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無駄になどせん


「お客さんが来てくれるといいだな」


 屋台の準備をしながらそう呟くヨコヅナ。

 今日から建国祭。

 建国祭は全部で三日間あり、メインとなるの二日目だ。

 まだ一日目の午前のため人通りは多くない。


「全然売れなかったらどうするだべかな」

「今からそんな心配などするでない」

「ホォホォ、ヨコヅナ君のちゃんこは美味しいから大丈夫ですよ」


 屋台にはヨコヅナの他にカルレインと婆やがいる。

 婆やは調理補佐、カルレインは会計を担当する。


「カルがあんなに材料買うから心配になってるだよ」


 ちゃんこの値段と一緒に材料の仕入もカルレインに任せていた。

 仕入の値段と比較して商品の値段を決めるのは当たり前であるため当然といえば当然なのだか。

 届けられたのはヨコヅナの背より高く積まれた大量の食材だった。

 ヨコヅナは何か間違いがあったのかと思ったがカルレインは注文どうりだと言う。


「大量に仕入れる方が安くなるからの」

「余ったら無駄になるだよ」

「余ったら我が食べるから無駄にはならん」

「それだとお金にならないべ」

「グチグチうるさいの。ヨコは自信を持って美味しいちゃんこを作っておれば良い」

「ええ、接客は笑顔が大事ですから暗い不安な顔をしてては売れるものも売れませんよ」

「……そうだべな、ここまで来たら後はなるようにしかならないだな」

「うむ。とりあえず我に一杯作るのじゃ」


 余るまでもなく食べようとするカルレインに呆れつつも鍋に火を入れ、ちゃんこを作りを始める。



「おい」


 ヨコヅナがちゃんこを作っているとに話かける者がいた。


「あ、いらっしゃいだべ、ちょっとだけ待ってもらえるだか?」


 ヨコヅナは初めての客だと思い少し緊張しつつそう言う、しかし


「お前、こんなとこで何してんだ?」

「ん?……」


 客かと思った相手はそんなことを言ってきた。

 その客?は赤髪をショートカットにした少女、気の強そうな目つきでヨコヅナを睨んでいた。

 ヨコヅナはその少女に見覚えがあった。


「君は確か、闘技大会の時の」

「トーカだ」

「ああ!、ひさしぶりだべな」


 闘技大会決勝でヨコヅナと正面から殴りあった少女トーカであった。


「足はもう大丈夫だか?」

「足?……」


 ヨコヅナが言っているのはトーカがヨコヅナとの戦いで痛めた足のことだった。


「あんなもんとっくに治ってる」

「良かっただよ」


 試合の最中は知らなかったとな言え、女の子に怪我をさせたことをヨコヅナは気にしていた。


「今日は祭だからちゃんこ鍋の屋台をやってるだ」

「ちゃんこ?……それはどうでもいいや。お前に聞きたいことがある、どうして試合を途中で放棄した」

「あの時も言っただよ、オラは女性とは戦わないだ」

「続けてたらお前をぶっ倒して私が勝っていた」


 コヒィーリアにヨコヅナとの再戦を訴えていたことから分かるように、トーカはあの時の決勝に納得していなかった。


「……一人称が僕じゃなくて私になってるだな。そっちの方が女の子らしいだよ」

「そんなことどうでもいいだろ!」

「試合に勝ったんだから良いでないべか」

「良くない、チっ!やっぱりもう一度戦え」

「まぁまぁ、今日は祭なんだから楽しむだよ」


 怒るトーヤに対してヨコヅナは何処吹(どこふ)く風。


「ちゃんこ食べるだか、一杯奢るだよ」


 そう言ってトーカにちゃんこの入った器を差し出す。

 トーカはイラつきから直ぐに突っ返そうかと思ったが、その美味しそうな匂いに思わす受け取ってします。

 トーカは初めて聞く料理に少し戸惑いつつ一口食べてみる。


「……美味しい」

「はは、ありがとうだべ」


 トーカの思わず出た感想に笑顔になるヨコヅナ。


「チっ……お前ニーコ村の怪物なのに、王都に住んでんのか?」

「自分でそんなの名乗った事無いだよ。少し前から暮らすことになっただ」

「ふうん…」

「ヨコ、我にもちゃんこ」

「分かってるだよ」


 ヨコヅナはカルレインにもちゃんこを一杯渡す。


「モグモグ、ゴクンっ、わははっ外で食べるちゃんこもまた美味いの」


 いつでもどこでも美味しそうに食べるカルレインだが、今はそれが幸をそうする。

 女の子が二人、美味しそうに食べてる(お金は払っていないが)のを見て、道を歩いていた人達の目に止まり、


「ちゃんこ鍋?どんな味だろ」

「何あの子かわいい」

「美味しそうに食べてるな」

「兄ちゃん、一杯くれ」

「あ、いらっしゃだべ」


 お客が来てくれた。


「もう行く……三日間ここでやってんのか?」

「そのつもりだべ」

「ふうん、じゃあな」

「良かったらまた来てだべ」

「気が向いたらな」


 そう言ってトーカは歩いていった。


「兄ちゃん、美味いなこれ」

「ありがとうだべ」


 お客さんが屋台の前にいたら他の人も近づきやすく、美味しそうに食べていれば買ってみようと思ってもらえる。


「一杯ください」

「いらっしゃいだべ」

「こっちは二杯くれ」

「はい、ちょっと待ってくださいだ」


 そして味が良ければ、それ連鎖が繋がっていく。


「ほはいはひひくほーるほひゃ」

「カル食べてないでちゃんと勘定するだよ」


 開始から中々のすべり出しのちゃんこ屋だった。



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