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誤字・脱字を修正いたしました。27.4.18

「はい。みんな集まって」


 お夕飯も食べて、片付けも終わったところで子どもたちを集める。今から大事な事を話すから、よく聞いてちょうだい。椅子に全員が座ったことを確認して………とりあえず熊男の隣に立った。


「残ることになりました。ルールはバナルが教えてあげて」


「ホルティーナ様?下に下りてきてからなんか怒ってませんか?」


「―――そんな事、ないでしょう?」


 まだ怒りは収まっていないけど、それほど表に出していないと思っていたのに。あら。バナルにロロ………それにアーテまで顔をひきつらせてどうしたのかしら?まあ、何かあったらこの熊男のせいだと思っておきなさい。私が怒る原因の大半は熊男ですから。


「一応、期間としては記憶が戻るまで。記憶が戻ったら出ていくかもしれないから引き留めないように」


「えー。熊パパはここに住むんだろ?なんで帰っちゃうんだ?」


「熊パパさんどっかにいっちゃうの!?やだー!!」


「熊パパは僕たちと一緒ー!」


 言うと思っていたわよ。本当になぜこんなに熊男になついたのかしら。熊っぽいだけでしょ?やっぱり………『パパ』か恋しいのかしら。熊男は―――叩かないし怒らない、から?ねえカトレー。イーグ。モルフィーリ………本当にどうしてそこまでこの男を引き留めるの?


「聞きなさい。熊………この人は一部分だけ記憶を取り戻したの。とても大切な人をお守りする役目で、大切な記憶よ。イーグたちはその大切にしている彼の記憶と役目を引き留めてまでここにいさせたいの?」


「大切って、どれくらい………?」


 カトレーが熊男の袖を引っ張って聞いてる。私はそれに少しだけ熊男を見た。私だってじゅうぶんに聞いていない。殿下をお守りするために、と言った使命感を漂わせているけど、それがどれほど大切なのかは私には分からないもの。


 彼が大切だと言うものが私の大切に含まれない。男と女では感じ方も考え方も違う。大切の価値観なんて人それぞれ。カトレーはまだ子どもだからきっとその基準の物差しが自分の大好きな物とになるわ。熊男はどう答えるかによって………カトレーが泣くわね。泣かせたら承知しないわよっ。


「記憶はまだ欠落しているが、死なせたくないほど大切だ」


「じゃあ、ホルティーナ様とどっちが大切なの」


「カトレー」


 それはさすがに止めて。ここでどちらが大切かなんて答えたら火の車よ。私以上に大切と言えばカトレーは―――ど、どうなのかしら。熊男を引き留めるために言ってるのだし、愕然とするのかしら?でも子どもだから『なんで?』ってなるのかしら。知らない人にそこまで関心なんて持てないものね。それとも聞き返してうやむやにすらのかしら。


「大切だから、選べない。大切だから、選ぶ物でもない」


「なんで?僕はホルティーナ様が大切だよ?」


「イーグは?」


「大切!」


「大切な二人を、カトレーは量りにかけるのか?」


「はかり………?」


「天秤はわかるか?」


「知らない」


「………今から意地悪を言うぞ?」


「?うん」


「カトレーの大切なイーグとホルティーナが病に倒れたとしよう。なにをしても目覚めない病だ。治す方法を探してようやく見つけた薬が世界にたった一つだけ。つまり、一人だけしか目覚めさせられない―――カトレーは目覚めさせるならどちらを選ぶんだ?」


 ………熊男が長く喋るなんて、ね。しかもその内容が酷いわ―――それは誰も決められない問題よ。そんな問題をカトレーにやらないでちょうだいっ。本当は叫んで止めようとした。邪魔して言わせないようにした。けど、熊男が私の手を握ってそれを止めた。


 なぜこの熊男の隣の立ったのかが分からない。なぜ私の方が止まったのかが分からない。手を握られて制止されたことに驚きが消えない。


 ―――カトレーはまだ十歳。いつか、その時に出くわすかもしれない。でも、そのいつかはカトレー自身が出会い、考え、決めるもの。今、例え話でも聞かせるものでもないでしょうにっ―――…私の声が、うまく出てこない。


「どっちも助ける!」


「どちらかしか、選べないんだ」


「なんで!?なんでどっちかしか選べないんだよっ!」


「………カトレー、俺もそれだけ二人が大事なんだ。だから選べないし、大事な人を選ぶことで優越………順番などはつけたくないんだ。本当に、意地悪をしたな」


 そうやってカトレーの頭を撫でて………私の役目が全部取られていく。なんだか、私が必要なのか、疑っちゃうじゃない。そして、このしんみりしてしまった空気を私が直すの?この熊男は本当にどうしてくれようかしら。


「今日はここまでね。まあ、彼が入ってきた時と今までで変わらないわ。さっ、お風呂にしましょう」


「あ!ホルティーナ様………もー。強引すぎですよー」


「暗いのは好きじゃないの。みんなも好きじゃないでしょ?」


「ホ、ホルティーナ様は!今度こそ一緒に入ってください!」


「あら珍しい。でもエーラ、私の代わりにお仕事をやってくれるの?」


「何をするんですか?」


「これから暗~い森の中で淡い小さな小さな光りにお話しするのよ?その小さな光りは毎夜毎夜、一人で泣いていて」


「だめ!だめだめだめ!怖い話はだめー!!アーテおねえちゃあーん!!」


「ふふふ………さあ。もう全部を明日に回してしまいましょう」





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