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選んだ道

「それでさ、俺が怒られるはめになって…」

「優志、あんた相変わらずのお人好しね」

瑞季は、呆れ顔で言った。

母は小さな溜め息を漏らし、

「優しい人が損をするなんて、理不尽な世の中だわ」

「……お母さん、世の中に呆れないで」

瑞季は、苦笑いする。

母と瑞季の日常的な雑談を方耳で聞きながら、優志は夏穂を気にかけていた。

「……夏穂ちゃん?」

夏穂は顔を上げ、優志を見る。

気づくと、箸を持った手の動きは止まっていた。

「大丈夫?何か今日、元気ないね」

優志は心配そうに、眉を顰める。

「そうですか?そんなことないですよ」

至って冷静な振りをするも、頭の中は整理がつかず、混乱している。

そう、昨日の出来事……。

突然出会った少年に、突然「兄弟」だと告げられ、おまけに「一週間後までに、一緒に暮らすかどうか考えておけ」なんて……。

そんな事があったのに、冷静でいられる訳がない。

「そう。それならいいんだけど」

夏穂は、優志の表情を覗った。

その微笑みに、夏穂は安堵する。

よかった。優志さん、不審には思ってないみたい。

「あ、母さん」

優志が言う。

母は「なぁに?」と言ったように振り向いた。

「明日、帰り遅くなるから。先に夕飯済ましてて」

「あら、友達と出かけにでも行くの?」

「うん。俺の分、作らなくていいから。友達と食べてくるし」

夏穂は、何だか寂しく思った。

明日は、優志さんと一緒に夕飯食べれないのかぁ。

「分かった」と母は頷き、

「ところで……」

母は夏穂の方を向いた。

夏穂は小首を傾げ、母を見る。

「夏穂ちゃんは、友達と出かけたりしないの?」

その問いに、夏穂は学校での約束を思い出した。

次の学校の日、帰りに遊ばないかと誘われたのだった。

夏穂は「考えておく」とは言ったが、せっかく誘われたのに、断るのも何だか申し訳ない気がしていた。

「えっと……」

夏穂は遠慮がちに、控えめな声で言った。

「遊ぶお金もないので……」

母は、まじまじと夏穂の顔を見つめ、それから感心したように頷いた。

「そうね。夏穂ちゃんにはお小遣いあげてなかったものね」

夏穂は激しく首を振り、

「いいんです。お小遣いなんて……」

夏穂は続けた。

「ただ、友達とお出かけするには、いくらくらい、必要なんでしょうか?」

母がクスッと笑ったのを見て、夏穂は言った。

「友達と出かけた事なんてなかったから、分からなくて……」

母は黙って、何かを取りに行った。

夏穂は不思議そうな顔をして、じっと母を待っていた。

しばらくして、母が再び姿を現した。

夏穂の手に、何かを握らせた。

「これくらいあれば、何とかなるでしょう」

見ると、夏穂の手には千円札が握られていた。

「あ、でも」

母は、思い出したように言った。

「夏穂ちゃんとこ私立のお嬢様が多いから、もっと必要かもしれないわね」

再びお金を取りに行こうとする。

「あ、待ってください!」

夏穂は、慌てて母を引き止める。

「大丈夫ですから。充分ですよ」

夏穂は笑い、微笑んだ。

「そう。楽しんでおいで」

母も微笑んだ。



二人は、いつものように、学校に向かう道を歩いていた。

夏は終わりを迎えたと言っても、まだまだ残暑が残る。

夏穂は、手の甲で額の汗を拭った。

「夏穂……ちゃん?」

「はい?」

優志は、怪訝な顔で夏穂を見る。

「今日、顔色悪いみたいだけど大丈夫?」

夏穂は力なく笑って、

「昨日、友達と出かけることばかり想像してたら……眠れなくなって」

優志はそれを聞いて、大きな声で笑った。

夏穂は「何がおかしいの?」とでも言うように、優志を見つめた。

「いや、夏穂ちゃんがあまりにも純粋だから……」

「そうなんですか?」

夏穂は、自分のことをよく理解していないような、未熟児のようにも見えた。

「うん。でも、それはすごくいいこと」

「そうなんですか?」

夏穂は、もう一度言った。

「だって、遠足を待ち望んでいるような子供心、大人になるに連れて、忘れていくものだからね」

優志は寂しそうに笑った。

夏穂は感心したように頷き、

「今日、とても楽しい気分です」

夏穂の髪が軽やかに踊った。

「何故だか分かります?」

優志はクスッと笑って、

「友達と出かけるから」

夏穂は笑顔で答えた。

「はい」



「夏穂ちゃん、昨日の事なんだけど……」

友達が両手を合わせ、申し訳なさそうにしているのを見て、夏穂はショックを受けた。

