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いずれは最強コンビ  作者: HAL
第五章 新たな武器を手に入れた
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第十一話

 狂犬が俺たちに近づいてきた。

 正直なところ、ここから先は曖昧なところが多い。

 完全にオーバーヒート。脳が現状を把握することを放棄した。理由はすぐ分かる。もしかすると――もしかしなくても――、俺の人生における最大の事件に発展してしまった。

 俺のところへ逃げてきたセシルに対して、狂犬はしつこく話しかける。

 セシルは当たり障りのない回答をしていたが、徐々に口数を少なくしていった。俺をチラチラ見ながら。

 業を煮やした狂犬が苛立たしげに問い質すと、驚くべき爆弾発言が飛び出した。

「だって、彼氏の前で他の男と話すのは嫌だもの。それが原因で別れたくないし」

 固まった。周囲の雑音も消し飛んだ。

 俺を見て申し訳なさそうに謝るセシル。その内容は、嘘をついてゴメンではなく――

「ごめんね。バラしちゃって」

 俺は固まったまま何もできない。肯定も否定も。

 それを周囲は肯定と受け取ってしまったようだ。狂犬なんか拳を握りしめてプルプルと震わせている。

 誰も彼もこちらを注視している。その視線の強いこと強いこと。この部屋に入った時の比じゃない。

 やだもう。帰りたい。本格的に泣きが入りそうだ。

「……付き合ってるのか?」

「ええ。そうよ」

 狂犬の絞り出すような唸り声に、セシルは平然と頷く。

 は?何言ってんの?セシルさん。

 俺は端から見れば無表情で通してるかもしれないが、内心で動揺しまくっている。当然、そんな話は聞いてないし。

「そいつは、あの熾天使とできてるんじゃないのか?」

「そうね。フェリが一番で、私が二番目よ」

 セシルは平然と言ってのけた。

 俺は完全に固まったままだ。視線を動かすことさえできない。

 周りからの視線が怖い。目を合わせることなんて絶対できない。

 堂々のハーレム宣言だもんな。俺だって言われる側だったら、軽蔑か嫉妬をしそうな気がする。

 俺が沈黙を保つことによって、話がどんどん進んでいく。何か言えばいいのかもしれないけど、強烈すぎるプレッシャーに圧倒されて何もできない。

「三者とも合意の上だもの。だから、問題ないわ」

 セシルの言葉に、誰もが唖然呆然慄然。その後、騒然となる。そりゃそうだよな。

 周囲の雑音が無視できないくらい大きくなる。でも、それに負けないくらい心臓の音がうるさかった。

 もはや慌てることもできず、成り行きに身を任せることにする。要は諦めが肝心ってことだ。もう訳分かんねー。

 セシルは俺に微笑を浮かべてくる。愛する男に向けるような微笑みだった。こんなときでさえ綺麗だと思ってしまった。

 この時、ちょっとした事件が起きた。狂犬が半獣化して挑んできたのだ。セシルのハーレム発言と比べれば、ちょっとしたものだ。

 が、殺気がダダ漏れだったので、普通に返り討ちにした。

 いきなり雷で攻撃してきたのには多少驚いたけど、こっちも即座に半獣化して【サンクチュアリ】を展開したらしっかり防御できた。

 ムキになって何度も雷を飛ばしてきたけど、巨神兵の黒オーラパンチと比べたらお話にならないレベルだ。はっきり言って、ただ単に見た目が派手なだけだ。

 周囲に被害が出る前に、急接近して飛び蹴りかまして気絶させた。まぁ、半獣化した時点で、狂犬の足元とか黒焦げだったけど、気にしないことにした。

 王クラスといっても、多分レベル1止まりなんだろう。実力はフェリシア並と考えてたけど、そうでもなかった。

 本来であれば、雷はちゃんと制御されていて、周囲が黒焦げになることはないんだろう。自分の力を制御しきれず起こってしまった結果というわけだ。

 俺に対する攻撃だって一点集中すればもっと威力は上がったはずだ。おかげで楽に対処できたからいいんだけど。

 フェリシアの弟子といっても、俺はまだ騎士クラスだ。狂犬に軍配が上がると思ってらしい傍観者は一様に驚いていた。

 俺としては当然の帰結だったけどな。セシルも予想通りといった顔だったし。

