表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/26

第22話 見られている側

登録者1372人。

スポンサー42人。

ボランティア9人。


成長は続いている。


だが、この日は違った。


“外”の動きが、明確にこちらを捉え始めていた。


朝。


一通のメール。


件名:ご確認のお願い


送り主は、見覚えのない法律事務所。


正義は一瞬、手を止める。


開く。


《御媒体に掲載されている〇〇市に関するデータについて、一部表現が誤解を招く可能性があるため、ご確認をお願い申し上げます》


文章は丁寧だった。


だが、意図は明確だった。


「……来たな」


正義は小さく呟く。


削除要請ではない。


訂正要求でもない。


「確認」。


だが、その言葉の裏にあるものは分かる。


「見てるぞ」


という意思表示。


――


Slackに共有する。


《このメール来てます》


数秒で反応がつく。


“これ、どう対応します?”

“修正必要ですか?”

“まずいですか?”


空気が少し緊張する。


正義は冷静に書く。


《まず、該当データを再確認します》


事実ベース。


感情は入れない。


――


Sがすぐに動く。


“元データと照合しました。数値自体は問題なしです”


早い。


正確。


だが問題はそこではない。


正義はメールをもう一度読む。


「誤解を招く可能性」


つまり、


“どう見えるか”の話だ。


――


凛に送る。


「法律事務所から来た」


既読。


すぐ返信。


「内容は?」


スクショを送る。


数秒。


「これ、ジャブだね」


「ジャブ?」


「いきなり殴らない。まず様子見る」


正義は画面を見つめる。


「どうする?」


少し間。


「事実に問題ないなら、変えない」


即答だった。


「ただし」


続く。


「説明は強くする」


――


正義はPCに向き直る。


該当ページを開く。


・グラフの前提条件を再記述

・数値の算出方法を明示

・一次資料リンクを強調


さらに一行追加する。


《本データは公開資料に基づき作成しています》


公開。


――


メールを返信する。


《ご連絡ありがとうございます。ご指摘の点について確認いたしましたが、掲載内容は公開資料に基づいております。誤解を防ぐため、前提条件の記載を追記いたしました。引き続きご確認いただけますと幸いです。》


送信。


――


夜。


Slackは静かだった。


だが、その静けさが重い。


誰もが分かっている。


「段階が変わった」


もう、ユーザーだけではない。


組織。

法人。

そして、その先。


正義はダッシュボードを開く。


登録者:1372 → 1458。


増えている。


スポンサー:42 → 47。


数字は、むしろ良い。


だが、それが逆に現実を突きつける。


「影響が出てる」


だから、見られる。


だから、触れられる。


――


そのとき、Slackに新しいメッセージ。


“さっきの件、大丈夫なんですか?”


正義は少し考えて、書く。


《大丈夫です。事実ベースで対応します》


短い。


だが、それ以上でもそれ以下でもない。


――


深夜。


メールの返信が来る。


《ご丁寧なご対応ありがとうございます。内容については引き続き確認させていただきます》


それ以上は書かれていない。


だが、それで十分だった。


終わっていない。


続いている。


――


正義は椅子にもたれ、天井を見る。


「これが普通になるのか」


圧力ではない。


だが、圧力の前段階。


RE:PUBLICは、


無視される存在ではなくなった。


そして——


無視されないということは、


常に見られるということだった。


登録者1458人。

スポンサー47人。


成長は続く。


だが、その先にはもう、


「安全な領域」は存在しなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