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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.11

 ミミルを抱き抱えたまま私は途方に暮れる。本当、どうして忘れていたのかしら。ミミルは安心してくれたのかもうすでに寝てしまっている。少し重いけど、この重さがまた私を少し幸せにしてくれるから好き。


 しかし………ベッドに座って待ち構えている熊男は私を見て固まっている。なんと言いますか、いつまでそこにいるの?個人的には出ていってほしいのだけど。どうして分かってくれないのか。分からないのはその熊か人間か分からない容姿だけでじゅうぶんだわ。


「話は明日にしましょう。私は寝ます」


「分かった。ありがとう」


「………………礼なんて、受け取らないわ」


 さ、退いてちょうだい。ミミルを寝かせて私も抱き締めながら眠るのよ。子どもって暖かいから眠るのに一番最適なの。今は春だからまだ少し風が冷たくて困るし………今年の冬は子どもたちと一緒に寝ようかしら?


 そんな事を考えながらミミルと一緒に横になる。暖かい。このまま眠るのも、いいわね。後ろの視線さえ気にしなければ。少し嫌だけど、振り向けば所在なさげに熊男が立って見下ろしている。大熊(人)なのでかなり威圧感があるが、なにか言いたげな雰囲気を出していた。


「ここにいても、いいか?」


「それしかないでしょう。でもベッドは無理よ。貴方と一緒に使うなんて考えてないし、まず貴方が使うと誰も入れない」


「………………そうだな」


「悪いけどそこのかけてあるローブでも使って床でお願いするわ。本当は居間の毛皮の上がいいのでしょうけど、朝に貴方が居間にいるなんて騒ぎになるだけだもの」


「すまない。感謝する」


 そう言って熊男は私のローブを取りに行った。まあ、小さいでしょうけど、ないよりはマシよ。後は明日になったらみなが起きる前に説得でもなんでもして追い出せばいい。そうしましょう。


 ―――で、なんでそこで寝ようとするのかしらね?離れた所で寝ると思っていたのに………明日の予定を考えていたらこの熊男は戻ってきた。何をするのかと気配を探れば、ベッドを背にもたれて停止する。つまりは座ったまま寝るつもり?護衛じゃあるまいし、やめてほしい。


 しかもそのまま寝息まで聞こえてきた。なんなの、この熊男っ!まったく………まあいいわ一日ぐらい我慢すればいいのよ。ミミルや私に変な事をするわけでは無さそうだし、大丈夫よ。念のため毛布に弾く魔法をかけて置けば一先ず安心だわ。押さえ込もうとしないし、まだ大丈夫よ。


 そんな私の『大丈夫』はすぐに大丈夫ではなくなるのだけどね。この時、私は大丈夫で安心していた事を、後悔する。






「………………ちょっと」


「なんだ?」


「なんで私、抱えられているのかしら」


「………………起きたら、こうなってた」


 ふざけないでくれる?私の魔法はどこに消えたのよ。ミミルを抱き抱えた私の背中から暖かみがあり、重くて太い長いものが横断してる。位置もなぜか私が奥の方に詰めている状態。壁側に設置してあるベッドの壁が妙に近い。


 見なくてもわかるわ。寝起きでもだいたいの状況を把握した。つまり、この熊男は弾く毛布の威力をものともせずに私ごと押しやりスペースを作ったのね。自分が入れるスペースを。熊男の体では窮屈なために私たちを抱き込んでベッドに修まった。そう言う事よね?


 まだ朝日が上っていないからミミルも起こせないじゃないっ。と言うか、いつから私の背後にいたの?だから嫌なのよ王国騎士って!言動すべてが強引で取り合わない!本当に腹立つ。


「いいからどいて。起きるわ」


「まだ、寝てればいい」


「起きます」


「………………」


 で?なぜ私を抱き締めているのかしら?しかもちゃっかり私の右手を塞ぎこんでいる。魔法阻止よね?これ。動こうにもミミルがいるから迂闊な事ができない。泣いていたからもう少しこのままでいたいのだけど………熊男って本当の邪魔だわ。


 ようはミミルを起こさなければいいのよ。そうよ。暴れるわけではないの。少し動く程度よ。大丈夫。子どもの眠りは深いものよ。


 そうと決まれば私はミミルを起こさないように体を少しだけ離―――せないわね。ああ、どうしましょう。もういっそ二度寝しようかしら。でも起きてしまってはもったいないわよね。今日は昨日の続きをしたいところだけどこの熊男がいるし………いっそミミルごと下に降りましょう。そうしましょう。


「朝の支度をするわ。退いてくださいな」


「………ローブ」


「なに?借りた奴は戻しておいてくれればいいわ」


「なぜ被ってる」


「答える義理はないわね」


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