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第23章 ペガサスの勝利

マネール家の屋敷に付き、子分たちが翔をキモーイの部屋の前まで運んだ。

「キモーイ様、開けてください」

とジーンに化けた奴が言った。

キモーイの部屋は扉や窓ガラスなどは頑丈にできており、ミサイルでも壊せないほどだ。

キモーイは翔が動けないと思い部屋の扉を開けた。

「翔君!」

ルーナが大声で叫んだ。

「だ、大丈夫ですよ。必ず貴女を助けます」

翔のその言葉にキモーイは腹が立ち、翔の顔や腹を殴ったり蹴ったりした。

「街のみなしゃん、観てましゅか?今僕しゃんはルーナしゃんを守るためこの悪者をやっちゅけているとこでしゅ」

街の者たちは悪人はお前だと心の中で思った。

「キモーイ様、早くこいつをトーラの餌にしましょう」

「そうでしゅね。タイガーちゃんたちもお腹を空かせていましゅもんね」

そう言うとキモーイの部屋の隅に翔を置いた。

すると床が開いて、翔は下に落ちた。

どうやらキモーイの部屋の下がトーラたちの部屋のようだ。

「だ、だいじょうぶですか?」

メイが心配そうに言い寄ってきた。

「ああ…」

そしてキモーイはトーラに二人を食べろと命令した。

翔は手錠を自力で壊した。

そして襲い掛かるトーラ二匹を片手でそれぞれの首を掴み持ち上げた。

「どうなってるんでしゅか?あいつ立ち上がりましたよ。しかも1匹100キロ以上はあるトーラしゃんたちを持ち上げるなんて」

翔ははトーラたちに「飯はもう少し待っていな」といい、メイの手錠も壊した。

トーラたちは襲い掛かろうとした。

だが、翔の殺気を本能的に感じ、おとなしくなった。

「タイガー、シャーベル、その二人を食べるでしゅ」

「無駄ですよキモーイさん」

とジーンに化けている者が言った。

「トーラに戦闘訓練させても兵士じゃない。怖いと感じればおとなしくなるものです」

「お、お前、ジーンじゃないでしゅね」

「はい」

翔はメイを抱いて、上のキモーイの部屋までジャンプした。

「キモーイ!」

キモーイを睨めつける翔にキモーイは怯えた。

「僕しゃんに手を出せばお父しゃまが黙っていないでしゅ」

そして何台かのヘリの音が聞こえた。

「お父しゃまでしゅ。お父しゃまが軍を連れて帰ってきたでしゅ」

キモーイの言う通り、この国の軍を何人か連れてキモーイの父親がキモーイの部屋に現れた。

さらに外には何百という数の兵士たちがいる。

「貴様!よくもワシの可愛い息子を脅かしたな」

「子が子なら、親も親だな」

翔はそう言いながらキモーイの父親を睨めつけた。

「小僧!ワシに逆らってただで済むと思うなよ」

「…やれやれ…権力を持っている奴がそんなに偉いのか?」

翔の問いにキモーイの父親は「当たり前だ」と答えた。

「なら俺をどうする?逮捕するか?それともこの場で殺すか?」

「当然この場で処刑してやる」

軍の兵士たちが翔に向けて銃を撃とうとしていた。

その時、沖田がすでに屋敷に潜入していた。

そして、キモーイの部屋のに着くときは、沖田蒼馬に戻っていた。

「私は龍神隊の沖田蒼馬です」

軍の兵士たちが慌てだした。

「この人を撃つならば、軍法会議にかけますよ。そうすれば国際問題になり、下手をすれば、この国はジャパールと戦争になりますよ」

その映像を観ていた国民たちも慌てだした。

「本物か?」

「何で龍神隊があそこに?」

「沖田蒼馬と言ったら、神威龍一の次に強いと言われているんだろう」

