ペルシアンラヴ 27
あ、ここだ、と思ったとき、
窓側には麻子が座っていた。
思わず手荷物を取り落とし、後ろから来た白人に文句を言われたが、それどころではなかった。
「麻子…なんで…!」
その声に窓のほうを見ていた麻子も振り向いた。
「陽一さん…」
また、アリのことで泣いたのだろう、頬には涙の線が残っている。
麻子も驚いて半身を起こして座りなおした。呆然と通路に立っていた陽一だったが、後ろから再度促されて席に座った。
ふたりは見つめあったままだった。
陽一はそっと、麻子の右手を左手で包むように握った。
そのまま航空機は離陸していく…
神様はときには粋なはからいをしてくれるようだ。
―完―
『だれもかれも、われわれの仲間として』
おいで、おいで
あなたがさすらい人、崇める人、学問の恋人、
だれであろうといい
わたしたちのキャラバンは絶望のキャラバンではない
たとえあなたが自分の誓いを
千回破ったとしても
おいで
おいで、おいで、それでもおいで
「ネイサン」
…どこで撮られたのだろう、麻子と陽一とともに、三人一緒に笑顔で写されている写真が荒木の元に届けられた。(完)
主人公 池谷陽一 29歳
恋人 浅田麻子 23歳
村中達也 36歳
宮本みゆ 20歳
ダルヴィーシュ 荒木 60歳
佐々木高子 38歳
アリ 43歳
森村加奈子 48歳
法木優 22歳
マリアム 71歳