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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.18
さて。今日は王都の方を調べるわよ。そう意気込んで私は備えてある簡素な机と椅子に近寄り、座る。これから耳だけを、遠い王都まですませて情報を得る。そのため、聞き漏らししないようにこうして紙に書くことにしている。頭で覚えるには負担がかかるもの。こうやって聞いたものをすぐに書き移せば頭に残らず紙に残る。まあ、もちろん体力も魔力も減るけど。
その前にこの結界の内側を調べましょうか。一応、と言うのが正しいのだけど、熊男が見つけた所は家を中心とした結界の間。また微妙な位置にいる。何人いるかは知りませんけど、侵入してきた全員が『生きたい』と願ったから入れたんでしょうね。それか熊男だけが入れたか………これが一番そうだと思えるのだけど。
もしも、で考えるとこの結界内で別れたことになるのよね。ただ気になるのは熊男の記憶では殿下を守るために魔術師に襲っている記憶がある。けど、彼は無傷であの花畑で倒れていた。これはどういう事か―――
服も切れてるところなんてなかったのよね。血もなかった。じゃあ熊男は何をしていたのかが問われるんだけど………まあ、考えてるだけでは物事を広く見れないのだからまずは結界内。少しは手がかりがあるといいのだけど。
「なぜ貴方がここにいるのかしらね?」
「テテラに追い出された。それとホルティーナの見張りだ」
「追い出された理由はわかるけど、見張りってなにかしら」
「魔力の使いすぎで倒れないか、見張りだ」
テテラ………それでなぜ熊男をここに進めたの?見張りなんて必要ないわよ。ベッドを陣取るように腕を組んでこっちを見ないでちょうだい。とてもやりずらいわ。
今、下では女の子たちが布を広げて服を作ってる最中。たまにしかやらせなかったせいか、今年は時間がかかるようでまだ全員分は出来上がっていない。代わりに男の子たちは森で木の実を探しに行ってもらっている。秋なので今ではオレンジ色の身がなるカナルの実が美味しくてそれを取りに行くって張り切っていたわ。
それでなぜ熊男がついていかなかったか分かるわけもない。ただ男の子たちは遠慮して、女の子たちも遠慮したからここに居座る事になったのが見てとれるわね。ある意味、可哀想な男だと思うけど同情してやるつもりはもっとうないの。せいぜい私の邪魔をしないでくれればいいわ。
「話しかけないでよ」
「魔力の譲渡は任せろ」
「一っ番!任せられないわ。いいから大人しくしていて」
まったく………よし、始めるわよ………とりあえずあの花畑を目指して中心をそこへ移動させてから聞いてみましょうか………熊男は気にしない。気にしない―――……
『カナルの実あるかなー?』
『いっぱい取るぞ!』
『はしゃいで帰りにおんぶはなしだぞー』
『はーい !!』
あらあら。今からそんなにはしゃいで、帰ってへとへとになってるんじゃないかしら。子どもたちの会話を聞きながらさらに意識を集中させる。花畑の音はどうやら風が吹いているようで人の声はないわね。ここから逃げるとしたら………
でも花畑に踏み込んだのは熊男だけだったのよね。と、すると………森の外側に意識を向けるしかないわよね?………でも音はない。鳥が鳴くくらいでなにもないわ。とりあえず東回りに集めて―――なにも、なし。そのまま一周してもなし。ならば結界の外に出た、と。
それだともう範囲は分からないから今度は王都へ耳を傾ける。あそこは人が多いから本当に大変だわ。昼間の王城って大丈夫かしら。訓練兵あたりが聞こえると嬉しいのだけど。まず街―――そうね、まず殿下の評判から行きましょうか。花屋か雑貨………それと公園の武器屋も行きましょうか。
『ねぇ聞いた?この間のアディったら腰抜けでさあ!恋人に花束を送るのもまだなんだって!』
『うっそー!?また送ってないの?!ありえなーい。アディってそんなに腰抜けだったんだあ』
『最近じゃあ恋人のエカテラも―――』
『すみませーん。これって売りもんですかー?』
『あ?あー悪いね。それはもう売ってないね。どこぞの王子さまが逃げちまったもんでこっちは売り上げがなくなっちまったよ』
『総指揮官で見目麗しの第一王子でしたもんねー。素敵な絵だったこれ欲しかったんだけど………駄目?』
『金貨100枚なら嬢ちゃんにやってもいいぞ』
『おじさん、売る気ないでしょ―――』
『ねぇ、聞きました?また混血種がこの王都で暴れたらしいの』
『え、なにそれ』
『お前知らないのか?あれ騎士団が動くほどだったじゃねーか。』
『ほら、例の第一王子の―――』
『見つかったか?』
『いや。でもアヴリーベ魔術師を使えば早いもんだ』
『はん。せいぜい手柄でも立ててくれよー。そうすりゃあ魔術師も―――』
『お願いしますっお願いしますっ!どうかっ、どうかこの国をお救いくださいっ』
『私の、子………陛下の、嘘つき………かえっ、して、―――』
『王妃様!お気をたしかにっ王妃様!!』
『誰か、助けて―――』
「ホルティーナ」
「はっ―――はあ………はあ……はあ………」
集中、しすぎたのね。お陰で紙が散乱してる。残りあと1枚だったなんて、どれだけの情報を私は聞いたのかしら。熊男の止められるのは癪だけど、助かったわ―――たぶん、あのままじゃ私は魔力の使いすぎだったでしょうね。それと………どこかに飲まれそうだったわ。
熊男が止めなければきっと引きずりこまれていたのかも。駄目ね………呼吸が乱れるほど、私はあちらに引きずられそうになったんだわ。熊男のせいで集中しすぎたかも―――だからって貴方の譲渡はいらないわよ、熊男。顔を近づけないでっ!




