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すぐに大聖女と呼ばれる私の白い魔法  作者: 御咲花 すゆ花


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15 この地方の領主さん。

 いつの間にか、きらびやかな装いをした男の人が、天幕の中に現れていました。その男性の供としてそばに控えているのは、ほほに深い傷のある、屈強な体つきをした男の人です。


 自分の体に絶対の自信を持っておられるようでして、見るからに戦うことを専門としているにもかかわらず、その体には身を守るべき防具のたぐいがありません。盛りあがった筋骨が、迫る鋭い矢や襲い来る剣を()()いてくれるんでしょうか? 運動音痴の私としては、身体能力の高い人に少しだけ憧れてしまいます。……でも、ちょっぴりだけですよ? 現実に、こんなマッスルなムキムキボディになるのはごめんです。


 いかにも武闘派という、マッチョさんを従えているんですから、きらびやかな甲冑(かっちゅう)の男性がただものじゃないことは、私にもすぐに理解できました。


 これはあとから分かったことですが、こちらの方は私たちが今いる地方の領主さんで、負傷した兵士たちのみなさんの様子を、見に来ていたんです。男性が甲冑(かっちゅう)を脱いだことで、その素顔があらわになりました。軽く首を振り、額に張りついてしまった髪の毛を、男性はさわやかに拭っています。


 当時はまだ、どんな相手なのかを理解していなかった私は、いったい何事かと身構えました。もちろん、男性たちは私のことなんか、これっぽちも気にしてはいません。


 がばり。

 そんな効果音が似合いそうなほどに勢いよく、ふいに男性が頭を下げていたんです。


「みんなのおかげで、無事にヨロロホムハ国の兵士たちを、追い払うことができた。感謝したい」


 私はちょっぴり呆気(あっけ)に取られていました。たいした理由もなく、身構えた私がいけなかったんですが、なんだか少し肩透かしを食らった気分です。


 それは多かれ少なかれ、この場にいるみなさんもおんなじだったようです。天幕の中には沈黙が訪れていました。ですが、その静寂(せいじゃく)は、不思議と重苦しいようなものじゃありません。居心地の悪い空気に、なったわけじゃないんです。


 男性が頭を上げたのを見計らって、隣に控えていたマッチョさんが声をかけます。


「大将の領主がそんなに仰々しくちゃ、下の連中は、戦いが終わったっていうのに、気が抜けないでしょうや」


 領主さんを茶化す発言で、天幕の中に笑いが起こります。

 ですが、それは決して、領主さんを小ばかにしたような笑いじゃありません。そのことは私にも、怪我人(けがにん)のみなさん態度からよく分かりました。軽傷の人たちが全員、起きあがって領主さんを一目見ようと、そちらに顔を向けていたんです。


 多くの人たちに慕われている領主さんなのだと、すぐに理解しました。


「いや、僕にそんなつもりは全然……まいったな、これは」


 そのように話す領主さんですが、これといって、困っているようなそぶりは見られません。顔に浮かべたさわやかな笑顔を崩すことなく、自分のほうへと向けられた、あまたの視線にしっかりと応じています。そのうち、寝台の上に横たわっている兵隊さんの姿に気がつくと、マッチョさんが、慌てた様子で私たちのもとへと駆け寄っていました。


「ニリンダ! ダライアスを助けてくれたのか。さすがにもうダメかと思ったぞ」


(ダライアスっていうんだ……)


 図らずも、私はここで兵隊さんの名前を知ることになったんです。

 マッチョさんのことばには応じず、ニリンダさんは領主さんのほうに顔を向けていました。


「セルジオ様、そのことでお話があります」


 そこで今初めて、領主さんは私の存在に気がついたというように、私に視線を向けていました。私と領主さんの視線が交差し、なんともいいがたい微妙な沈黙が生まれます。今度の沈黙は、先ほどと違ってきまりが悪いといえましょう。


「……」

「……。ここに来ることになっている、聖女のシャーロットさんではないようだね」


 ぱちくりと、領主さんが目をしばたたかせていたんです。

 お手数ですが、ブックマークと評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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