しかし、次に友達が言ったのは、夏穂の予想とは違った言葉だった。

「ごめんね。誘ったりして。夏穂ちゃん、いつも勉強で忙しそうだし、迷惑だよね……」

夏穂は目を丸くした。

それから、首を左右に激しく振った。

「ううん。すっごく嬉しい。私、ずっと遊んでみたいと思ってたんだ」

途端、友達の口角が大きく動いた。

「本当?やった!じゃあ、遊びに行こう!私の知ってる場所でよければ……」

「ううん。私、全然そういう所知らないから……何処でもいいよ」



夏穂は、友達と並んで歩いた。

その間、ずっと夏穂はご機嫌だった。

普通の女の子として、当たり前の行動をできる事が嬉しい。

ただそれだけが、夏穂を愉快な気分にさせた。

それから夏穂は、初めて「プリクラ」というものを体験した。

「プリクラ」は一人で撮るものじゃない。

友達と撮るべきものなのだ。

初めての撮影にドキドキしながらも、どんな仕上がりになるのかが楽しみだった。

「今日、顔色良くないから……変な風に写ってない?」

夏穂が心配そうに聞くと、

「大丈夫だよ」

友達は、笑顔で微笑んだ。

「ほら」

画面に写された自分の顔に、夏穂は驚いた。

目が二倍以上も大きくなっていて、肌もすごく綺麗になっている。

そして、顔色の悪さも嘘のように分からなくなっている。

すごーい!!プリクラ機って……。

そんなことは、もちろん口にはしなかった。

そんなこと言ったら、感覚が普通じゃないと思われてしまう。

そうだ。今は「普通の女の子であり、普通の女子校生」を演じるのだ。

「ねぇ、次はあれやらない?」

プリクラ機から出た二人を迎えたのは、数々のクレーンゲーム達だった。

夏穂は、いまいちやり方が分からないので、苦笑いを浮かべつつも、頷いた。

友達は、銀貨を一枚入れて、慣れた手つきでボタンを押した。

夏穂は、それを先生の教えを見習う生徒のように、真剣に見つめた。

クレーンが動いて、うさぎのぬいぐるみを掴んだ。

「わぁ。すごい!!」

夏穂は、すっかりのめり込んでいた。

しかし、もう「ゲットした」と思っていたうさぎが、虚しくもクレーンから外れて落ちた。

「えっ。何で??」

友達は小さく笑って、

「掴む位置が悪かったの。もう一回、挑戦しようかな」

友達は、再び銀貨を入れてゲームを始めた。

しかし、またも取れることはなかった。

それから友達は、二、三回とチャレンジしたが、どれも惜しいところで終わった。

「私がやってみる」

今度は、夏穂が言った。

緊張した面持ちで、ゲームに臨んだ。

「惜しかったね」

一回目は失敗したが、二、三回とやり続ける内に、大分慣れた手つきになってきた。

そして、ようやく9回目でぬいぐるみをゲットした。

「夏穂ちゃんすごい!!クレーンゲームの才能、あるんじゃない??」

「いやいや……」

夏穂は首を振りながら、手元のお金を見た。

残り100円しか余っていない……。

クレーンゲームにお金をかけるなんて、何だか無駄な気がしてきた。

でも、楽しかったからいっか。

夏穂はうさぎに微笑みかけ、気を取り直した。

「あ……よかったら、これ」

夏穂は、ゲットしたばかりのぬいぐるみを差し出した。

友達は目を丸くし、受け取ったぬいぐるみをジッと見つめた。

「本当に、いいの?」

夏穂は微笑んだ。

「いいよ!今日の記念に」

「ありがとう」

友達は、嬉しそうにぬいぐるみを抱き締めた。



家に帰って来たのは、18時ちょっと前で、丁度、夕飯の支度が出来た頃だった。

「あら、おかえりなさい」

「ただいま」

温かないつもの家庭に、夏穂は安心する。

母が振り向く時の様子が、すごく好きなのだ。

勝手に、「自分の実の母」のように思ってしまう。

実際、「実の母」ではないのに……。

母は、いつもの優しい笑顔で聞いた。

「何か、買ってきた?」

「いえ」

夏穂は首を振り、

「すみません。貰ったお金、これくらいしか残りませんでした」

夏穂は、掌の上の、100円を見せた。

「いいのよ」

母は言った。

「楽しかった?」

「はい」

夏穂は、笑顔で答えた。

「それが、何よりよ」

夏穂は嬉しかった。

それから、初めての優志がいない夕食を食べた。



「おはよう」

「おはよう。夏穂ちゃん」

この挨拶は、いつもの社交辞令的な一部でしかなかった。

いつもなら、そうだった。

しかし、今日の挨拶は違う。

何だか、すごく新鮮な香りがする。

友達の微笑みに、「心」が添えてあった。

