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可愛いの余韻

 アマーリエが微睡みの中に落ちていくのを見届け、エルヴィスは彼女の寝顔をじっと見つめていた。

 繋いだ手から伝わる温もりが、彼の胸の奥を静かに満たしていく。

「……可愛い、か」

 彼は独りごちて、苦笑した。喉の奥をくすぐられるようなむず痒さがある。

一国の政務の一端を担う身として、これまで一度も投げかけられたことのない言葉。だが、彼女にそう言われるのは、決して悪い気分ではなかった。

 数時間後、アンゼルムが運んできた食事のトレイには、アマーリエの好物である温かな野菜スープと、やわらかなパン、エルヴィスのために特別に用意された仕事の合間に摘めるはずだった小菓子が2人分添えられていた。

「旦那さま、奥さまは?」

「今、眠ったところだ。起こさないようにしてくれ」

「承知いたしました。……本日の公務をすべて明日に回した分、明日は戦場のような忙しさになりますので、今のうちに英気を養っておいてください」

 アンゼルムの淡々とした、しかしどこか楽しげな釘の刺し方に、エルヴィスは「わかっている」と短く答えた。

 翌朝、腰の痛みが少し引いたアマーリエが目を覚ますと、すぐ隣で彼女の手を握ったまま眠るエルヴィスの姿があった。

 窓から差し込む朝日に照らされた彼の横顔は、いつもの厳格さは影を潜め、どこか幼い子供のような無防備さを晒している。

「ふふっ、やっぱり可愛いわ」

 アマーリエはそっと自由な方の手で彼の頬に触れ、これから始まる賑やかで甘い日常に思いを馳せながら、もう一度幸せなため息をついた。

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