第8章 ルーナ・ローシーとショー・ジルダー
現代……
「6歳の時から苦労していたのね」
と、美奈子が言った。
「いや~」
と、頭を掻きながら再び語り始めた。
「僕が入って間もなくしたら、ルーナさんに彼氏が…(やべっ…これはルーナさんにとって忘れたい過去だった)」
「ルーナさんに彼氏?あっ!ルーナさんに彼氏が出来たんですね」
「あっ、そうじゃなくて…」
と、オロオロする翔。
するとルーナが代わりに答えた。
「そう。私に彼氏が出来たのよ」
「(ルーナさん…)」
「翔君が入社してから4日くらいしたら、その彼氏と初めて出会ったの」
今度はルーナが語り始めた。
翔がペガサスに来て4日後…
「翔君。私は買い物に行ってくるから、私が帰るまで休憩していて」
「はい…」
翔は本当は付いて行きたかったのだが、怪我が完治していないため、会社で休憩をとる事になった。
ルーナが買い物に出かけてから20分後…
後にキャルロットがドラッピーを見つけた野原に、一人の男性が、腹痛で座り込んでいた。
「大丈夫ですか?」
「えっ、ええ…少しは良くなりました」
「そうですか…ではお大事に」
「あっ、待って!」
「は、はい。まだ、お腹が痛むんですか?」
「いや~、お腹の痛みは治まってきた。ただ、貴女ような綺麗な方とお話出来たらな~と思って」
「お話ですか?まあ、少しくらいなら」
「良かった。僕のはショー・ジルダー27歳。情けないことにこの年になっても彼女はいない…それどころかキスさえありませんでした。僕みたいな不細工な男は誰だって付き合いたくないでしょう」
「そ、そんなことはないと思いますが」
「今まで声をかけても一人も相手にしてくれない。でも、貴女は僕を心配してくれた。嬉しいよ。そういえば君の名は?」
「私はルーナ・ローシー。祖父が経営している、何でも屋ペガサスという会社で働いています」
「へ~」
「あなたお仕事は?」
「僕は2年くらい前から、クーロン病という難病にかかってしまい、入退院の繰り返しだから、今は国から生活保護を受けて、ほそぼそと暮らしています」
「(クーロン病…かかったら、完治することは出来ず、最悪の場合は死…)」
「僕の命はどうせ長くない。だから死ぬ前に彼女が欲しかった」
「……」
「貴女のような方が彼女になってくれたらな~でも、無理なのは分かっていた。せめて友達になってはくれませんか?」
「まあ、友達くらいなら私でよければ」
「ヤッター!今まで彼女どころか、友達もいなくて一人ぼっちだったから…親父は僕が子供の頃女を作って家を出て、母が僕を育ててくれたのですが、僕と同じクーロン病で、5年前に亡くなったんです。まさか、僕もなるとは思いませんでしたよ」
「(この方も苦労されているのね)」
「たまに調子がいい時にペガサスへ行ってもいいかな?」
「ええ…もちろんよ」
その後ペガサスに帰り、夕食の用意をした。
「皆!御飯ですよ~」
「うお~、いい匂い。今日はカレーか!ルーナちゃんの作る料理は何でもおいしいけど、カレーが一番うまいよ」
「ありがとう。ジンヤーさん」
皆で夕食を取っている時に、ルーナは今日の出来事を皆に話した。
「ほう、クーロン病か…治るといいなその男」
スギールがそう言った。
「ま、まあ、仲良くしておやり」
カーメーは孫娘に変な男が寄ってきたんじゃないかと、心配で不安でたまらなかった。
翔は無言でカレーライスを食べていた。
彼にとってルーナは姉ではなく一人の女性…
翔にとって初恋なのだ。
「でも気を付けなよ。そのショーとかいう奴、病人のふりしていれば、同情で友達になれると思っているかもしれないから」
ジンヤーがそういうと、ジェーソンがこう言った。
「どうせお前もそうやって、女だまして泣かせたんだろう」
「な、なんだと!喧嘩売っているのか?」
「黙って食えよ」
「お前もな!」
「こらこら、二人とも喧嘩しない」
と、注意したのはスギールだ。
「まあ、そのショーという奴がいやらしい事してきたら俺にいいな」
「はあ…(彼女になってほしいと言われたことを言わなくて良かった)」
無言でご飯を食べている翔だが、さっきから「ショー」という名前が出て悪く言われていたため、自分も「翔」だから、自分の事を言われている気分だった。
それから1週間後…
翔が来てから11日が経った。
翔の怪我は傷は残ったが、一応完治した。
その頃ショーとルーナの二人は、二人が出会った野原にいた。
ここ4日間ショーはペガサスに来ていなかったが、4日ぶりにペガサスにやってきた。
