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【Ⅱ】

何だか泣きそうだ。

というか、憂麻なんて既に号泣状態で、麻矢によしよしされてたもんな……。


全く気分が晴れず――当たり前なのだが――旅館の中を徘徊、否、散歩しようと至軟を誘った。


「あぁ、もう……どうすりゃいぃんだぁ……」


がばぁっと後ろから抱きついて、腰に腕をまわして背中にすりすり。相変わらずグリーンティーの香りがするものかと思ったけれど、朝風呂に行っていたらしく、石けんのほんわかした香りに包まれている。


不安なのはオレと憂麻だけじゃない。みんな心配なんだ。

至軟だって、大事な弟がさらわれたんだから気が気じゃないはず。

麻矢だって普段はほとんど類にしか表情変えないのに、さっきは眉間にしわ寄せて難しい顔してた。類も思い詰めたみたいな感じだったし。


「そんな顔すんなって」

「んー……そうだな。至軟だって……不安なのにな……弟が居なくなる、とか。オレばっかべそべそしてらんね」

「そーいう訳じゃ無くて。オレが領の沈んだ表情見たくねーの。確かに不安だけど、な」


背中に貼り付いているオレをぺりっとやって、隣へ来させて頭を抱き寄せられ、壁に寄りかかる。


「オレは領が居てくれれば、嬉しいから」

なんて言われてしまえばオレも嬉しくなる。

さんきゅ、と小さく呟いて素直に至軟へと体を預けた。


自然に視線が絡み合って、指先も絡め合う。結構恥ずかしい事もしたけど、それとはまた少し違ったドキドキがあっていまだに慣れない。いつしかそうもらした事があったけれど、慣れなくて良いと言われた。

至軟が言うなら慣れなくて良いや。慣れられるもんじゃねぇし。


「一段落したら、楽しみにしとけよ」

「……何を」

「しばらくしてないだろ」

「っ?!」

そういう事か……!

内容をようやく理解して、体が一気に熱くなるのがよく分かる。

「……楽しみに、しといてやらなくも、無い」

「素直じゃねぇの」

素直になれる内容じゃ無いっ!

内心の葛藤を知ってか知らずかにやにやしてるけど、無視だ無視!

「みもだえてる時のお前はたまんねー」

「やめろぉ……」

「性感帯探しの続きしないとな。耳と何処が弱いかなぁ、ん?」

だからやめろっつうのっ。

余りの恥ずかしさにパニック状態に陥ってしまいそうになり、ふと気付いた事があった。

「もしかして、オレの気紛らわせてくれたのか?」

オレが泣きそうな顔してたから。だからわざとこんな話題を振って……?

「さぁ?でもどっちにしろ覚悟はしとけよ」

「本当、至軟ってわっかんね」

「だろうな」

顔を見合わせてくすくすと笑う。

こんな時間を過ごしてると、さっきのあの黒いカードなんか夢だったんじゃないかって思えてくる。そう言おうとした時――。

「あぁもう無理ぃい……!」

何とも幸せそうな声音が聞こえてきて、それは初めてでは無くどこかで……

ちらりとさり気なく発生源を見やるとそこには。










「ミマリア?!」


前回の大騒動の時に関係していた、首領リソル率いる組織の一員ミマリアがカメラと自家製トマトジュースを手のひらいっぱいにためて佇んでいたのである。

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