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誤字・脱字等を修正いたしました。27.5.6
すべての始まりはなんだったのかしらね。とりあえず、私の母だった女と、父だろう王子が出会ったのがいけなかったのよね。なんだったかしら………ああ、そうそう。
「今から六百年と少し前ね。西の方にエルフの里があったのよ。そこにこの国の王だった―――殿下の遠い先祖様が、まだ王位を引き継いでいない王子の頃ね。エルフの魔力に引かれて里を訪れたのがきっかけだったらしいわ」
エルフの里は森の奥だから、その時の娯楽もほとんどなかったし、王太子は国を任されるためにわざわざ自分から出向かなくてはならなくて苛立っていたそうなのよ。そこで見つけたのがエルフでは珍しい、夕日の髪を持つの女。見目も美しく、一目で王太子が気に入るほどの美貌の存在。
女は一夜限りを許し、十年後の迎えに来る約束をして王子を待っていたそうよ。王子も律儀に十年後に来て………それほど美しい華を携えたかったらしいわね。エルフは長寿だから、その美貌の衰えは遅いもの。そこに漬け込まれたとも知らずに女はずっと待っていたのよ。私を宿しながら。
「では、そなたは王族の血を持っているのか!?」
「祖父に聞かされた話はそうね。でも、私はどちらの種族にもなかった事にされていますから知りません。血なんて認めないわ。ここまでくれば聡明な殿下であれば分かると思いますけど、さっきハーフエルフの迫害を、種族差別をなくすって言いましたよね?ハーフエルフ迫害の発端を産み出した王族が、五、六百年の歴史の呪いを王族自ら消すことが出来ると思えない。王族からの発端は始まりを意味するけど、それは歴史に残るものであり、止まることは許されない」
「だが、変える事は出来る」
「残念だけど、無理ね。王族なのよ?ハーフエルフの迫害の第一人者であり、激昂した王族は徹底的にそれを覆すことのないよう教会の神にまで祈りを捧げ、神に契約を結んだとか馬鹿な事までしているの」
「―――あれか。王族を贄の代償に願い事を成就させ、理をねじ曲げる禁忌」
「そうよ。それによってハーフエルフの迫害は絶対的なもので世界を作るの」
「しかし、この幼児たちのようにハーフエルフを陥れようとせぬ者たちは存在する」
「それで?存在するだけでどうなの?広めてハーフエルフの迫害は止めましょう、って呼び掛けるつもり?貴方の発言力では国の一部も動かないわ」
あら。これは言い過ぎたかも知れないわね。案の定、怒りを露にした殿下が今にも殴り込みそうな勢いである。それを押さえこむのがアーバン。助かったけど、彼もすごい顔で私を睨んでいた。
熊男は私から離れない。なにかするわけでもなく、ひたすら髪を弄っていた。何がしたいのかさっぱりよ。子どもたちは子どもたちで、途中をすっ飛ばしたからいまいち理解できないようなので説明していく。
そうねー。物語のように言いましょうか。あるところに、エルフの女と人間の王子がいました。二人は出逢ってすぐに恋をし、愛し合ったのだけど王子は国に帰らなければなりません。そこで十年後に会いましょう?と約束をして十年後に再会するのだけど、女に自分達の間に子どもが出来ていて王子が怒ってしまいます。王子が必要としていたのは綺麗な飾りの女だけだったのです。二人は再会を果たしたけど、意見の食い違いで大喧嘩。女は王子を求めても、王子はそれを許しませんでした。なおもくいつく女に嫌気をさした王子は矛先を子どもに変えました。子どもの存在も、腹がたっていたのです。そうすると、女も王子と同じように子どもさえいなければ、と自分が悪くないと今度は二人で子どもを悪く言います。すべてを擦り付けるように。それでも怒りが収まらない王子はさっさと女も捨ててしまいました。なぜなら、いらないから。少しでも繋がりを消したいから。そうする事で子どもが生まれた罪を女に被せられるのです。何がなんでも、その子どもは自分の子どもである事を認めないために。すべてを否定して国中に子どもの特徴であるハーフエルフを迫害させました。そうすれば子どもは王子の子だと言われても嘘つきと呼ばれるからです。それがハーフエルフの迫害の始まり。
