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誤字・脱字等を修正いたしました。27.5.6

 静かに冬を越え―――雪解けの春を迎えて夏の移り変わりに子どもたちが風邪をひいてみたり。アーテとバナルに家名を与えて送り届けたら秋に備えて服を整える。秋から始まる冷たい空気はやがて冬を呼び寄せて銀世界の輝きが私たちを包みながら眩しさに目を細めた。


 銀世界から耳のない幼きエルフを迎えて、春には同じ子どもたちと一緒に手を繋いでは彩り豊かな地面に笑顔をこぼす。次第に暖かくなればロロに家名を与えて背中を押し、木の葉の絨毯に足をとられてはしゃぐ子どもたち。その中から顔を覗かせる小さな狐の子は怯えながらも私たちの家に踏み込んで北風がやってきた。


 少し強い北風はそうそうに白に粉を大地に踊らせて子どもたちを喜ばせるけど、早かったそれは幼い子どもたちに風邪を引かせるちょっと意地悪な冬。とても慌ただしい季節だった。


 熊男たちを強制的に国へ返して二年。耳を使って得た情報はまず、みんなが生きていると言うこと。忽然と姿を消した四人が、突然と国王の目の前に現れたことにより攻撃をされていたらしいけど、私の指輪がちゃんと守ったらしいわ。それから自らの名でその場を収めたことによって死は遠退いた。


 最初は戸惑っていたようだけど、殿下の純粋で直向きな言葉はまっすぐに国王に伝わってくれたみたい。まあ、でしゃばってきた貴族がいましたけど。意外にもマーデクが頑張って、その貴族を黙らせていた。やれば出来るじゃない。


 それから殿下はその勢いで躓かないためにも、民を集めて自分の意思を伝えていたわ。私はここにいるから、見ることは叶わなかったけど―――あんな考えなしの殿下を見た後だからどうなるかと思ったけど………殿下の伝えようとしている言葉、意志、心がのった演説は少しだけ涙を誘う。すべて、伝わったわよ。


 民は戸惑いながらも、殿下の声に耳を傾けていた。聞いてくれただけでもじゅうぶんだと私は思う。そのあと国王の退位。殿下の王位継承権剥奪。代理王に新国王の設立に国は大騒ぎだった。とくに新国王はまた三歳のテジラト殿下になるのだから、民も不安でしかたがないようでしたけど。そこはアヴリーベの名を使って黙らせていたわ。


 ちょっと待ったをかけたかったのだけど………まあ、いいでしょう。殿下が思い立ってくれたおかげでこの国は奮い立ったのだから。


 ハーフエルフ迫害もほんの少しずつ、改善しようと努力をしているみたいですし。まだこれからなんだから頑張ってほしいものね。そうそう、殿下の処遇はテジラト殿下―――王の臣下となったわ。待遇がいいような気がするのだけど、そこも元国王が色々と制限をつけて頑張っていたわね。


 殿下の一代で終わらせる爵位の準男爵に落とされてテジラト王の家庭教師として修まり、毎日、四六時中ずっと監視されながら教会の方で寝泊まり。爵位がないと教えられないとか、面倒よね。


 ハーフエルフの迫害をなくそうとする活動はこの教会から始めるらしいわ。それを支援するのがアーバン、マーデク、ゼフォンドの三人。


 最初はやはりハーフエルフの事で遠巻きにされていたけど、ようやく二年目にして最近ではハーフエルフの存在を見直している人が増えたみたい。たまに王都へ子どもたちを送り届けたらそんな事を教えてくれたわ。


「よかったですね!ホルティーナ様」


「あらテテラ。いきなり何かしら?」


「殿下………今じゃ準男爵様のおかげでハーフエルフの見直しがされている件ですよ!」


「ああ、あれはよくそうなったわね、としか思えないのよ」


「あれ?なぜそんなに他人事なんですか?」


「もともと期待はしていなかったからよ」


「―――そんなこと言って、ガトラさんを追い出した後に隠すためのローブを取ったじゃないですか」


「貴方たちに言ってしまったから吹っ切れたのよ。別に、ハーフエルフ迫害を払拭してくれると信じていなかったわ。ここだと誰も来ないもの。いい加減、隠すのが馬鹿らしくなっただけよ」


「ホルティーナ様って、意外と頑固ですよね」


「テテラ、手が止まっているわよ」


 あ!て声をあげても遅いわよ。ああ、鍋底に少しこびりついているわ。もう。調理中にナイフと火を使っているときはじゅうぶんに気を付けなさいと言ったのに………もうすぐテテラが出ていくからか、最近話題のハーフエルフの話をよくしてくるわ。


 それは間違いなく、私を気遣っているのでしょうけど………髪に隠れているから耳は見えていないし、別に問題も少ないと思うのよね。さっきも言ったけどここには『生きたい』と願う人しか来ないのだから、本当に問題ないと思ったのよ。