そして、友達は手に持った小さな袋を夏穂に手渡した。

夏穂は小首を傾げ、「私に?」と言った。

友達は無言で頷いた後、

「開けてみて」

夏穂は、言われた通りにラッピングの紐を解く。

「クッキーだ!」

中には、小さな花の形や星の形……可愛らしいクッキーが入っていた。

「うん」

友達は言った。

「家に帰ったら、食べてみてね。味はどうか分からないけど……」

「ううん」

夏穂は、首を横に振った。

「ありがとう」

「あ、そうだ」

友達は、思い出したように言った。

「また、遊ぼうね」

夏穂の胸は、その言葉で一杯になった。

今まで、夏穂に「また」という言葉は用意されていなかった。

「また」がある限り、私とあなたは友達なんだと、言ってくれるようだった。



「夏穂ちゃん、何だか最近楽しそう」

優志が言った。

一昨日ぶりの、優志との夕飯だった。

「夏穂ちゃんは、友達と遊ぶ方が楽しいのよねー」

母は、上品に笑った。

「えっ。俺より……か。何だか、寂しいな」

優志は、わざとらしく拗ねた振りをした。

「えっ。あ、すみません!何か……」

夏穂が必死で宥めようとするのを見て、優志は笑った。

「大丈夫!今の、冗談」

優志の笑みは、爽やかな少年らしかった。

「もう、ダメじゃん。女の子に嘘つくなんて」

瑞季が、姉らしく優志を叱った。

途端、穏やかな笑みが家庭を包んだ。

夏穂は忘れかけていた。

一週間後の約束を……。

幸せな家庭に、幸せな友達関係……そんな穏やかさの中で寝そべりながら、不安はかき消されていたのだ。



夏穂は、いつものように、家路を歩いた。

学校のこと、帰ったら迎えてくれる家族のことに浮かれていたが、家に着いた途端、その妄想は現実に引き戻された。

「よっ」

少年は言った。

何処か、意味深な笑みを浮かべながら。

「一週間ぶりだな」

夏穂はハッとした。

『一週間後までに、俺等と一緒に暮らすかどうか、考えておいてくれ』

そう、あの言葉を思い出したのだ。

目の前の少年、夏樹が言った言葉を。

「答えは出たかな?」

夏樹は、何やら面白そうに微笑んでいた。

その微笑みは、夏穂をますます焦らせた。

夏穂の視線が定まらず、不安な様子を見て、夏樹は言った。

「まぁ、ここで話してもあれだし……どこか、落ち着ける場所に行こう」

「どこかって……」

夏穂は、やはり落ち着きがなかった。

また、あの豪邸に連れて行かれるのかと思っていた。

夏樹が手を振るのを見て、その先を視線で辿った。

既に、家の近くに車は停止していた。

一週間前の、あの高級車が。

「さぁ、乗って」

夏樹が言った。

夏穂は体を固まらせ、足を動かそうとしなかった。

夏樹は微笑んで、夏穂の手を引いた。

「そう、緊張することはないんだから」

夏穂は抵抗することもなく、ただ大人しく車に乗っていた。

相変わらず、視線が定まらず、頭の中は混乱していた。

これから先、もっと混乱させるような事を言われるような気がしていた。

そのための覚悟を心の中に準備しておこうと思いながらも、夏穂は今でさえも、どうにかなりそうだった。

豪邸に着いて、とんでもない事実を告げられて、見に覚えのない契約書を書かされるのだろう……。

一切の音がしない、静かな車内の中、夏穂はそんなことを考えていた。



「さ、着いたぜ」

夏樹の声に顔を上げると、そこは豪邸ではなく、お洒落な雰囲気のカフェだった。

カフェがどんな所なのかもよく分からなかった夏穂は、緊張しつつも、好奇心でカフェへと入った。

夏樹達は、窓際の空いた席に座った。

夏穂も、誘導されるように席に座ると、ざっと辺りを見回した。

夕方のカフェは、仕事疲れの人々が癒されに来ているようだった。

本を読んだり、携帯をいじったり、皆それぞれのプライベートを満喫しているように見えた。

中には、せっかくの“癒しの空間”なのに、テーブル上にノートを広げ、何処か忙しそうにチェックを付けている者もいた。

仕事が終わっても、まだ仕事は続くのか。

夏穂は、世の中の厳しさというものを、改めて感じていたりした。

気付くと、夏穂の目の前に、メニュー表が置かれていた。

「何でも、好きなものをお選び下さい」

男は言った。

相変わらず、ダンディーで、紳士的な笑みを浮かべながら。

夏穂は、一度メニュー表を開き、そしてすぐに閉じた。

「えっと……私、こういうの、よく分からないので」

「そうですか。では、この店一番のお勧めを」

夏穂は思わず立ち上がり、そしていささか焦った様子で言った。

「そ、それって……すごく高いの……とかじゃ、ないですよね?」

