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誤字・脱字等を修正いたしました。27.5.6

 ………おかしい。私、変だわ。


 なぜ熊男に唇を許してしまったのか、まったくわからない。てっきり私はあの殿下に色々と溜まっていた鬱憤を晴らしたおかげで気が緩んでしまったのだとばかり思っていたけど………なにかが違う。


 緩んでいたのは確かにそう。すっきりしていたわ。でも何かが違う。何が違うのかしら?それがわからないから困ったものなのよね。毛むくじゃらがないと痛くない………じゃなくて、なぜ私があんなにも反応が遅かったのか、よ。あの後は何もなく………送り届けられたのよね………なに、この微妙でやるせない感情。


「ホルティーナ様、準備できました」


「作り方はみんな覚えているわね?」


 みんないい返事で返してくれたわ。なら、私も作りましょうか。集中していれば熊男の事なんか忘れられるし、ちょうどいいわ。


 今日は外に出ないで一日中、篭を作ることに。蔓はたくさん集めたし、木の皮もそれなりに準備をしていたからそろそろ作ってもいいと思ったのよ。それに蔓はそろそろ固くなってしまいますからね。固いと編むのが痛いし大変だわ。


 篭のデザインは各自に任せて私もミミルとトッティとシェルカを見ながら作っていく。手提げサイズが主流で、大きいものは網目も細かく難しい。細かい作業は手提げでも変わらないけど、これがまた楽しかったりするのよね。話しかけてさえ、来なければ。


「ホルティーナ様………」


「どうしたのよ―――マーデク」


「わしは………間違っていたのじゃろうか―――殿下ならば、と信じて今日までこの老いぼれは鞭を打って参りました。殿下が王になればと、目標にしておりました。何がいけなかったのでしょう………」


「マーデクには私が散々と、注意してきたはずよ。貴方はせっかちなんだからもう少し落ち着きなさい、と。それが答えよ」


「そなたは―――教え子にも厳しいな」


 殿下も来るの?座り込んだ私の目の前に、二人が並んでもしょうがないでしょう。その後ろにアーバンと熊男まで………いつまで延長戦するのよ。少なからずマリーアンのおかげで答えは浮き彫りだと思ったのだけど?


 しかし、めげないのがマーデク。そう言えばこの子はせっかちで諦めが悪かったわね。そのおかげで城にいられたのかしら。諦めない………マーデクなりに考えがあるんじゃないの?


「殿下、騒ぐのでしたら私から離れてくださいね」


「そなたっ………はあ。もう落ち着いた。余の世界は狭い。だからここまでそなたに言い負かされたんだ」


「あら。ずいぶんと変わりましたね。まだ言っているのだとばかり思いましたわ」


「本当は不敬だ、と怒鳴りたいぞ。しかし、余はそなたに反論で勝てぬ。無駄な時間だ」


 ………いつの間にか幼子三人が回収されてるわ。あの子達は私に何をさせたいのかしらね。まあ、解決してほしいわよね。殿下には早く出ておってもらいたいもの。


「回りくどいわ」


「………………ホルティーナ様、お知恵を、お貸しください。私も、殿下も、アーバンも殿下が王になると信じております。どうか、お知恵をお貸しください」


「知恵を手にいれ、その後はどうするの?それが成功とした暁に、なにが得られるのかしら」


「民に平等な生活を。民に平穏な暮らしを」


 真っ直ぐ射ぬく二人の、四つの瞳。いいえ、さらに後ろの二人を会わせて八つの瞳。それは今の私には必要としない、決意の瞳かしら。熊男の名前が上がらなかったけど、貴方はそっちの仲間なのね。でもどうしようもないと思うのよ。私もそこまで知恵が回るわけではない。この五百年で得た知恵は子ども達が一人でも生きられるように必要な知恵。国の政なんて一つもわからないわよ。


「一番簡単な事は、玉座を諦めなさい」


「―――ならぬ」


「でしょうね。あれだけ言ったのに、まだしがみつくのですから。そんなになりたいなら、まずハーフエルフを認めてもらうしかないわ。これが大前提ね」


「どうすればいい?」


「どうにも出来ません。あえて言うなら昔のように教会で贄を捧げ、誓いを立てるしかないわ。ただ、殿下がやっても効果は保障できないのよ。いくら説得しても、ハーフエルフなんですもの。ハーフエルフが何を捧げると言うのかしらね」


 これは現国王が王妃を捧げて殿下を庇えば………一番の効果で成立する話ですものね。ハーフエルフでは何も出来ないのよ。だから、玉座は諦めなさい。


「………どうしても、余はなれないのかっ」


「少なくても私は無理だと思うわ」


「ホルティーナ様っ」


「あのね、マーデク。もう一度言うけど、何かを興す事は時間が永く必要なの。日で数えるのではなく、年をいくつも数える時間が。言葉で奮い立たせるのは簡単よ。言えばいい。伝えればいい。ただ、それを成し遂げるのは一人ではないの。この国に住む他種族、まったく違う考えを持つ人々よ。そしてあえて言うけど、決められたルールが絶対に守られる事はない。見えないところでは不正はいっぱいよ。城に仕えているなら見たこと、聞いたことがあるんじゃないかしら?お金の不正とか」


「―――余は、なぜ生まれた?………余は、なぜハーフエルフとなった」


「恨むなら王を恨みなさい。子どもは親を選べないのだから。まだ玉座がほしい?いらないのなら貴方は別の道を歩みなさい」


「余に………事、切れ、と―――?」


「止めてちょうだい。そんな事を考えるのなら立ち退きなさい。被害者面なんかしても助けてくれるのはなにも知らない善人か欲望まみれの偽善者よ」


 落ち着いたらマイナス思考に行くの?本当に止めてちょうだい。そんなことされたら夢見が最悪よ。しかも、泣きそうにこちらを見ないで。なぜそこまで追い詰められているのよ。………私が原因ね。悉く潰しているのですから。


 まあ、とにかく。アーバンもマーデクも物騒な気配をしまいなさい。短気な人たちね。諦めろとは言ったけど身を捨てろとは言ってないわよ。私はとことん悪者になれというのかしら。もう悪者かもしれませんけど………


「あのね、貴方が全てを背負わなくてもいいのよ。もう少し肩の力を抜いたらどうなの?」


「………どういう事だ?」


「どういう事って………はぁ―――殿下の頭の中はハーフエルフだ、王子だ、迫害だ、アヴリーベだ、王だ。それ以外にもなにかあるのでしょう?これらを自分がなんとかしなくては、自分ならやれる、自分にしか出来ない、等々を考えて一人で問題を抱え込んで解決しようとしているのよ。今の貴方が、すべて出来るなんて私には思えないわ。何度、同じことを言うのかしら………私」


「~~~っ、なんだか生きていけぬ気がしてきた………」


「で、殿下っ」


「はいはい。まだ若いのだから経験を積みなさい。少なくても、さっきあげた中でアヴリーベとまあ、王子―――と言ってもテジラト王子ですけど。この二つはそこの熊男がなんとかしよう模索しているわよ」


 と、言うことで後はそっちで相談してちょうだい。そして『役割分担』でもして少しは自分達でどうするか考えたら?熊男が三人に囲まれて逃げていったけど、アーバンが捕まえるんでしょうね。マーデクはさっそうと諦めたようだし。


 三人も傍にいてくれる仲間がいるのだから、少しはまともな答えも出てくるはず………よね?アーバンと熊男くらいしかまともに見えなくなってきたのだけど………さっさと転移で送り込ませようかしら………先が長そうね。





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