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これは・・・まずいの


 代金の話は無事?解決し、話は変わるけどとコフィーリアがきりだしたのは、


「今はハイネの屋敷に住んでいるのでしょ。問題になるような行動は無いようにね、ヨコは私が紹介したことになっているから」


 ヒョードルは爺やの提案通り既に話を通しており、当然コフィーリアはその真意に気づいていた。


「そうなんだべか」


 ヨコヅナも、ハイネがコフィーリアから話を聞いていたと言っていたから特に疑問には思わなかった。


「分からないことが多いから知らない内に問題行動をしているかもだべな~」

「言ってしまえばハイネに手を出すような真似ってことよ。まぁその場合ハイネ自らヨコの首を刎ねるでしょうけどね」

「…その辺は身をもってわかってますだ」


 ヨコヅナの言葉に怪訝な顔になるコフィーリア。


「…どういう意味かしら、既に手を出そうと」

「ははは、違うだよ。朝稽古している時に、ハイネ様が来て手合わせすることがあるんですだ」

「あぁ~、なるほどね」


 性格を知っているコフィーリアからすれば、ヨコヅナの実力を見てハイネが手合わせをしないなど寧ろありえないと言えた。


「でもヨコは女性とは戦わないのではなかったかしら」

「そう言ったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()と言われただよ」

「…ハイネなら言うでしょうね」


 コフィーリアも女が男より劣っていると考える相手に遺憾を覚えるが、ハイネはその比ではない。


「捕まえたらオラの勝ちってことになってるから、殴る必要はないんだべが、捕まえるどころかろくに触れることすら出来てないだ」


 手合わせをした回数は10を超えているが今だに勝つ糸口すら見えない。


「逆にオラは毎回痣だらけになってますだよ。真剣だったらとっくに死んでるべ」

「それはそうでしょ。【閃光】の二つ名は伊達ではないわ」


 攻撃もせず斬りかかってくるハイネを捕まえるなど、将軍クラスでも出来る者が限られるだろう。


「ヨコはそう言っておるが、我が見た限りではちゃんと勝負になっておるぞ」


 カルレインは賭けが決まって以来、ハイネがヨコヅナとの手合わせに向かう時は同行するようになっていた。


「それどころかヨコはいまだ、一度も膝をついていないのじゃから負けてすらおらぬ」

「膝をついていない…ハイネは素手ではないよね」

「初めは木刀だったべが、今は訓練用の刃を潰した剣を使うかうようになっただよ」

「…ヨコは素手なのよね」

「素手どころか褌一丁じゃ」


 コフィーリアが以前ヨコヅナからスモウについての話を聞いた時も確かに、スモウは褌一丁でやるものだと聞いている。


(嘘…を言っているようには見えないわね)


 馬車でのメガロのように自分の実力を過大に自慢しているわけではない事は見ればわかる。

 だがハイネが手加減しているとも考えづらい。


(負けず嫌いな彼女が、膝をつかせる事も出来ないなど、良しとする訳がないわね)


 模擬剣で本気で倒しに来るハイネ相手に、武器も防具もない状態で膝をつかないでいられる者など王国中探しても何人いるか、

 少なくとも自分には無理だと考えるコフィーリア。


(ありえない……いえ、それはこのことだけではないわ)


 今まで死を待つしかなかったコクマ病の治療薬の開発。

 コフィーリアに美味しいと言わせるだけ料理の腕。

 ヨコヅナは度々コフィーリアの想像を超えてくる、そんな男は今まで会ったことがない。


「フ、フフフ、あはははははっ!」


 突然大笑いするコフィーリア。


「そんなに面白いだか」

「はははっ、…ええ、本当にヨコは楽しませてくれるわ」

「そうだべか……でもオラは困ってるだよ」

「あら、やっぱりハイネとの手合わせは辛いかしら」

「そこはもう諦めただ。ただ、オラが膝をついて負けたら軍に入隊しろと言われてるだ。何度も軍に入りたくないって言ってるんだべが」

「随分と強引な勧誘ね」

「ほんとそう思うだ。姫さんからも言ってくれないだか、オラが言っても聞いてくれないだよ」


 王女からの命令ならハイネも諦めるのではと思い、コフィーリアに頼んでみるヨコヅナ。


「……ええ、分かったわ」

「本当だべか!?ありがとうございますだ!」


 あっさり了承してくれたコフィーリアに喜ぶヨコヅナ。


「姫様そろそろ」

「そうね。美味しかったわ、ヨコ」

「奢ってもらってありがとうございます」

「姉上が無理を言って済みませんヨコヅナ君、ほんと美味しかったです」

「美味しかったです~。お店出したら必ず食べに行きます~」


 皆がお礼を言った後コフィーリアは並んでいた客達の方を向く。


「待たせてしまって申し訳なかったわね。でもそれだけの価値はあるから皆も食べると良いわ」


 その言葉は祭の喧騒の中でありながら、並んでいる客だけでなくその辺り一帯を通る全て者の耳に届いた。


「それじゃ、頑張りなさいヨコ」

「ありがとうございましただ。さっきのハイネ様の件宜しくお願いしますだ」

「ええ、ちゃんと言っておくは」


 コフィーリアは不敵な笑みで答える。


「勝ちなさい、と」

「違うだ!間違ってるだよ!!」

「フフ、私のする事に間違いなんてないわよ」



 この後コフィーリアが好評したと噂が広まり、ちゃんこ鍋が爆発的に売れていくこととなる。


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