第一章 09-03
ふと木々の奥に目をやると、何か大きな影が動くのが見えた。雲が厚いからかその姿ははっきりと見えないが、雑魚魔物ルゾフの5倍はあるだろうか、がっしりと大きい何かがゆっくりとこちらへ向かってくる。
ユウは両手に短剣を償還させた。投げつけるにはこちらのほうが都合がいい。地面にいるのは不利かもしれない、ユウはさっと低い木の枝に飛び乗ったと同時に、大きな影は勢いよくこちらに獅子のように突進してきた。
「なんだ、あいつは。」
とっさに手の短剣を投げつけ、横の枝に飛び移ったが、投げた短剣はその硬い毛で覆われている大きな体にあっさりとはねのけられてポトリと地に落ちた。
獅子のような首が2本生えている。体の大きさに対してその頭は小さいが、大きく開いた口にはするどい牙を持っているようだ。神話に出てくるケルベロスを醜くしたような、異形な魔物が深い緑の瞳を爛々と光らせている。2本の首は各々別の方向を見ているのに視線はこちらにある。ルゾフよりもふたまわり以上大きい。
「これが中型の魔物ってやつか。」
とりあえずはこれを瀕死の状態にしなければならないのだ。
逃げることはできない。
短剣や細い剣では硬い体に全く対抗できないし、大きいくせに俊敏な動きができそうだ。ルゾフのようにどこかに毒をもっているかもしれない。接近戦はまだ危険だ。




