表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/8

第六話 ~成仏~

病院の屋上。

ここからでも十分、街が見渡せる。

相変わらず、綺麗な夜空が広がっている。


「成仏するって・・どういうことだ?」


先に走りだし、自殺する前の人のように立っているシキに問う。

・・・危ねぇよ。どこに立ってんだよ。


「あなたに決心してもらうことかな。」


ふりかえったシキは、真剣な顔で答える。


「決心?」


「あなたは一人じゃない。たとえ一人でも生きていける。その決心。」


「・・どういう意味だ?」


「自分を責めすぎなんだよ。何であなたが死んだ眼みたいになってるの!」


「シキ・・?」


「私は・・私は、そんな姿見たくない。いつも通りでいいの!」


「お前・・」


あの丘の上で話していた時より、ずいぶんと違う。

冷たいほど、落ち着いてたじゃないか。

今は、あの俺を説得するような時の。

熱い熱弁をしていたシキではない。

俺に何かを伝えるために、感情的になっているようだ。


「無茶をするなよ・・私だってもう、自分でわかっているんだよ。俺は死神なんだ・・・

なんて怖いこと言わないでよ!そんなわけないじゃん!」


もうわかった。


「また・・いつものように笑ってくれたら・・」


「ごめん。」


この言葉を聞いた瞬間、シキは驚いた顔をしていた。

そして、もう。耐え切れなかったのだろう。

泣いていた。


「やめてよ・・謝らないでよ・・!」


「ありがとう。」


俺の言葉は、この二つしかなかった。

こんな、ありきたりな言葉。

俺はやっぱり、これしか伝えられない。

無くなったら、何を伝えるべきだろうなんてわからない。

だって、無くなるはずなんてないのだから。

現に俺は、思い出したんだ。思い出すことができたんだ。


このありきたりな言葉こそ、伝えるべき言葉。


一番単純で。一番心に残る言葉。


「・・え?」


「俺は・・俺には、大切な人がいたんだな。」


「・・・うん。」


「ありがとう、シキ。君のおかげで思い出せそうだよ。」


「・・よかった。」


「成仏するよ。大切な人が待ってる。」


その笑顔は何よりも優しく、初めて心の底からの笑顔だったかもしれない。


「うんっ!」


シキも笑顔でかえした。


景色が白くなっていく。


「うっ・・うっ・・」


泣き崩れるシキ。


「下を向くなよ。上を向けよ、シキ。涙がこぼれなくてすむ。」


「そ、そうだね!うん・・ぼやける星も綺麗だね」


「あぁ、ほんとだな・・」


「なんだ、光も泣いてるんだ・・」


「な、泣いてねぇよ」


「うそつき。」


シキも消えていっている。



誰だって変わらない。ただ一つの景色。

特別なんてない。同じ色。


いつもどおりは、一人一人のいつも通りがあって。

僕も、僕のいつも通りがあるんだ。


それがどんなに特別でも。

変わらない景色に、特別なんてない。


矛盾している?そんなことない。


自分の都合のいいように。

自分のせいばっかにして。

自分のいいように、景色の見方を変えてきた。

だから。


見方を変えてみればいいだけの話。

ただそれだけの話。


本当に、本当に、単純な話なんだ。

だから、単純な言葉に心が動かされて。

それでいいんだ。


「もうちょとだけ・・一緒にいたかったかなぁ・・」


「僕も・・そう思ってたところだよ。」


あ・・、また流れ星。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