短いの
「さてと、一通り終わったべかな」
「まだです」
そう言ってヨコヅナの前に立ったのは、
「コヒィーリア王女側近執事、ヤズミ・シン・ハスキーパ!一手お相手願います」
「……なんで参加してるだ?」
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何故ヤズミが手合わせに参加しているのかと言うと、
「ヤズミがヨコと手合わせして、もし無手で勝つこと事が出来たなら、今後黙って一人で外出しないことを約束しましょう」
「本当ですか!?」
「本当よ。足の裏意外が地面につくと負けというルールだけど、問題ないかしら」
「双方同じ条件なのでしたら問題ありません」
「クククッ、コヒィーリア王女も人が悪い。そんな無理難題を」
「……ふん、男一人膝をつかせるのを無理難題とは、所詮貴様はその程度か」
「私は訓練用の剣を用いてもヨコヅナ様に負けましたからね。無手では何度やっても勝つことはできないでしょう」
「ほう…では私が勝てば、ラビスより有能と証明できるわけだな」
「ヤズミがヨコヅナ様に膝をつかせる事が出来たなら、二度と逆らうような事を言わないと約束しますよ、クククッ」
「……その言葉、後悔するなよ」
「代わりにヤズミが負けた時は、ちゃんこ鍋屋で無償で下働きをしてもらいます」
「…その交換条件はおかしくないか?」
「おかしくありませんよ。実際戦うのはヨコヅナ様なのですから、ヨコヅナ様にも利がなくてはいけませんので」
「しかし私はコヒィーリア王女の側近」
「面白いわね、それ。期間限定なら構わないわ」
「な!、姫様!?ですが……」
「自信が無いのなら、止めてもいいわよ」
「クククッ、所詮ヤズミはその程度ですか」
「やります!やってやる!!」
というようなやり取りがあったからである。
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「恨みはありませんが、少々痛い思いをしてもらうことになります。ご容赦を」
ヤズミの目は本気だ。それも当然、負ければコヒィーリアの側近から、一時的にとはいえ外されるのだから。
「………はぁ~、一度だけだべ」
気が進まないながらも、手合わせに応じるヨコヅナ。
「ヨコヅナとあの側近執事の手合わせか…、中々見物の戦いですね」
シレっとコヒィーリアの隣に立つメガロ。
「すり足の鍛錬はもういいのかしら」
無様な負け方をして早々に手合わせが終わったメガロは、すり足の鍛錬を行っていたのだが、コヒィーリアが見向きもしてくれないので一緒に観戦することにしたのだ。
「見るのもまた鍛錬になりますので」
「それもそうね」
コヒィーリアは視線をヨコヅナ達に戻す。
「姫様、ラビス、約束を反故にされるようなことはないように」
「御託はいいので、はやく初めてください」
「…ちっ、実力の違いを見せてやる」
そう言ってヤズミはヨコヅナに向き直り構えをとる。
「あの構えはケンシン流!?」
メガロが言う通り、ヤズミはケンシン流の基本的な打撃重視の構えだ。
「以前は妙な技を使っていたが…」
建国祭の時、ちゃんこ鍋の屋台の前で取り押さえられたことを思い出すメガロ。
「メインの戦い方でないのは確かね、でもヤズミのケンシン流の腕前は師範代クラスの上をいくわ」
以前ヤズミ自身が言っていたように、コヒィーリア王女の側近は、護衛としての役割もこなさなくてはいけない。
構えを見ただけで、その実力が一般兵とは段違いなのが分かり、ヨコヅナも気を引き締めて構える。
「………残念ですね。やる価値がなくなりました」
ラビスが無表情で呟く。
「ヤズミでは相手にもならないと言いたいのかしら?」
この手合わせを提案したコヒィーリアは、ヤズミが勝つことを無理難題とまでは思っていない、そう思っているならあんな賭けを認めはしない。
「コヒィーリア王女でも実際に見ていない以上、そういう認識になりますか。……それともお忘れなのですか?」
「……何をかしら?」
ヤズミもコヒィーリアも勘違いをしている。
無理難題と言ったのは、ラビス自身が勝てないからではない。
「ヨコヅナ様は手合わせで、誰にも膝をつかされたことがないのですよ」
「参ります!」
ヤズミはケンシン流【瞬歩】で前に出る。
コヒィーリアに師範代クラスと言わせるだけあって、ヤズミの【瞬歩】はまさに目にも止まらぬ速さだ。
速攻で間合いに入り、先手を取ろうという考えのヤズミは……
「ぎゃっ!?」
盛大に転んだ。




