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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.18

 熊男の顔から逃げても手は逃げられず、私はあえなく息が出来なくなる。せっかく呼吸が整ったのにっ。なんて奴なのよ!!しかもなんだか以前のと違う!!


 以前はこんな絡めとるような事はしなかったっ。こんな甘くも噛まなかったし、吸うこともなかったわよ!代わりに私が噛んでやりましたけどね!!残念な事にすぐに逃げられたわっ!!


 侵入者を撃退するために使った噛みつきのおかげで熊男が短い悲鳴とともに離れていく。これ幸いにと私は手を振りほどいて―――振りほどい、て!って取れないじゃない!!


「ホルティーナ、普通は噛まない」


「普通じゃないでしょう!」


「………なら魔力譲渡ではなく普通なら噛まないんだな?」


「ええ、噛まないのではなく噛み千切るのよ」


「ホルティーナは噛むのが好きなのか?」


「なんだか誤解を生みそうな予感しかしないわ。止めて。そして私の手を離しなさい」


 と、私は言っているのになぜ、私は抱き上げられ、ベッドへ寝かされたのか。抗議しようにもすぐ離れていったので文句が引っ込んでしまう。………心配してくれた?そんな分けないわよね。見張りをしていて疲れた様子を見せればこれが当然なのかもしれない。


 少しだけ寝ようかしら、など考えてしまって慌ててそれを打ち消す。せっかく書き留めた情報を今見ないでどうするのよ!ちょっと、熊男。その紙の束の一部を私の渡しなさい。


「俺も見ていいか?」


「いいわよ。何かの単語が記憶に引っ掛かるかもしれないもの。それに、貴方もやらせる気だったわ。これを一人でまとめるなんて時間がかかるだけよ」


「でも少し休め。まだ疲れているはずだ」


「貴方が出ていったら、安心して休めるのだけど?」


「安心しろ。なにもしない」


「毛で顔の表情を隠している男ほど信用できないものよ」


 そうやって毛を触っても、わからないと思うのだけど?顎のラインをなぞるように。頬の輪郭をなぞるように。確かめる意味がわからない。しまいには毛は剃った方がいいかですって?どっちでもいいじゃない。あまりの変わりように驚いたけど、どっちも熊男に変わらないわよ。


 横になりながら作業なんてはしたないから居住まいを正して熊男から紙の束をもらう。どうやら後半の方をもらったようね。―――で?なぜ私の隣を座るの?あそこに椅子があるでしょう。しかも近い。せめて離れてくれないかしら?


「ホルティーナは落ち着く。本当なら抱え込みたい」


「………………………………」


「なんだ、この間は」


「いいえ。変態が隣にいれば私が休まることはないわね、と思っただけよ」


「………変態ではない」


「はいはい。わかったから動かないで。抱きこまれるなんてごめんだわ。隣にいることを我慢するわよ」


 これ以上、時間を取られるのも嫌なのよ。抱き込もうとして動いていた熊男の手を払い除けて紙に視線を向ける。これは………城内かしら。そう言えば王妃が憔悴してたわね。現国王はなにしてるんたか。また過ちを侵してるんじゃないの?代々に渡って間違えるなんて、馬鹿な一族。


 書いてあることはほとんど兵士の愚痴ねー。あらあら。どこぞの貴族が資金を渋ったですって。兵士にまで知れ渡るってよほどね。隊長―――今の隊長は厳しくてついていけない兵士か多い、か。………ふぅん。最近になって変わったなんて、早いわね。総指揮官の話題はないのかしら。


「ホルティーナ」


「なに」


「ここ」


 熊男が見ているのは………半ばね。あら。ここからすでに城内なの?城内には早すぎたかしら。それで、熊男が指差している一文は―――…






『カルヴェルン・グディルハイゲン・フォーラビアはまだ見つからないのか?』


『ただいま、探させております』


『まったく………取り逃がしおって。さっさと奴の首を取ってこい!』


『御意』






 あら。迫害どころじゃなくなってるじゃない。暗殺まで出回ってるなんて、王子は何をやってるんだか。ちょうど良いところ聞けたものね。―――これで確定じゃない。第一王子が迫害?を、受けていて逃げ出した。それに熊男が護衛かなにかで一緒に出ていったのね。でもなぜ『アヴリーベ』が出てきたのかしら………まったく関係無いわよ。


 まあ、いいわ。これで熊男はやっぱり厄介者と言うことは理解できたし、熊男がなんとかこの第一王子に逢えば思い出すはず。でも狙われているのよねー。先にこっちでなんとか王子と引き合わせてどこかに隠す、と言うのもあるけど………私がそこまでするほどのものかしら。王族とは関わりたくないのよ。


 思わずため息が出たのはしかたないわよね。実際に疲れているし。どうしようかしら………居場所だけでも………でもマーデクも動いてるはずだし………今度は風の精霊に聞いてみようかしら。


 でも彼女たちは同じことを聞かれるの、嫌いなのよね………探すか、探さないか。でも熊男をこのままここに置いておくのも嫌よ。でもあと一年でアーテとバナルは出ていく。それまでには熊男を追い出さないとアヴリーベがバレる。


 何から手を付けていけばいいのか、分からなくなってきたわ………とりあえず、熊男を追い出すことから始めればいいわよね?貴方、何をしてるの?私は紙を覗いてるだけであって、貴方に肩を抱かれる筋合いはないのよ?最近、なんだか過度に絡むわね。離しなさい、よ!





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