男は、夏穂を座らせるよう、右手をすっと下ろし、合図した。

夏穂はとりあえず、と座り、男の返事を待った。

「大丈夫です。ご心配なさらず」

この人たちの「大丈夫」という金銭感覚は、夏穂と随分違うように思えたが……。

そこは、あまり深読みしないことにした。

「ちょっと、レディー」

男の声に、若い女性店員は振り返り、思わず上品な造り笑いをした。

「はい。ご注文ですね」

店員の声は、あまりにも高らかで綺麗な声で、この男に気に入られようとしているのが目に見えていた。

「夏樹様、デザートの方はいかがなさいましょう?」

「俺はいいから、こいつに頼んでやってくれ」

「えっ?デザート??」

夏穂は、慌て、助けを求めるよう、男を見る。

男は察したように、

「大丈夫です。ご心配なさらず」

再び、店員に視線を戻し、男は言った。

「ロイヤルシュクレミルクティーを3つ、果実の盛り合わせタルトを1つ」

男は、優雅な微笑みを浮かべた。

「以上で」

「かしこまりました。すぐにお持ち致します」

店員は、相変わらず嘘の笑みを浮かべていた。

「ところで」

男は言った。

夏穂は、いよいよ本題に入るのかと、真剣な目つきで男を見た。

「私の名前をまだ、紹介しておりませんでしたね」

「あ、はい。そうでしたね」

夏穂は、バレない程度に胸を撫で下ろした。

男は、胸のポケットから名刺を取り出し、夏穂に渡した。

「月島……さん?」

夏穂は、手渡された名刺を読み上げる。

「はい。月島でございます」

月島は、窓外の青空によく似合った、澄んだ笑みを浮かべた。

その笑みで、どのくらいの女性を落し入れて来たのだろう。

きっと、この笑みに掛けられたら、殆どの女性は落ちてしまうのではないか。

「で、答えを聞こうか」

思わず月島に看取れていた夏穂は、夏樹の声に過剰に反応した。

「は、はいっ?」

夏樹はクスッと笑った後、

「もしかして、まだ決まってないの?」

夏穂は、途端に身を固まらせた。

「あ、やっぱりそうなんだ」

夏樹は相変わらず、何がおかしいのか笑っていた。

夏穂は、しおらしくも頷いた。

「でも、困るなぁ。こっちは一週間も期限を与えたんだから」

夏樹は、どうしようかと考えていた。

その表情は、余裕に満ちていた。

「ごめんなさい。私、あなたのことも、あなたの家庭のこともよく知らないし……」

夏穂は、精一杯の声を出して言った。

自信がないのか、俯いたままだった。

「じゃあ、教えようか」

夏穂は、顔を上げた。

夏樹は至って冷静で、表情を変えることはなかった。

「お待たせしました」

二人の会話を遮るかのように、店員が注文の品を運んで来た。

「ご注文の、ロイヤルシュクレミルクティーを3つ、果実の盛り合わせタルトを1つ。以上でよろしいでしょうか」

店員は、テーブル上に、静かにそれを置いた。

「えぇ」

月島が返事をした。

店員は嬉しそうに顔を綻ばせ、

「では、ごゆっくり」

軽やかな足取りで、奥の厨房に戻って行った。

夏樹はミルクティーを手に取り、一口すすっては、

「じゃあ、話の続きをしようか」

「待ってください」

月島は言う。

「夏穂様に、食事する余裕を持たせて下さい」

夏穂の挙動不審な様子を見て、夏樹は頷いた。

「あぁ、そうだな」

「夏穂様、遠慮なさらずにどうぞ」

月島は、夏穂の目の前に、ミルクティーとタルトケーキを置いた。

「でも……」

夏穂は躊躇し、しばらく考えた。

月島は穏やかな笑みを浮かべ、

「ほんの、ちょっとしたおもてなしでございます」

「いただきます」

夏穂は、ゆっくりとミルクティーを飲んだ。

それから、口一杯に広がる甘さと香りを嗜んだ。

「すっごく美味しい……!!」

「よかった」と月島は微笑んだ。

「タルトの方も、手をつけて構いませんからね」

「あ、はい。ありがとうございます」

夏穂は、タルトをジッと見た。

盛り付けられたフルーツ達は、綺麗な艶を持って輝いている。

こんな豪華な食べ物、食べられる訳ないじゃない。

夏穂は思った。

「あ、話の続きを……どうぞ」

夏穂は、夏樹の様子を窺うようにして言った。

「あぁ」

夏樹は返事し、何処かに思いを馳せるように言った。

「夏穂を生んだのは、紛れもなく、俺の母だった」

夏穂は、予想通りの「受け入れ難い話」に注意深く耳を傾けた。

ずっと警戒していたためか、よほど動揺することはなかった。

夏樹は続けた。

「問題なのは、俺の方だ」

夏穂は、手を付けようとしていたタルトに、フォークを添えたまま手を止めた。