だが、何か悩み事があるようなので、ルーナに悩みを聞いてもらいたくて、彼女を連れ出したのだ。
「ショーさん…何かお話があるようですが」
「お願いだ。僕の彼女になってください」
「で、でも…」
「一昨日の夜、2度吐血しました。病院に緊急で行ったら、医者は深刻そうな顔をして…だけど医者はクーロン病なら吐血は珍しくないと言われた。確かに前にも何度か吐血したが、昨日のあの医者の態度がどうも…たぶん、僕の命もあとわずか…」
「そ、そんなことないわ。必ず治るわ。あなたに生きる希望を持ってもらえるなら、私は…私はあなたの彼女になってもいいわ」
「ほ、本当か?」
「うん。私が付いているから、一緒に生きましょう」
「ありがとうルーナさん。でも僕はもうダメだろう。もっと早く君と出会いたかった」
「大丈夫よショーさん」
「でも、僕は怖い…死にたくないよ…死にたくない…」
ショーは震えながら「死にたくない」とか「怖いよ。生きていたよ」と言い、震えながらルーナに抱き着いた。
「ルーナさん、貴女を抱きたい」
「ショーさん…」
「ははっ…何言っているんだろう。僕は…いくらなんでも恋人同士になったばかりなのに…ごめんね。どうしても、貴女を抱きたいと思ってしまう。きっと、いつ死ぬかわからないから、こんな事を言ってしまったんです」
「…ショーさん…私を抱くことで、あなたが元気になってくれるなら…あなたに生きる希望が持てるなら…私はあなたに抱かれてもいいわ」
「だけど…」
「私はもうあなたの彼女ですから」
「本当にいいの?」
「ええ…でも野原ではいや…どこかの宿で」
「ありがとう」
その頃ペガサスでは…
1階の客室で社長のカーメーと四天王たちが話し合いをしていた。
「遅い!ルーナはすぐ帰ると言っとったんじゃろう」
「はい、ショーが昼過ぎに来て、少しだけでいいから話があると言って、二人は出ていきました」
「じゃが、もう、20時じゃぞ」
「まあ、話があるということは、ショーの奴いよいよ告白か~?」
と、ジンヤーが言った。
「ジンヤー!余計なことは言わないことよ」
と、ランが言った。
「ワシは認めんぞ!」
「ですが、社長…ルーナも大人です。ルーナが付き合ってもいいとショーに言ったら、それはルーナの意志です」
と、スギールが言った。
「だが、まだ早すぎるだろう。ルーナが遊び人ならどうでもいいが、ルーナは純情だからな」
と、ジェーソンが言った。
その頃キャルロットは自分の部屋で本を読んでいた。
翔はルーナの事が気になっているため、気を落ち着かせるために散歩をしていた。
だがその時、翔はある男が歩いてどこかに行くのを見た。
「(大沢…奴もこの国にいたのか…)」
どうやら、その男の事を知っているようだ。
翔は今度はその男が気になり、ばれないように後を追いかけた。
男は港近くまで来て、港にある倉庫の中へ入っていった。
「(何か企んでいるのか?中には奴の気配しか感じない…ひとまず泳がせておいて、様子を見るか…何事もなければいいが…)」
翔はそう思いながら、ペガサスに戻ることにした。
翔が帰る途中、宿からルーナとショーが出てきた。
翔にとって一番見たくない光景だ。
「(ルーナさんが自分で決断した事…俺に何かを言う資格はない)」
そう思い、遠回りをしてペガサスに向かった。
「今日はありがとう」
「いえ…」
「もし、病気が治ったら、その時は結婚してしてほしい」
「ショーさん…そんなにも私の事を…」
「当たり前だよ。初めての彼女なんだから」
「ありがとう。じゃあ今日はもう帰るね」
「ああ…送っていくよ」
「大丈夫よ。お爺様たちに私たちの事を伝えたいから」
「なら、なおさら挨拶に行きたい」
「今はやめた方がいいわ。お爺様は厳しい方だから…ストレスであなたの病気を悪化させてしまうかもしれない。私が説得して、お爺様が納得したらその時に挨拶した方がいいわ」
「そうかい…なら気を付けて」
「うん。お休みなさい」
「ああ、お休み」
ルーナはペガサスへと帰っていった。
「(もうすぐだ。もうすぐで、素晴らしいところへ連れて行ってあげるからね。ルーナ)」
ショーの顔は不気味な笑いを浮かべていた。
前にもあとがきで書きましたが、この物語のストーリーはある程度考えてあったんですが、忘れちゃっていたり、考えていた時と話が違ったりして、結局悩みながら、書くことになってしまいました。
漫画だと分かりやすいんですが字だけだと難しい…
特に格闘シーンは難しいです><
イメージ通りの文章が書けません。
でも病気に負けずこれからも頑張ります!
生時