第一章 05-02
「ここだ。」
「へ?うそ、ヤモリさん?」
マヤはその場に座り込み、白いヤモリをしげしげと見つめた。そもそもなぜ私の名前を知ってるの?
「そうだ、私は父だ。」
「うっそー!変身しちゃったの?」
半信半疑なマヤは、ヤモリが話すこと自体があまりに現実離れしているので、おかしくなってきゃらきゃら笑い出した。
「いやいや、私は今現実世界にいる。この姿を一時的に借りて交信しているのだ。」
「ふーん。」
マヤはヤモリをそっとつかむと自分の手のひらにのせ、頭や背中を指先でつんつんした。ひっくりかえすとお腹は淡いピンク色で、目は赤いアルビノだった。
「おい、やめろ、かわいそうだろう。」
「ほんとかなーと思って、冗談だよねー。」
なおもマヤはヤモリで遊んでいると、たまりかねたのかヤモリはすすーっと手の間をすり抜けて隙間から家の中に入っていった。
そうだ、お腹がすいた。何か食べよう。
家の中に入り見回しても、冷蔵庫などはもちろんない。戸棚を開けても一人分のコップとお皿とフォークだけ、それも全然使われた形跡がない。ほどなくして、コヤネとウズメも目を覚ました。
「おはよ、ここどこ?」
「寒いよー。」
寝起きの2人は毛布に埋もれたまま座り込んで部屋の中をきょろきょろ見回している。ウズメはまだ眠たいのかまた毛布に包まって横になってしまった。
「おはよう、ここユウ兄ちゃんの家だよ。コヤネちゃん、ウズメちゃん。お腹すいたよ。」
「なにかないのかな?キッチンはどこ?」
コヤネは立ち上がり、うーんと身体を伸ばすと、狭い部屋の中をチェックしはじめた。
「外に水道とかあったけどなぁ。ちょっとユウ兄ちゃんに聞いてくる。」
そう言うとマヤは部屋の隅のはしごを途中まで登り、ロフトで寝ている兄に声をかけた。
「ねぇ、お腹すいた。」