「俺の母が、夏穂の母だってことだ」

「え……それって……どういうこと?」

夏穂は、夏樹を見る訳でもなく、窓外の穏やかな日常を見ながら言った。

ただ、夏穂の心が穏やかでないことは確かだ。

「俺等は同時に生まれた。しかも、それぞれ違う母親から」

月島は、大人の余裕を持って、ミルクティーをすすっていた。

夏穂は、食べ物に手を付けることもできず、話に耳を傾けるのに精一杯だった。

「その時、俺等は何かの不具合で入れ違いになったんだ。親はそれを自分の子供だと信じ、そのまま育てたって訳だ」

「え、じゃあ……私のお母さんは、私を捨てたお母さんは……」

夏穂は、ついに冷静さを取り戻せなくなり、体を震わせていた。

「俺の母だ」

夏穂は、愕然とした。

自分が母親だと思って信じてきた母が、本当の母親ではないという事実に。

「だから、お前は本当に可哀想な子なんだ。本来お金持ちの家に生まれるはずの子が、シングルマザーの生活費も録に稼げない家庭に育てられたんだから」

「お母さんは……お母さんは何故、私を捨てたの?」

夏穂は、涙混じりのかすれた声で、訴えるように言った。

夏樹は、何処か虚ろな目で言った。

「自分の、本当の子じゃないと分かったから」

夏穂の瞳からは、ついに涙が溢れ出た。

声を殺して泣くも、堪えきれず、大きな声でしゃくり上げて泣いた。

カフェの客たちは、何事かと皆、窓際の席に注目した。

無数の視線が一気に集まり、店員も、その様子に動揺していた。

「夏穂様」

月島は、夏穂の背後に回り、優しく抱き締めるようにした。

夏穂は一瞬驚き、月島を見た。

月島は、ただ静かに頷いた。

その頷きには、「私を信じなさい」というような安心感を感じさせ、夏穂はただ、その身を任せた。

夏穂は全身の力が抜けるような感覚を感じたが、何とか自分を奮い立たせ、真剣な目つきで夏樹を見た。

「悪かった」

夏樹は言った。

「突然、こんな受け入れ難い話を次々にされても、動揺して当然だ」

夏穂は首を振った。

「続きを……話して」

月島が、ハンカチで夏穂の涙を拭った。

夏穂は吹っ切れたかのように、冷静さを取り戻していた。

もう、何でも受け入れるしかないと。

「分かった」と夏樹は頷いた。

再び、ミルクティーを口に入れた。

「俺の母親ももちろん、俺が本当の我が子じゃないと知っていた。けれど、それをずっと隠してきた」

カフェの客達は、もう、窓際の席に注目することはなかった。

最初、店に入ってから1時間以上が経過した。

既に、最初の客は帰った者もいる。

「偶然にも、“夏穂と夏樹”名前が似ていたんだな。顔は全く似ていないけど」

夏穂は、夏樹の顔を見た。

確かに、顔は全く似ていない。

夏樹は続けた。

「それをいいことに、俺の母は、俺に、「夏穂」という姉がいると教えていたんだ。俺は、いささか自分の家族と、自分だけが孤立していると感じることがあったから。母は、「姉に父と母の血を全部持っていかれたから、夏樹はどちらにも似ていないのよ」と」

「それで」

夏穂は言った。

「どうして、私が兄弟でなく、入れ違いの子供だと知ったんですか?夏樹さんは」

夏樹は頷き、話を進めた。

「俺が本当の我が子じゃないと知っていたのは3人だけ。俺の母と、父、それから月島だ」

「え、月島さん……?」

夏穂は、月島を見た。

月島は、声に出さずに頷いた。

「月島は、ずっと真実を告げようと思っていたらしい。俺が、話を理解できる年齢になったらな」

月島が、その話に口出しすることはなかった。

話の全てを、夏樹に任せているかのように見えた。

「そして、俺が15歳になった時、真実を告げられた。もちろん、ショックだったし、自分を責めた」

「どうして……??」

夏穂は、夏樹の目を、しっかりと見た。

夏樹はいつもの余裕を失くし、俯いていた。

「夏穂には、ずっと悪い思いをさせてきた。俺が夏穂の人生を歩むべきだった。なのに、不幸にも、夏穂が俺の人生を歩むことになってしまった」

「それは」

夏穂は言った。

もう、夏穂はどんなことにも動揺することはなかった。

「仕方のないことですよ。夏樹さんは、何も悪くない」

「いや」

夏樹は言った。

「俺が悪いんだ。全ては……」

夏樹は頭を抱え、視線を落としていた。

夏穂は、そんな夏樹の様子を見て、胸が痛くなった。

「俺は、金持ちの人生を全うして来た。何も知らずに、当たり前のように。けれど、俺が満足することはなかった。美味しいご飯を並べられても、周りから羨ましがられても……」