軍の兵士たちは当然沖田の顔を知っている。

「ギース大佐!」

「…貴殿が真の沖田殿ならなぜここにいるのでしょうか?」

その言葉に沖田は「この人を…いや何でも屋ペガサスを守るためです」と答えた。

「なぜ沖田殿がこんな町の何でも屋に力を貸す?偽物じゃないのか?」

沖田は答えようとしなかった。

神威龍一がこの国にいると知られてはいけないと思ったからだ。

「沖田蒼馬は土方隊長の命令で俺を護衛している」

「ああ?」

「俺は元龍神隊隊長神威龍一だ」

と、自分から正体を明かした。

だが、それも大佐は信じようとしなかった。

「龍神隊は確か、18歳以上でなければ入隊できない。ゆえに貴様が神威殿であるわけがない」

「ならどうすれば俺や沖田の言うことを信じる?」

「龍神隊が以前、女王の護衛でこの国に来られた時、龍神隊の土方殿はある言葉を教えてくださった。まずはその言葉を書いてもらおうか」

そう言って大佐はキモーイの部下に紙と筆などを用意させた。

だが、肝心の墨汁がない。

「龍神隊の幹部たちは、昔から別の人物が変装しているかもしれないと用心のため、ある物を使い、ある言葉を書いて本物であると証明していた。私はそう土方殿から聞いた」

すると翔は自分の手首を切って、硯に血を垂れ流した。

沖田が布で止血した後、翔はこう書いた。

死戦隊大きな石は誠なり

さらに文字の下にだんだら模様を描いて「龍神隊9代目隊長神威龍一」と書いた。

「死戦隊大きな石は誠なりとはどう意味かな?」

「龍神隊は結成当時、死戦隊と名乗っていた。死を恐れず戦う隊という意味だ。大きな石は誠なりの意味やだんだら模様の意味は龍神隊の者しか知らないはず。ゆえに、土方隊長があなたに教えるはずはない」

「…(確かに土方からは誠の文字とだんだら模様の意味は教えてもらえなかった。それにこの言葉は自分の血で書くと聞いている。本当に本物なのか?本物なら大事だぞ)」

ちなみに大きな石は誠なりの意味は実は人の名前ある。

200年以上前、龍神隊が結成される前に阿紅隊あこうたいという隊が存在していた。

だがこの時に起きた戦争で阿紅隊は壊滅した。

この阿紅隊の中に大石誠という隊士がいた。

この者は死戦隊の初代隊長松平勇の親友だった。

松平も阿紅隊の隊士であった。

そして唯一の生き残りの隊士で、死戦隊が結成された時に隊長に任命された。

これが大きな石は誠なりの意味である。

そしてだんだらの意味は大石の羽織の袖に付いた敵の返り血が松平にはだんだら模様に見えたため、死戦隊、後の龍神隊はだんだら模様の羽織を着ていたのだ。

「ギース大佐!神威前隊長はあなたが土方隊長から聞いた言葉をちゃんと書きましたよ」

「(神威も沖田もおそらく本物だ。まずい…このままでは国際問題になり、沖田の言う通り戦争になる)」

街の者たちも動揺していた。

「本物か?」

「まだ十代の餓鬼だろう?」

「意外とそれなりの年だったりして…」

「だが本物だったら豪いことだぞ」

「どうした大佐!早くあいつらを殺せ!」

キモーイの父親が大佐に命令した。

兵士たちも動揺している。

「大佐!」

「もし貴殿があのジャパールの英雄神威龍一殿なら、何を望む」

「俺はただ、ルーナさんとメイを助けたいだけだ。国同士の戦争なんて当然望んでいない」

「(この者が本当に神威なら、十代の少年が龍神隊をまとめ上げれたのは、ただ単に、強く恐ろしいだけではなく、仲間を思う気持ちや信頼性があったからか…ほしい…我が軍にほしい)」

