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第十話:仮面の裏の、真実へ

 帝都。

 それは“虚飾の都”とも呼ばれる、欺瞞と誤魔化しの渦。


 アメリア・シェリルはその中心――貴族議会と情報機関の裏で、

 かつて自分が仕えていた“帝国そのもの”の闇に、今まさに切っ先を向けようとしていた。


 舞踏会の翌朝、アメリアは帝都外縁の屋敷で目を覚ました。

 夜通しの情報収集と報告が、枕元に積まれている。


 ニーナ婆の使いが届けたのは、一冊の“出納記録”。

 そこには、ヴァレンタイン家からある貴族連盟へ資金が流れていた痕跡があった。


 ――“帝国清正会”。

 帝政支持を掲げながら、その実は腐敗した貴族たちの連合。

 そしてアメリアの実家・シェリル家を陥れた、最大の元凶。


 その夜。

 アメリアは帝都の裏手にある“劇場”に姿を現した。

 上演されるのは、仮面劇《死者の晩餐》。


 観客に紛れ、静かに席へとつく彼女の姿は、艶やかな黒のドレスに身を包んでいた。

 今夜の衣装は、舞台女優を思わせる刺繍入りの艶やかな黒。

 髪には赤いバラの飾り、そして腰には細身の装飾剣。


 スカートはフレアが広がりやすい設計で、

 “舞う”ための――そして“斬る”ための構造。


 劇の休憩時間。

 アメリアは二階の貴族席に向かう。

 そこには、清正会の中心人物――ベルトラン公爵がいた。


 「これは……お見事な演目でしたな」

 「ええ。仮面の下で、誰もが笑い、泣き、そして殺し合う。

 この都には、よく似合うわ」


 「……失礼ながら、お名前を伺っても?」


 「ごきげんよう。汚いごみのお掃除に参りました――」


 アメリアはゆっくりと、スカートを摘んで一礼した。


 「“没落した元・令嬢”アメリア・シェリルと申しますわ、公爵殿」


 その瞬間、護衛が剣を抜く。

 だがアメリアはわずかに身をひるがえし、

 懐から放たれた小瓶が床に砕けた。


 ――無臭の神経毒。


 数秒のうちに、公爵の護衛たちが崩れ落ちていく。


 「その席であなたが何を決めてきたか、すべて把握済みよ。

 シェリル家の財産横流し、ギルバートの傀儡化、そして“処分命令”」


 ベルトランは額に汗を浮かべながらも、なお笑っていた。


 「なるほど……“あの女”の再来か。だが、“あの方”が許すかな?」


 「“あの方”? なるほど、黒幕がまだいるのね」


 アメリアはベルトランの手から文書を奪い、視線を落とす。

 そこには――


 > 『帝国宰相補佐・ルドルフ・エーベルハルト』


 その名が記されていた。


 「……“あなた”だったのね。父を裏切り、私を売ったのは」


 翌朝。

 アメリアは廃教会跡にて、ユリウスと再会した。


 「ベルトランが落ちたわ。あとは宰相補佐――“エーベルハルト”」


 「……本当に、行くのか? 彼は今や帝国の実質的支配者だ。

 お前一人で勝てる相手じゃない」


 「一人じゃないわ。あなたがいる。

 それに――私はもう、“守る理由”を持ってる」


 その言葉を告げた彼女の手は、

 かつて“復讐”のためだけに動いていたそれとは違っていた。


 今は、“誰かを守るために”、刃を握っている。


 その夜。

 帝都の空に、花火が上がった。


 それは祝祭の火――だが、その影で。

 黒い衣装をまとった一人の女が、王宮の裏口に静かに立っていた。


 「そろそろ……最終幕の準備を始めましょうか」

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