「どうして?」

夏穂は聞いた。

夏樹は言った。

「多分、小さい時から、無意識にも感じてたんだと思う。あぁ、この人たちは俺の本当の家族じゃないってな」

「本当の……家族」

夏穂は、ゆっくりとその言葉をリピートさせた。

そして、夏樹は自分の真の理解者なのではないかと、何故か心の底から思った。

「俺は、月島から事実を聞いて、それからずっと考えてきた。いずれ、夏穂を取り戻す。そして、“本当の家族”を作り上げると」

「今が、その時です」

月島が言った。

夏穂に、決断が下された。

まだ16歳の夏穂には、難しい決断だった。

「私……どうすればいいの」

夏穂は、逃げ場のない想いを吐いた。

「自分の思った通りにすればいい」

夏樹は言った。

「自分が望む方に、答えを出せばいい。ただそれだけだ」

夏穂はしばらく考え、

「私、よく分からない。でも……夏樹さんと一緒にいた方が、いいような気がする」

夏樹は顔を上げ、目を丸くした。

それは、夏穂が自分の所に来てくれると、思ってもみなかったような反応だった。

「夏穂は……本当に……いいのか?それで」

「はい」

夏穂は、ただ、静かに頷いた。

夏穂の瞳には、確かな決心のような真剣さが伺えた。

「じゃあ、今日から俺等は兄弟であり、家族だ」

夏樹は微笑んで、夏穂にその手を差し出した。

夏穂は手を取り、互いに握手した。

「どうします?このこと、私から直接、夏穂様のご家族に伝えましょうか」

月島は言った。

夏樹は首を振り、

「いや、夏穂の口から直接言った方がいいんじゃないのか」

「え……」

夏穂は、優志の顔を思い浮かべた。

今日の事を全部話したら、優志はどんな顔をするのだろうか。

きっと、いい顔はしないはずだ。

笑って、 「そうか。行ってらっしゃい」なんて、簡単に見送らないのは確かだ。

そもそも、優志達とは元々、赤の他人だった。

偶然、“パンの耳”を貰いに行ったパン屋の少年が優志で、それが出会いのきっかけとなった。

もし、優志が優志じゃなくて、無愛想なパン屋の少年だったら助けてもらうこともなかったのだし、本当に運が良かったと言うしかない。

そんな「赤の他人」をわざわざ家族として迎え入れてくれて、嫌な顔一つせずに今まで一緒にいてくれたのだ。

そんなことを考えると、夏穂の心は尚更揺れ動く。

胸の痛みを抑えながらも、何とか笑みを浮かべ、言った。

「分かりました。事実は、ちゃんと言うべきです。私の口から、ちゃんと言います」

「あぁ、頼んだぞ」

それから、再び車に乗り、夏穂は家へと帰った。

「第二の我が家」へと……。

あぁ、このドアを開ける感覚……ドアを開け、「ただいま」と言えば、すぐに母が駆けて来て……。

夏穂は、当たり前のように優志の家族がしてくれていたことを想い、次々に気持ちが溢れ出そうになった。

喉の奥で詰まった想い、瞼は熱く体温を感じ、涙は溢れる寸前だった。

「夏穂……ちゃん?」

気づけば、目の前には母の姿があった。

玄関の手前に敷かれたマットに、母は膝をついて座った。

夏穂の顔を持ち上げ、しっかりと瞳を見つめた。

「大丈夫?何かあったの?」

途端、夏穂は堪えきれなくなって、次々に涙を流した。

止めどなく、涙は頬を伝い、溢れ出た。

母の優しさが、痛い程、胸に響いた。

優志も微かな夏穂の泣き声を聞いて、玄関へと飛んで来た。

「あれ、夏穂ちゃん?どうしたの??」

優志は屈んで、夏穂の表情を覗った。

「今、男の子には顔を見られたくないんだって」

母の気遣いが、夏穂にはいささか嬉しかった。

「優志、あんたはもう食べ終わったでしょ?」

優志は返事をせず、相変わらず心配そうに夏穂を見ていた。

「なら、自分の部屋で待ってなさい。夏穂ちゃん、今日は一人で食べさせてあげて」