「大佐、今神威隊長をこの国の軍に入れたいとか思っていませんか?」

沖田の問いに大佐は戸惑った。

「大佐!今の俺はペガサスという何でも屋の従業員大空翔だ。だが、この国に災いがあれば力になる」

「そうですか。で、マネール親子の処分は?」

「ワシらに処分だと!?大佐!どういうつもりだ!」

「うるさい!お前たち親子自体がこの国の災いだ!捕縛しろ!」

「僕しゃんたちを捕縛?僕しゃんは何も悪いことはしていましぇん。国民は黙ってましぇんよ」

「そうだ!たとえ神威龍一であったとしても、不法侵入し、息子を脅かした。その罪は重いぞ!」

「マネールさん、あなたのご子息の方が誘拐、監禁、強姦、殺人未遂などかなりの罪ですよ」

沖田の言葉にキモーイの父親は言葉が出なかった。

「さらに我が国の英雄、神威殿をこのような目に遭わせた。それだけでも死罪ですよ」

「僕しゃんが死罪?お父しゃま」

「ではキモーイに死罪を言い渡しましょう」

大佐の言葉に翔はこう言った。

「俺にはこいつらを裁く権限はない。俺にしたことはどうでもいい。だが、それ以外の罪に対し正当な裁きを望む」

「…分かりました」

キモーイには誘拐、監禁、強姦、殺人未遂で厳しく裁かれることになった。

街の人たちもキモーイが逮捕され、翔は本物の英雄だと皆で喜んだ。

「翔君…」

「ルーナさん…俺は前から貴女に伝えたいことがあったんです」

翔がルーナに告白しようとした。

だがその時ルーナに攻撃魔法を放った者がいた。

「まさかお前のような餓鬼があの神威龍一だったとはな…まあ、そんあことはいいや」

「ロ…ロージアさん」

なんと現れたのは破門されたロージアだった。

ルーナは気を失った。

カーメーとスギール、ランが慌ててルーナたちのいる所へ向かった。

「お前がロージアか」

「そうだ」

「なぜルーナさんを攻撃した?」

「知らない方がいいぜ」

ロージアの言葉にジーンに変身していた者がこう尋ねた。

「ルーナさんの正体を僕は知りたい」

「(こいつの知りたがっていたのはルーナさんことか)」

「ロージア!」

「ちっ…カーメーたちが来る前に始末する予定だったが、仕方ない」

そう言ってロージアは消えた。

「社長、なんでロージアはルーナさんを殺そうとしたんですか?そしてこいつが言っていたルーナさんの正体って何ですか?」

翔が険しい顔でカーメーに尋ねた。

カーメーは会社で話すといい、皆で気を失ったルーナを車に乗せて一行は会社へ戻った。


その頃誰もいない森の中にドッラピーがいた。

「お前と会うのも9年ぶりか」

ドラッピーにある男が話しかけていた。

ドラッピーは元の姿マシェリーに戻って男と会話した。

「お前は今ペガサスという何でも屋に出入りしているそうだな」

「ええ…」

「使命を忘れて息子のそばにいたくなったか」

「…あの子のそばにいたいと思うのも事実だけど、自分の使命は忘れていないわ」

「そうか…」

「ねえ、私と別れてから人は殺していないわよね」

「さあな…俺の仕事は暗殺だからな」

マシェリーは男の目を見てホッとした。

「あなたの今の目は人殺しの目じゃないわ。約束を守ってくれているのね。バーレス」

「フン…」

「キャルロットは少しずつだけど成長しているわ。今じゃガールフレンドも」

マシェリーが話し終わる前にバーレスという男はこう尋ねた。

「くだらん話はいい。ペガサスの連中が強いというのは分かった。だが、肝心のあいつらの居場所は分かったのかよ」

「それはまだ…」

「息子とじゃれて、何が使命は忘れていないだ」

「あの子には何も話していないわ」

このバーレスという男こそはキャルロットの父親だ。

そしてマシェリーはキャルロットの母親であった。

だが父バーレスはキャルロットに母親は死んだと告げている。

マシェリーはなぜキャルロットの元から去ったのか?

そして彼女の使命とは何なのか?


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