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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.18
困ったわね………胸元にある小さな体を抱えつつ、頭のとなりに毛玉が一つ。夜はいつも通りに更ける。別に―――ミミルが嫌なわけではないの。ただ、今回だけはあまりいい事態じゃない。これでもようやく落ち着いて寝たのだ。私が悪いのだけど………
今日、私が張ってある結界が揺れた。揺れる、と言うことは誰かが何かをした、と言うことで………意識を少しだけ外に向ければ小さな来客だった。ただ想像していた子どもの、人間の足よりそれは速かったこと。すぐに当てをつけて準備をしたわ。
とりあえず真っ直ぐ向かっているようだから、音を拾えばやっぱりだった。足音が早く多い。二足ではなく四足の音。まだ人体化できていない子どもの獣人のようね。『いやだ』『助けて』それが一番多くを口にしながら走る、子ども。女の子ね。お風呂の準備をしてもらって私は迎えにいく。
ただ、ここでちょっとミミルがだだっ子になって出るに出られなかった。まさかあんなにごねるとは思わなかったわ。ローブを強く握りしめて絶対に離さないと言わんばかりに泣き叫んで首をふる。これにはみんな困ってしまって。最後は熊男が強引に抱えてしまったのでアーテに後をお願いしておいた。
魔力探知を使いながら獣人の子どもとはち合うように森を歩いて。そしてぶつかった拍子に腕を噛まれたのよね。遠慮なく。どうやら肉食系の獣人だったみたいでさすがに痛かったけど、なんとか宥めて私の約束事に頷けるか問えば付いてくると言う。そこで安心してた私は腕の事なんてすっかり忘れてその疲れきった獣人―――シェルカを抱いたまま帰ってみればまた大変な事の始まりになる。
抱いたまま帰れば………まず、ミミルが泣き止んでいなかった。これはさすがにまずいと思ってシェルカに理由を告げる。でもシェルカはほとんど疲れて寝ていたのであまり意味はない。ミミルの大音量でよく寝れるわね、と思わず驚嘆したわ。よほど、疲れたんでしょうね………
帰ったら熊男がミミルを必死にあやす姿に思わず笑いそうになる。高い高いも無理ならテテラお手製の人形を右手に話しかけ、それでも駄目ならと背中をさすってやったり。おろおろしながら部屋をうろうろ。熊男のどうしようもない姿がもう、ね。笑わずにいられますかっ。
男の子たちはもうお手上げだったらしくて部屋の隅で勉強。ならなぜ女の子のアーテやテテラは助けないのか聞けば「私たちでも手がつけられなくて」と「見ていて面白いじゃないですか」とまったく正反対の理由が出てきて、面白がったテテラの額を指で弾いておいた。もう!熊男で遊ぶならミミルを泣き止ませなさい。まったく………
しかたないからシェルカをテテラに預けてお風呂に入らせる。溺れさせないようにじゅうぶん気を付けるようにと、寝ているからそっと、静かにやるよう言い聞かせて背中を見送ったわ。それで、今度はミミル。近づけば近づくほど耳が少しばかり痛いけど、子どもなのだからしかたがない。ここまで来れば泣き疲れさせた方がいいかもしれないわね。近所の心配なんて、しなくていいんですから。でも、失敗だったのよね………
「ホルティーナ、それはなんだ」
「は?」
と返したらミミルを抱えながら腕を取られた。ぐいっと上に上げられたと思うと私のローブの袖が捲れる。そこで現れたのは噛みつかれた痕で―――熊男に怒られる。すぐに魔法で治すけど、バレれば手遅れ。みんな口々になにがどうしてどのようにどう、と質問攻め。ミミルの声ですべてがかき消されたおかげで私は逃れて血の付いたローブを脱いで洗ってと忙しかったわ………
それからミミルが泣きつかれて寝かせる間に昼食。今度ばかりはミミルにあまりかまっていなかったから起きたら私が、―――と、いきたいのだけど、連れてきたシェルカが人見知りするかがわからない。私と出会ってすぐに噛みついたのだからもしがあったら困るのよ。
じゃあどうするこうする。シェルカがいつ起きるか分からないからどっちも私が見ることになる。熊男がなぜか肩を落としながらバナルと一緒に剣の稽古。未練がましくこっちを見ないでほしいものね。
それからミミルが目を腫らしながら起き出して私に飛び付いた。「やだ」ばかり言うからどうしたかと聞いてみれば一人だと言う。やっぱり不安だったみたいね………それから夕食まで離れず遊んでご飯まで待てばシェルカがお腹を空かせて起き出してくるでしょう。これがまた大変。
警戒心をむき出しに威嚇しはじめて誰かが怪我をするなんて考えたくないので場所を変えて二人で食べたわ。まだ尖った耳としっぽをピンと立てて警戒するけど、色々と話していると少し落ち着いたようで食べてくれた。床が汚れたが、これは今後に直せばいい。
で、戻ってみるとミミルがまた泣き出していた、という悪循環。最終的にたどり着いた熊男がまたおろおろしてて結局、私と寝ることでこちらも落ち着きを取り戻し、早いけど部屋で休むことにしたわ。みんな疲れきってるんですもの。撤退よ、撤退。でも部屋に戻って対面させればまたシェルカが唸るしミミルは怖がるし………どこも修羅場ね。
お互いを近づけさせればシェルカが襲うからベッドと入り口でお話。まだミミルを警戒してるのか威嚇状態。これは駄目だと思ってミミルとシェルカを仲良くさせたらなぜかどっちもすぐに意気投合して今、ようやく眠りについてくれた。年が近いのか、思うところか一緒だったのかしら………今日はちょっとハードよ、貴方たち。
二人とも離れないように私にへばりついて………寝返りが打てない。ミミル、私は枕じゃないのよ。シェルカ、私の顔を固定するようにくっつかなくていいの。でも二人して怖い夢を見ているのか、魘され出すから撫でる。明日はどうなるのかしらね。
離れないでしょうねー、とかとぼけて考えてしまったけど………そうよね。シェルカはまだわからないけどミミルは三歳よね………まだ覚束ないはずなのに歩いてきて三歳児。混血種よね―――ああ、熊男も調べるの忘れてたわ。熊男も先祖帰りだと思うのだけど………
明日………いいえ、明後日以降ね。なんとかそれまでにミミルとシェルカを落ち着かせて………ああ、第一王子の事も忘れてたわ。生きているかしら。なんだかここ最近はごちゃごちゃしてるわね。長年、こんな事も起こらなかったのに―――…
またミミルとシェルカが魘され始めたから頭と背中を撫でてやる。それでも収まらないときは唯一の子守唄を。自作自演の鼻で笑ってしまう歌だけど。聞かせてあげれば静かな寝息。音痴じゃなくてよかったわ。さあ………また耳をすませて私も眠りましょうか。明日も 平穏であり、深いな闇が遠ざかりますよう、祈って。