「あー、私がいる間にガトラさん、ホルティーナ様を迎えに来ないかなー………絶対この瞬間だけは見逃したくありません!!」


「もう二年も経つのね。女でも押し付けられて私は忘却の彼方よ」


「………ちゃんと数えているじゃないですか。素直じゃありませんね」


「………テテラ、ベリリの実がなぜか焦げ臭くなっているのだけど?」


「だ、大丈夫ですよー。でも、今は冬ですからね。春先で逢いたいですよね!なんかロマンティックですよね!!花びらが舞う季節に出会う二人………ホルティーナ様とガトラさんが抱き合う!!」


「テテラねーちゃん、匂いがやべーよ?」


「あぁあああっ!?」


 ………だから、言ったじゃない。慌てて冷たい水で濡らした布の上に移動しても遅いわよ。ああ………これはなかなか個性が強そうなベリリジャムになりそうだわ。声をかけてきたカトレーも覗きこんで眉を寄せている。テテラの声に驚いて近づいてきた子どもたちもそれぞれ変な顔をしながら………


 まだ入ったばかりの狐のククンはシェルカと一緒に鼻を押さえて縮こまっていた。そう言えば獣人には鼻が利いてしまうから焦げ臭さなんて鼻につくわよね………今さらながらテテラも辛そうに鼻を押さえているわ。


「貴方は料理人になりたかったのではなかったかしら?これは怒られるわよ」


「ふぁい。すみまへん」


 もう。お焦げは浄化魔法でなんとかなったかしら………?とりあえず小瓶に移し代えて―――あら、半分は駄目ね。


「ホルティーナ様!ホルティーナ様!!熊が出ました!!こっちに向かってきますっ!!」


「すごいのすごいの!!仁王立ちでこっちの向かってきます!グラックベアーも非ではないかもです!!」


「そう、なら家には結界があるからまず様子をみてからにしましょう。エーラ、方角は?」


「西です!」


「モルフィーリ、トッティとムーラに付き添いなさい」


 ―――全員いるわね。なら姿を確認しましょうか?ちょうど西向きに窓があるからそこから年長組と一緒に覗きこんで………思わずため息を吐いてしまったわ。雪掻きもしていなかったからかしら………


 掻き分けて進む毛むくじゃらはまさに熊ね。なにかわかったテテラは私の背中を押して外に出そうとする。慌てなくてもこっちへ向かっているのだから大丈夫よ。わからない年少組は逆に私を止めようとしがみつく。さて、どうしたものかしら。


「紹介してあげたらどうですか?」


「はいはい。とりあえず危険はないから大丈夫よ。熊パパが帰ってきただけなの」


「ぱぱ?」


「パパ………」


「ゼフォンドと言う熊男よ。嫌だったらみんな、こっちに来る前に雪玉を投げつけてあげましょう」


 待たせられたのがなんだか癪ですもの。簡単にこの家の敷居を踏ませてなるものですか。女を待たせるなんて………まあ、待っていた私も私なのかしら。でもはらはらと待っていたのよ。だから、これぐらいの洗礼を受けてくれてもいいじゃない。―――こんな事を考えられるようになったなんて、昔の私とは全くの別人だわ。


 大きく開け放った扉から颯爽と雪を掴んで、固めてあの人に投げつける。避けられたのに少し腹が立つのでさらに固めて投げつける。あ、また避けたわねっ。


「遅いわよっ!ゼフォンドの―――馬鹿っ!」


 あ。今度は当たったわね。なにその顔。黒いのか白いのかわからないわよ。おかげで笑ったら子どもたちも真似してゼフォンドが真っ白になっていく。それが面白くて子どもたちは大はしゃぎ。


 なんだか少しだけ可哀想に思ったけどこんな出迎えも悪くないでしょう。追い返されてると思っていないのか、どんどん突き進んでくるんですもの。さて、逃げようかしら。


 まあ結局は捕まってしまったのだけど………しかたないわね。この二年で考えないようにしていたのにたまにゼフォンドの影が出てくるおかげで忘れられなかったもの。完全に捕まったのだから………もう、逃げないわ。


「ゼフォンド・ディクス・サーバルナータはアヴリーベを迎えに参上した………まだ終わったとは言い切れないが我妻に、永遠の誓いをこの地に芽生えさせたい」


「この地に………もうっ―――私、アヴリーベ・クラウティーネはゼフォンドを迎え、夫と生涯をここに―――誓いをこの地に根付くことを許します。………………普通、いきなり求婚なんてしないわよ、ゼフォンド」


 そんな堅っ苦しいのはいらないわよ、まったく………


「おかえり………私の熊騎士様」


「ただいま………俺の茜色の姫」


 子どもたちの歓声を受けて誓いの口付けをここに。


 明日も平穏でありますように。


 不快な闇が遠ざかりますように。


 新たなる光の輝きが、私たちを導きますように………







つたない作品でありましたが、ここまでご拝読くださり、ありがとうございました。


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