「分かった」

優志は大人しく頷き、言われた通り、二階へと上がって行った。

「夏穂ちゃん」

夏穂は、リビングのソファーにしばらく横になっていた。

母は水の入ったコップを手渡す。

夏穂はそれを受け取り、ゆっくりと口へ運んだ。

泣き疲れたのか、喉が渇いていたようで、水が心地良く喉奥へと染み込んで行く。

涙もすっかり乾ききっていて、夏穂は天井を仰いだ。

「大丈夫?少しは楽になった?」

母は屈んで、夏穂の顔を覗った。

「はい」

夏穂は、噛み締めるように返事をする。

「でも……目、腫れてないかな?こんな姿、優志さんに見られたくなくって」

夏穂は、指先で瞼に触れた。

鏡を見ていないから、どのような状態かは分からない。

母はクスッと笑って、

「夏穂ちゃんって、可愛いのね」

「え?」

夏穂は、不思議そうに母を見た。

母は穏やかな笑みを浮かべ、

「大丈夫よ。腫れてなんかないわ」

と言ったのも、母のちょっとした意地悪だった。

実際、夏穂の瞼は微かな紫色に帯びていた。

「そうですか。それならいいんです」

夏穂は、何かを決心したかのように胸を撫で下ろした。

「あの、話があるんです」

「話?」

母は、まじまじと夏穂の顔を見た。

母は、その話が“家族会議”になる程だとは、到底思っていなかったようだ。

母は、単調な調子で言った。

「なぁに?何でも、言ってちょうだい」

「えっと……」

夏穂は考え込むようにした。

「優志さん、それから瑞季さんにも話がしたいんです」

「あら、そう」

母は、小さな驚きを漏らし、

「待っててね」

と、二階へ上がった。

しばらくして、優志と瑞季を連れた母が戻って来た。

「何事だ」と言ったように、興味範囲な様子で二人は夏穂を見る。

全員がテーブルの席に着くと、夏穂はゆっくりとした調子で話し始めた。

「私は最近、ある少年に出会いました」

優志は、やはり夏穂の腫れた瞼を気にかけたが、何ともないような顔をして話を聞いていた。

きっと、その瞼の原因を、これから話すことになるのだから。

「その少年は、自分は私の兄弟だと言いました。最初、私はその意味が分かりませんでした」

皆、真剣な面持ちで夏穂の話に聞き入っている。

夏穂以外の誰一人として、声を発するものはいない。

「その少年は、夏樹といいます。夏樹さんの母が私の母なんです」

途端、みんなが同じように口を開けて、顔を見合った。

「どういうこと……??」

夏穂は、そう言われるかと予想していたような面持ちで、話を続けた。

「私と夏樹さんは同じ病室、隣同士で生まれました。そして、私たちは入れ違いになったんです」

瑞季が言った。

「子を、間違えたってこと?」

夏穂は頷き、

「そういうことです。夏樹さんの家庭は、とてもお金持ちな家庭でした」

「え、その子の家に行ったの?」

再び、瑞季が質問した。

優志は、先程からずっと同じ表情で話に聞き入っている。

何を思い、考えているのかは分からない。

「はい。とても大きな豪邸で、本当に驚きました。こんな家が世の中にあるもんだなーと」

「すごーい」と瑞季は関心し、「あれ、ってことは、夏穂ちゃんがその家に生まれたってことになるよね?」

夏穂は、静かに頷いた。

「そのことで、夏樹さんは、自身を大変責めていました。私が迎えるはずの人生を、奪ってしまって悪かったって」

瑞季は、返す言葉もなく、寂しそうに夏穂を見ていた。

「でも、私はそんなことは全然気にしてなくて」

夏穂は、いつものように微笑んで見せた。

その笑顔が、皆には、いくらかの安心感を与えた。

「だって、私がお金持ちだったら、代わりに夏樹さんが苦しい想いをしてた。それなら、同じこと。私が幸せになった代わりに不幸な人がこの世の中にいる。皆が皆、平等になれないなら……」