国の代表が告げた『言葉』はすべて正しいと信じこんできた国ゆえに、次期国王である王子の発言には力があってそれは国のすべてに広まり、それが当たり前となる。そして、これを覆さすことのないように神へ王族の代表の一人を捧げる行動によりその『言葉』に重みが増し、魔法とした禁忌が出来上がった。
「この説明ならわかったんじゃないかしら。簡単に言うと色々抜けて分からなくなるのだけど………ハーフエルフの迫害のきっかけは王族のせいね」
「違う!王族はそのような事をしておらぬ!!」
「そうでしょうね。そちらがすべて消したんですもの。でもね、殿下。私が言いたいのはそこではないわ」
「っ―――なんだ」
「ここに来る前に話していたでしょう?アヴリーベを。あれのすべては私なのよ。つまり、広げようにもハーフエルフから教わらなくてはならないし、優遇したところでいい事なんて一つもないからやめてほしいわ」
「アヴリーベは他にいるぞ?」
「殿下の対象者は大人でしょう?子どもから教わるの?それとも一定の年齢を越えた大人が大人に教えるとでも?今さら勉強をしてくれるのかしらね?相手が子どもであっても、アヴリーベの存在が大きくなればその他である人の存在はどうなるの?ちゃんと未来を考えたのかしら」
「だから、ハーフエルフである私が頂点に立てば覆す事もするし出来る!アヴリーベを優先させれば集う者もいる!」
「そしてアヴリーベは悪用されるのね。私な名を汚さないで」
「どうしてそうなる!その名は我々が欲しても望めぬ名だ!ハーフエルフだからと言って貰えぬわけではないっ!優遇する事によって自分の地位が築き上げれるだろう!!」
やっぱり、話にならないわね。元々、根付いていたものを根本的に変えるなら時間が必要なのは当たり前。王が変わる事だってとても時間がかかる。その間に次期国王がいなくなれば話は終わるし、生き残って国から民にハーフエルフの迫害を止めるように呼び掛けても民が戸惑うだけ。またそれを築かせるにも時間がかかる。それからアヴリーベの優遇をすればアヴリーベは他者から疎まれるでしょうね。それも浸透させるのに時間がかかるし、出来上がれば今度はそれを利用しようとするものがでてくる。どれも時間だけがかかりすぎる穴だらけの思想。理想を掲げているだけで現実を一つも見ていない夢物語。
私が姿を見せたのはハーフエルフである事。ハーフエルフの迫害は見つけたら殺されるまで伝わっているのに、どうしようと言うの。だから殿下は逃げているのでしょう?これが事前に根回しされていたらまだ民の説得も出来る。けど殿下はそれを一つも言わない。これだけ言い合っているのだから何か手はずを整えていると思っていたのに………やっぱり姿を見せなければよかったわ。意味なかったじゃない。
「ホルティーナ様、アヴリーベって、なに?」
「アヴリーベって、ホルティーナ様の名前なの?」
「ホルティーナ様と関係があるのか?」
「アヴリーベはこの家で私が育て、十五歳を迎えた子どもたちにあげた家名よ。そしてアヴリーベは私の本当の名前。ホルティーナは偽名なの」
「あー!じゃあ、ホルティーナ様はまた嘘ついたのね!いけないんですよ!」
「そうよ、モルフィーリ。嘘はいけないことなの。嫌いになったかしら?」
「そんな事はないの!ホルティーナ様だから特別に許してあげる!でも、混乱しちゃうからホルティーナ様だよ?」
「うん。ホルティーナ様っていつも言ってたからホルティーナ様だね!」
「ホルティーナ様!アヴリーベってそんなに凄いの?!」
「凄くないわよ。ただ、ここに住んでいた子どもたちはみんながアヴリーベだから困惑するだけ」
「え、じゃあじゃあ!外に出てアヴリーベを見つけたらその人たちはお兄ちゃんやお姉ちゃんなの?!」
「そうなるわね。家族だと思って名前をあげたから」
あと五年もすればもらえるわよ。カトレーとイーグとモルフィーリはとても心配なのだけどね。ただ、あげられるかは………わからないわ。殿下がまだ私に色々と話たいみたいですから。そして熊男が私を捉えるから。
早く殿下を追い出して、日常を取り戻したいわね。




