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すぐに大聖女と呼ばれる私の白い魔法  作者: 御咲花 すゆ花


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7/18

7 やっぱりここが白魔法の世界です。

 私は生まれも育ちも日本です。一度も海外になんて行ったことがありません。ヨーロッパで撮られた田園風景の写真を、まじまじと見たことだってないでしょう。それなのに、心のどこかには、これと似た景色があるような気がしてなりませんでした。


 私は歩きだします。さっきまでいた天幕と戦場のことなんて、もう私はすっかりと忘れていたんです。

 近くの小屋の中をのぞいてみます。小屋の中はほこりっぽく、使われている気配がありません。ほこりを舞いあがらせないように気をつけて、窓際まで進んでいきます。でも、入り口のところに残されていた木靴には気がつかなくて、私は転びそうになっていました。おっとっとと、小屋の中を私は派手に進みます。……ほこりですか? ええ、舞いあがってしまいました。やめてくださいよ、そんなかわいそうな子を見る目で見ないでください。これでも、私なりにがんばっているんですから。


 窓際の机の上には、1冊の古びた本が開かれたまま置いてあります。革の表紙はひび割れ、角はすり減っていて、何人もの人の手に渡って、代々受け継がれて来たかのようです。


 紙はすでに黄ばんで色あせています。端のほうには小さな虫食いの跡さえ見えます。それなのに、開かれたページの部分だけが、まるで新品であるかのようにきれいに真っ白でした。かなり奇妙な印象です。いくらなんでも普通じゃありません。怪しげに思って、私は本の中に視線を落としてみましたが、記された文字がどのような意味なのか、読むことができませんでした。


 諦めて、代わりに本の周囲に注目してみます。

 窓の近くには、ランタンのような灯りが天井から吊るされていますが、火は灯っていません。ぐるりと体の向きを変えて、小屋の中のほうを見てみます。小屋の持ち主は、大変なミニマリストのようで、めぼしいものはほかにありませんでした。なぜだかさっぱり私には分かりませんが、ほこりが舞っているので、これ以上の長居はやめたほうがよさそうです。きっと、おっちょこちょいの中学生が、戸口付近で転びそうにでもなったんでしょう。


 外に出て、私はもう一度麦畑のほうに視線を向けました。

 麦の穂は、毎日欠かさず丁寧な手入れをされているかのように、とてもみずみずしいです。住んでいる人がいるとは思えない小屋の様子とは、まるで正反対です。いったいどういうことなんでしょうか。私から隠れているだけで、やっぱりここで生活している人がいるんでしょうか。


「あの……どなたかいませんか?」


 私にしては、大きめの声で呼びかけてみました。

 当然のように返事はありません。

 仕方なく、畑道をそのまま私は歩いていきます。前方に、干し草を積んだ荷車を見つけたので、私は急いで近寄ります。ですが、そこにも人はいませんでした。あったのは、穴のあいた麦わら帽子と、刃先までしっかりと錆がついてしまった、1本の鎌だけです。


 かすかな不安が、胸に押し寄せて来ました。

 どれだけ畑道を歩きつづけても、どこにも人を見つけられないことが、なんだか私にはとても気がかりだったんです。それにさっきから姿は見えないのに、笛の音だけは、遠くから聞こえて来ている感じがします。


 さすがに幻想的な風景も、これだけ多くの不思議に囲まれていると、なんだか不気味に感じられてしまいます。まるで自分1人だけが、全く知らない世界に迷いこんでしまったかのような……。トンネルのときはどうだったんだって? ふっ、残念でした。さっきの天幕は私1人じゃ――って、そんなこと今はどうだっていいんです。太陽が多い割に、なんだか寒気がしたので、私は自分で自分の肩を抱きしめていました。


 そのとき、声がしたんです。


「足が……熱い」


 はっとしました。あの兵隊さんの声です。

 まだ不思議はつづいているのに、いきなり現実に無理やり戻されたような気分です。もはや声は、普通の会話をしているようなボリュームで、私の耳に届いていました。


「……そんな、まさか」


 私が今いるこの麦畑は、兵隊さんの横たわる天幕と、無関係じゃないということなんでしょうか?

 私は首を振って、今しがた自分の抱いた考えを否定しようとしました。

 ですが、頭を左右に振ってみても、一度抱いてしまった疑いは、消えてなくなることはありません。そうとしか思えなかったんです。

 お手数ですが、ブックマークと評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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