何かを思い詰めるような夏穂の表情に、皆は食い入るように、ただ見つめていた。

「それなら、運命は受け入れるしかないもの。それに、私は貧乏だからって、不幸なんかじゃないんだって」

皆は、何故かとてつもなく胸を痛まれるような想いになった。

それは、目の前の女子高生が語る事実が、普通の人じゃ言えないような大変「立派」な話だったからだ。

生まれた時から背負わされた運命に、必死に立ち向かって生きてきた夏穂だからこそ、言える話なのではないかと思う。

「それを教えてくれたのは、優志さん、あなたです」

夏穂は、顔を上げ、優志を見つめた。

優志は、夏穂に見つめられ、少々照れながらも、「俺?」と言ったように、自分を指す。

夏穂は頷き、それから微笑んだ。

「優志さんに出会って、私の人生に対する考え方は変わりました。私は、自分が他の人と違うこと、自分は汚いんだって、ずっと自分が嫌いでした」

優志は、「そんなことない」と言ったように、首を振った。

皆も、優志の仕草に賛成するかのように、頷いた。

「でも、そんな私を優志さんは助けてくれた。一生懸命、優しいその笑顔を向けて、私と向き合ってくれた」

「夏穂ちゃん……」

優志は、夏穂に今までには感じないくらいの、愛を感じた。

そして、夏穂は今、自分の手の届く距離にいるのだと、改めて認識した。

「だから、私は自分が好きになれた。私を受け入れてくれる人がいる、それだけが嬉しくて」

「夏穂ちゃんは、必要とされているよ。いつだって、俺に。そして、皆にも」

優志の温かい声が、穏やかに夏穂へと伝った。

夏穂の目は潤み、優志を見れなくなりそうだった。

母や瑞季も、「そうだよ」と笑顔で頷いた。

夏穂は、精一杯の笑顔で言った。

「はい」

夏穂は、涙を振り切り、真剣な瞳で、真っ直ぐに優志達を見た。

それから、床に手をついて、土下座した。

「な、夏穂ちゃん!?」

優志は驚いて、言う。

「優志さん、瑞季さん、そしてお母さん。今までありがとうございました」

「え?夏穂ちゃん??何、言ってんの?」

優志は動揺していた。

夏穂は顔を上げ、言った。

「私、夏樹さんと一緒に暮らすことになりました。皆様には本当に迷惑を掛けて……何とお詫びすればいいか分からないんですけど……」

「夏穂ちゃん?」

瑞季が言う。

「それ、本当なの?」

「はい。自身で決めたことですから。変えるつもりはありません」

「そう」と瑞季は言って、考えるように黙り込んだ。

しばらくして、瑞季は笑顔で言った。

「私は、それでいいと思う。夏穂ちゃんが、決めたことなんだったら」

「瑞季さん……」

瑞季と夏穂は、卒業式の親友のように、互いに抱き合った。

「今までありがとうね!元気でね」

「はい」

「私のこと、忘れないでね?」

瑞季は、寂しそうに笑った。

夏穂も、笑顔で返した。

「もちろん。忘れませんよ」

「夏穂ちゃん」

母が言う。

「何にもない家で退屈だったろうけど、いつも私の手料理、美味しそうに食べてくれて嬉しかったよ」

夏穂は首を振り、

「とっても温かくて、素敵な家庭で……楽しかったです。それに、お母さんは美人で、料理も上手いから、最高のお母さんですよ」

母は、嬉しそうに笑った。

「まぁ、相変わらず、お世辞が上手なのね。夏穂ちゃんは」

何処か寂しさを残しながらも、温かい空気がそこにはあった。

母も瑞季も、とっくに受け入れたようで、穏やかな笑みを浮かべていた。

ただ、優志だけは違った。

俯き、その瞳からは、静かな涙が流れていた。

「優志……」

瑞季は言った。

「優志がそんなんじゃ、夏穂ちゃん、笑って元のお家に戻れないでしょ」

瑞季は、優しく優志の背中に手を添えた。

これこそが、弟を思う姉の愛なのだと、夏穂は思った。

「お、俺……」

優志は、涙ながらにも必死に声を出し、

「本当は、夏穂ちゃんがいなくなるのなんて……嫌だよ」

夏穂は、その言葉を聞いて、胸打たれる思いだった。

優志は、やはり、自分の気持ちに嘘は付かない。

いつでも澄んだその瞳で、前だけを見つめている。

優志の顔を見るのが辛い。

これ以上、この場にいたくない……。

「でも」

優志は、手の甲で涙を拭い、顔を上げた。

「夏穂ちゃんが望むなら、俺は否定はしない」

「え……?」

夏穂は、思いがけない優志の言葉に、一瞬、目を疑った。

てっきり、自分を引き止めてくれるんじゃないかって、何処かで期待している自分がいた。

そして、夏穂はそんな自分をすぐに恥らしく思った。

優志は首を振り、言った。

「ううん。本当はさ」

夏穂は、黙ってその先を待った。

まだ何処かに、期待が残っていたりして。

「行かないでって言いたいよ?」

「優志さん……」

優志は、やはり優しかった。

何処までも優しかった。

いつも、私の言って欲しいこと、して欲しいことを用意してくれる。

そんな優志さんが、やっぱり……。

私、大好きです。

「でも、俺は夏穂ちゃんじゃないから、夏穂ちゃんの未来を決めることはできない」

そうだよね。

引き止めることなんてできないよね……。

「だから、夏穂ちゃん。寂しいけど……行ってらっしゃい」

優志の瞳は潤んでいた。

しかし、その瞳の中には「笑顔」があった。

「幸せになってね」

優志の言葉が、風に乗って、優しく、そして切ない程に胸に響いた。

私は、優志さんに背中を押され、前を向こう。

自分の選んだ道を……進もう。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

次で、最終章になります。

九章も、最後まで見届けてやってください^^


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