 騒動はまだ続く。

 狂犬を片付けて半獣化を解くと、隊長格が雪崩れ込んできた。

 まぁ、分らのお膝元で戦闘なんぞが勃発したら、確かめに来るでしょうよ。

 内心めっちゃビビッてたけど、平静を装っておく。もうやっちまったものはどうしようもない。

 後始末で色々揉めたけど、俺は正当防衛が成り立つので厳重注意で治まった。拘束された狂犬は処罰があるらしいけど知ったこっちゃない。ザマミロだ。

 ちなみに、フェリシアは今回の衝突の経緯を聞いても眉一つ動かしただけだった。セシルとアイコンタクトを交わしてたけど、意味が分からん。想定内なのか?

 俺は二人に促されるまま、数多の視線を背に感じながらも部屋を後にした。

 フェリシアとセシルに連れられて、宿に連れてこられる。部屋を出てから終始無言だった。

 そういや、フェリシアの婚約者がいなかったな。さすがに気まずすぎて帰ったか?気まずさに関しては、今なら俺の方が上回ってるけどな!……ダメだ。悲しくなってきた。

 手続きは女性陣が全て済ませてくれた。その間、俺、上の空。

 部屋に入って、ベッドにしばし腰かける。

「疲れたでしょ。風呂でも入ってきなさい」

 フェリシアに促されるまま入ることにした。どこかに行ってたと思ったら、水を用意して紅炎で湯に変えてくれてたのか。

 二人を先にした方がいいんじゃないかと確認したところ、「問題ない。むしろ先に入ってほしい」ということなので、ありがたく一番風呂を頂戴した。

 そうして今。体を洗って湯船に浸かったところで、ようやく落ち着いてきた。

 狂犬を返り討ちにしたのはやり過ぎだったかと反省する。半獣化すると、どうも好戦的になっちゃうからなぁ……

 でもなぁ……

「どうしろってんだよ……」

 独り言が漏れる。

 大人しくやられてやる気はない。俺は何も悪くないんだし。世間的には悪くなるんだろうけどさ。

 もう他人と鉢合わせたくない。猿人の撃破数トップの星覇者として、憧れの眼差しを集めるならまだいい。けれども、ハーレム野郎と認識された上での目はイヤ過ぎだ。

 ダメだ。何考えたところで、悪循環だ。無心になろう。

 無心の境地に至ろうと悪戦苦闘していると、いきなりドアが開く。

 バスタオル一枚のフェリシアとセシルが乱入してきた。フェリシアは堂々と、セシルは恥ずかしそうに。

 隠せてはいる。ただ、プロポーションの良さは隠せられない。そして、水着と違ってバスタオルじゃ妖しい色気が醸し出されている。

 観察し、検証し、仮説を立てた俺の一言。

「はい?」

 我ながら随分と間抜けな声が出たなと思う。嘘です。観察の段階で、思考を放棄したね。

 そう言えば、三人で一部屋にしてたな。今さら思い出す。

 二人は俺に意識を向けることなく髪を洗い始める。

 凝視して逸らしてを繰り返すこと数回。未だに現状を理解できない。

 とりあえず分かることは二つ。フェリシアの肌は日焼けしている。対するセシルは雪のように白い。

 沈黙が続く。

 無視されてるから、出た方がいいのかな?

 そう思って実行しようとしたところ、フェリシアから殺気が漏れた。風呂の中に戻ると静まった。

 出るなってことですか?しかし、なぜ無言?

 その間にフェリシアたちは洗髪が終わり、身体へと移行していた。なお二人はバスタオルを脱いだものの俺に背を向けているため、大事な部分は見えない。

 ぶっちゃけると、それを残念に思う余裕なんて微塵もないけどな。

 とりあえず、あれだな?嫌な予感は募ってきたわ。

 やがて、身体を洗うのも終わったようだ。

 全裸の美女が俺の両隣を陣取る。フェリシアが右で、セシルが左。

 セシルが何か言いたそうな表情をしたと思ったら、

「私たちのこと、は、はしたない女だって思わないでね?誰にでもやるわけじゃないのよ」

「はぁ」

 なんて返せばいいのかさっぱり分からない。

「全く。情けないわね。男ならもっとドッシリと構えなさいよ!」

 泰然としたフェリシアに諭された。

 え~。俺が怒られんの!?

 展開についていけない。どうするのが正解なんだ?誰か教えてほしい。

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