」

「天国はどうなんだよ。きっとものすげえ楽なんだろうが」

「楽ですよ。死ぬほど。もう嫌んなるくらい」

「暇ほど地獄なもんはねえってか」

「そんなとこっす」

「まあ何にせよ、お前地獄向きだよ」


 そうなんだろうなと思う。だって他の天使が今俺がやったように簡単に罪人を裁けるだろうか。いくらろくでもない理由でろくでもない殺人を犯した奴だったとしても、他の天使なら泣きながらこくこくと何故そんな事をしたのかと問い詰めて改善させようとするのだろう。

 でもここはそういう所じゃない。どうしようもない罪を犯した者を裁く為の場所だ。今更赦しなど必要ない。現世の時点でそれがいけない事だという教えは散々しているのだから。悪い事をすれば地獄。常識も常識。まあそこまで割り切れてる時点で、俺はやっぱり地獄向きなんだろうな。

 


 ここでちょっと仕事を手伝ってみて分かったことがある。

 ここは必要な世界だという事。

 他の天使達は地獄の事をあんな酷い所をと敬遠する。でもその酷い場所が必要なのだ。

 表と裏。光と影。どこまで行っても、どの世界にも対極という概念は付き纏う。

 天国と地獄。まさに対極の存在。

 まっとうな人間の行く場所が天国。でももし地獄がなかったら?

 そんな人間まで天国で面倒を見れるだろうか。地獄に行くような罪人を扱う為の世界がなければ天国は存在し得ない。

 地獄という凄惨な空間がある事で、生きている人間達も善悪を意識する。彼らには見えていない世界のはずなのに、その世界の事を想定して生き方を考える。

 必要悪という言葉があるが、まさに地獄なんてその最たるものだろう。極上の悪の拠り所を創造する事で、悪をまとめて収容する。そう思えば、ここがただの酷い場所ではなく必要なものだと思う事が出来る。天使達はきっと、その辺りを分かっていない。

 ここでやっている事は、必要な事なのだ。


 ――俺、働く場所間違ってたのかもな。


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