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誤字・脱字等を修正いたしました。27.5.6
私が突っぱねたら殿下が交渉し始めた。内容は殿下たちの衣食住を提供。加えてアヴリーベを調べさせて貰うこと。私へのメリットはここの他言無用と、殿下が国へ戻るさいにすべてのアヴリーベを優遇すること。殿下がアヴリーベの後ろ楯になる代わりに施設や資金をすべて殿下が受け持つこと。
はっきり言って、私へのメリットがどこにもない。この人、本当に総指揮官だったのかしら?交渉か下手すぎて思わずため息が出たわ。こちらを調べたと言うわりにはあまりも酷い。知らないにも等しすぎよ。
調べられるのに他言無用になるとは到底、思えない。殿下が戻るさいにって何時なのかしらね?アヴリーベを優遇したあとは?その子達はいい迷惑じゃない。目の敵、名の横領。絶対に波乱を呼ぶわよ。資金の後ろ楯になんかしたら生活なんて独りで出来るようにならないじゃない。
「全くもってメリットになりませんね。お話になりません」
「なっ!?」
殿下、貴方は今のを本気で言っていたの?嫌だわ………知らないとはいえこんな人が今後の国を背負うだなんて………
「殿下から見て、アヴリーベはどのような存在ですか?」
「素晴らしい、に限る。アヴリーベたちは賢いので一人で数人の役割が担える。我が国の繁栄にぜひとも力を貸してほしいと思っておるのだ」
「………アヴリーベが国の道具にしか聞こえないわね」
「我が国とて進化せねばならぬ。それにはアヴリーベの知恵と戦力は頼りになる。どこが気に入らない。余が楯となればアヴリーベは増やされ、我が国は強くなる。もちろん、アヴリーベとなれば優遇して国の鑑になってもらわねばな」
「マーデク。私がアヴリーベとしてその名をあげるまでの間、最初に私は何を告げていたのかしら」
「―――っ、一人でも生きていける知恵と、術を享受して下さると」
「殿下に何を伝えたの。それともこれは殿下が導きだした答えとでも?」
「余、以外と話を進めるな」
そうね。話がまったく進まないわ。もういいわよ………やっぱり殿下が関わってる可能性を導きだした時点で熊男を放り出せばよかった。子どもたちのためになると思った私の些細な一瞬を返してほしい。いてもよかったかもしれないと想った瞬間も返してほしいわ。
もう言葉を交わすのも嫌よ。どうも殿下はほとほりが冷めるまでここにいるような事を言っているわ。その頃には殿下の名を消されて次の王太子は選ばれ、殿下の存在は消える。ほら、意味がない。あとからつけ出される報酬にはメリットなんて一つもない。
そもそも………アヴリーベの名が違う意味を持っていると、王族に知られていなかったのが驚きだわ。まあ、消したんでしょうね。私と母の存在を歴史に残さないように。そうしないとハーフエルフの迫害は引き起こらないものね。
殿下がまだなにかを言っていたけど、もう私の耳には届いていないわ。だから私はローブの袖に隠し持っていた魔法陣を描いた紙を取り出して、そこに一瞬で魔力を満たす。そして吹き荒れる風。彼らを吹き飛ばすようにぶつけて私は転移を。
見れば、熊男がなんとか踏ん張っているようだったけど、後の三人は吹き飛ばされていたわ。殿下を助けに行くなら私はがら空きね。
「ホルティーナ!!」
熊男って、叫ぶのね。その珍しい声を聞きながら私の視界は一瞬にして子どもたちの前に現れる。驚いた様子の子どもたちは私を見て目を丸くした。結界が壊れたら厄介ね。やっぱり移動かしら。とりあえず時間稼ぎに強い結界を。今度は私の結界の限界まで強くしたからそう簡単には壊れないわよ。
「ごめんなさい。掃除は中断して、みんな集まって。緊急よ」
それだけでみなが飛び付くように傍にやって来た。最後は遠くにいたイーグとモルフィーリ。全員が揃ったことを確認して―――結界もまだ触れられていないことを確認して子どもたちに選択肢を投げた。
「以前から言っていた第一王子がここに住み着くことになりました。私はここから離れるつもりです。みんなはどうしたいか申し訳ないけど、選んで。一つ、私と別れてここに残り、王子たちと暮らす。どんな暮らしになるか想像はつかないわ。制約はすべて破棄よ。最後まで見れない私を恨んでも敵わないわ。私はそれだけの事をしている。もう一つは私に着いていく事。ここにあるものをすべて捨てるつもりだからこれから冬に入るし、きついわ。衣食住をちゃんとしてあげられないと思う。加えて私は人前に出ることは一切しない。だから、助言はするけど買い出しはすべてついてきた子がやることになるわ」
さあ、どっち。時間がないことも告げて選らんでもわらわなきゃ。っ―――もう追い付いたの!?早すぎじゃないかしらっ。
「決めなくてはならないのですか?」
「私は王子と仲良くなれそうにないのよ。馬が合わないわ」
「でしたら、逃げるしかありませんね」
「バナルは即決ね?いいのかしら」
「結界でも張ったんですか?外で一生懸命、壊そうと奮闘する気配に私も馬が合いそうにありません。話の場も設けられないでしょう」
「………本当だわ。じゃあ私もホルティーナ様と同行いたします」
「私もです」
「他の子達は?無理にとは言わないのよ」
「熊パパは?」
「彼には記憶が戻り、王子側に付いたわ」
「でも………」
っ―――もう壊れそうってどれだけ力任せに壊しているのよ!!攻撃魔法を外で放っているだろうおかげで家がミシミシと音をたてる。もう時間なんて考えられないわね。
私に着いていく子だけ、魔法陣に入る有無を伝えて転移の呪文を唱えた。間に合うかしらっ。せめてこの森を抜けて町一つ飛ばしたところに転移したのだけど、それだと呪文が少しだけ長くなる。かと言ってさっきの結界で魔力が減っているのは確かで、そこまで飛ぶにも次の転移で意識が保てるか分からない。短距離で魔力を調整していかなきゃ駄目
「すまない―――ホルティーナ………」
謝るぐらいなら………初めからやらないで。何度思ったことかしら。結界が壊れる音が派手にしたと思えば熊男の声がすぐ傍で聞こえて息が出来なくなった瞬間、暗転に落ちた。




