最終話 ~お別れ、そしてふたり。~
目覚める。病院の一室。
個室の病室。
どれくらい手を握っていたのだろう。
どれくらいの温もりを感じていたんだろう。
あんなに長かった一夜も。
一瞬だった気がする。
病院の独特の雰囲気、匂いに包まれながら。
一定に鳴る、機器の音を聴く。ふたり。
只々、流れる。ふたり。
私は、握った手の主を見る。
ベットの上で安らかに眠っている男性。
もう・・息はない。
その男の顔はすごくきれいで、少し笑っているようにも見えた。
目に涙の跡ができていた。
「なんだ・・零れちゃってるじゃん・・」
零れないように、上を向けって言ったのは光のくせに。
まぁ、私も泣いちゃってるんだけど。
だって、やっと気づいてくれたんだもん。
私は見てたよ?私は悲しいよ?一人なんかじゃないんだよ?
責任は・・私にもあるんだよ?
・・・お兄ちゃん。
私は、あの夜にふたりでみた、星を忘れないよ。
窓の外には、たくさんの星が、ふたりを照らしていた。
ありがとう。おめでとう。さようなら。
おかえり。ただいま。またあした。
何回言ってきたのだろう。
そんなありきたりな言葉。
今日もまたどこかで。誰かが言っている
それが、もし。なくなったら。
僕は何を伝えるべきだろう。
ありがとう。おめでとう。さようなら。
おかえり。ただいま。またあした。
それでいいんじゃないかな。
なくなったんだったら、また作ればいい。
何度も言うけれど。それほど、単純なものなのだ。
僕らはいつだって、そんな世の中に住んでいるんだ。
案外、何でも乗り越えられるものなのだ。
そして、そのありきたりな言葉が、いつも通り続くのならば。
僕は、何回でも言うさ。
――いままで、ありがとう。そして、ごめん。
ふたりは、この夜。空に消えた。
星となって、照り続ける。
――おかえり。今度こそ、ふたりで。
――ただいま。二人で、ずっと一緒にね。
手を握る。ひとり。
握った手を、握り返す。あの夜にふたり。




