第11話 透明性の矛先
登録者223人。
βスポンサー18人。
正義はダッシュボードの数字を見つめながら、次の課題を自覚していた。
“スポンサー一覧、いつ公開ですか?”
あの一文が、頭から離れない。
透明性を掲げる以上、自分たちの資金構造も開示しなければならない。だが、18人のうち何人が実名公開を望むのか。匿名で応援したい人もいるはずだ。
「どう設計する……」
正義はノートを開いた。
・スポンサー公開ポリシー
・実名/匿名選択制
・金額帯のレンジ表示
・総額の月次公開
“全部出す”は簡単だが、乱暴だ。守るべきは透明性と、個人の安全。
凛にメッセージを送る。
「スポンサー一覧、公開する」
すぐに既読がつく。
「どこまで?」
「実名か匿名かは本人選択。金額はレンジ。月次総額は公開」
少し間があって返信。
「いいバランス」
「攻撃されるかな」
「される前提で設計しな」
その言葉に、正義は小さく笑う。凛はいつも現実側だ。
その夜、βスポンサー向けにアンケートを送る。
《スポンサー一覧への掲載について》
① 実名公開OK
② ハンドルネーム公開
③ 完全匿名(人数のみ集計)
翌朝。
回答は18人中16人。
実名:6
ハンドルネーム:7
匿名:3
「思ったより、出すな……」
覚悟を持って支払っている人がいる。単なる“消費”ではない。参加だ。
正義はページを実装する。
《スポンサー透明性レポート(β版)》
・今月スポンサー総数:18名
・公開可:13名
・匿名:5名
・月次総額:17,640円
さらに、使途も明記する。
・サーバー費
・録画データ保存費
・開発時間外注費(予定)
公開ボタンを押す。
数分後、チャットが動く。
“ちゃんと出してくれて安心しました”
“匿名選べるのありがたい”
“金額も出すんですね”
肯定が多い。だが、Xでは違う空気も流れ始めていた。
《スポンサー18人で何が変わるの?》
《金集め始めたか》
《結局マネタイズ目的》
正義はタイムラインを眺める。
否定は想定内だ。だが、気持ちは揺れる。
そのとき、ダッシュボードに通知が入る。
βスポンサー:19人。
一人増えた。
公開後に増えた。
「……効いてる」
透明性は、信頼のコストを下げる。
夜、登録者は241人。
スポンサー一覧ページの滞在時間は平均4分12秒。予想より長い。
人は、裏側を見たがる。
凛から電話が来る。
「公開したんだ」
「うん」
「怖くなかった?」
「怖いよ。でも、出さないほうが怖い」
凛は少し黙る。
「正義、それは強い」
強いのかどうかは分からない。ただ、隠す理由がないなら出すだけだ。
深夜。
スポンサー一覧ページに、新しいコメントがつく。
“このレベルで公開するなら、信用できるかも。”
正義は椅子にもたれ、静かに息を吐いた。
登録者241人。
スポンサー19人。
月売上18,620円。
まだ小さい。
だが、構造は一段、前に進んだ。
透明性は、他者を測る道具ではない。
まず、自分を晒すことから始まる。
正義は画面を閉じ、窓の外を見た。
東京の夜は変わらない。
だがRE:PUBLICは、少しだけ重みを持ち始めていた。




