第六十三話 マジックサック・アップ 〜加藤陽太編〜
〜加藤陽太の視点〜
――――始まりの大地ストファー、ポラ平原――――【現在時刻、9時3分】
”膨大な魔力”を持っていると言う事を、通りすがりのセクシーな白髪の魔女である『黒魔女シーニ』に知られた陽太は、慌てふためきながら聞き返した―――。
「ま、魔女って……!? 本当に、貴女は魔女なんですか……っ!?」
「あら、そんなに驚く事かしら? この世界には、魔女なんて”有り触れている物”だと思うのだけれど……?」
すると、その黒魔女シーニからの言葉を聞いて、陽太は思わずハッとする―――。
「あ、そっか……。 確かに、此処は『異世界』みたいだから、魔女くらいは普通に居るのかな……? えっと、それで……一体、僕に何の用なんですか……?」
すると黒魔女シーニは、まるで”媚びる様な眼差し”で陽太に向かって助けを求めて来た―――。
「実は、その膨大なる魔力を持っている貴方の力を見込んで、私から貴方に心からの”頼み事”が有るのよ……」
「え、頼み事……ですか?」
「えぇ。 実は明日『アメリア魔法国』と言う国にて、世界中から名の知れた魔法使い達が一斉にやって来る《ウィザードフェスティバル》と言う名の”お祭り”が開催されるのだけれど、私はライバルとなる優秀な魔法使い達に差を付けて勝つ為にも、是非とも貴方の身体から直接、その膨大なる魔力を吸い取らせて欲しいのよ……?」
〈ま、魔力を吸い取る……だって? なんか不穏な響きだなぁ……〉
すると、その戸惑っている様子の陽太に対して、すかさず黒魔女シーニは陽太の手をギュッと握り締めながら優しい口調で安心させる為の言葉を発した。
「そんなに怯えなくても大丈夫よ。 ”一瞬で終わる事”よ……? だから……この私からのお願いを聞いてくれるかしら?」
シーニは、上目遣いで物欲しそうに陽太の顔を見詰め続けると、陽太は思わずたじろいでしまった―――。
「うぅ、そんなにお願いされちゃうと弱いなぁ〜……。 でも、僕から魔力を吸い取るって、本当にそんな事が出来るの……?」
「ふふっ。 えぇ、勿論出来るわよ? この私が手に持っている『至極色の魔石』を使えばね?」
「うわぁ〜っ! なんだか赤黒くて綺麗な石だなぁ〜っ!」
黒魔女シーニは、深い紫色に妖しく光り輝いている一つの”魔法石”を、何処からともなく取り出すと、それを陽太に向かって自慢気に見せ付けた―――。
「ふふふ。 良い色でしょう? 見てるだけで、何だか吸い込まれて仕舞いそうな……そんな”危険な色”……♡」
「えっと……それで、一体どうやってコレを使って僕から魔力を吸い取るんですか?」
「ん? そんなの、”簡単な事”よ? ほら、見ててね?」
「え? あ、はい……分かりました」
するとシーニは、背中に引っ掛けて有る魔法杖を左手で掴み取ると、そのまま先端の窪みに”至極色の魔石”をガチッと嵌め込んで、直ぐに陽太に向かいながら、とある魔法を唱え始めた―――。
〈な、何をするつもりなんだ……っ!?〉
「例えば、こんな風にするのよ? ほぉ~ら喰らいなさいっ! 【マジックサック・アップ】……ッ!」
「え、うわわぁ〜ッ!?」
すると、シーニからの詠唱を聞いた瞬間に陽太の体内から、膨大な量の魔力が次々とシーニの身体の中へと吸い取られてゆく―――!
「……んっ♡ 矢張り、思った通りの凄い量で……濃度の高い魔力……ッ! 流石は、《吸収魔法》のマジックサック・アップの効力ねっ♡」
「ちょ、【マジックサック・アップ】って! ただ単に、『魔法』と『吸い取る』って単語を”英語”にしただけじゃん……っ! と言うか、コレ本当に吸われてるの……? 僕自身には特に吸い取られてる感覚は無いんだけど……?」
「ふふっ、安心して? 貴方に自覚がなくとも、ちゃ〜んと、私の体内に大量の貴方の魔力が注ぎ込まれているから……。 だけれど、本当に貴方って人は、こんなにも凄まじい程の魔力を持っているだなんて……。 何だか、惚れ惚れしちゃうわね……っ♡」
「そ、そうなんですか……? えっと、それで一瞬で終わるって言ってましたけど、まだ終わらないんですかね……?」
陽太は照れ臭そうにシーニに向かって問い掛けると、シーニは喘ぎ声を発しながら恍惚とした表情を浮かべて返答する―――。
「あ、もう少しだけ、待ってて……っ♡ ん、凄い魔力の量……っ! こんなにも、沢山の魔力が私の体内に入って来ちゃうなんて……っ! あぁ〜んっ、このままだと私……”壊れちゃう”かも……っ♡」
「えぇッ!? いや、そんなワザとらしく喘がないで下さいってば……っ! なんだか、こっちまで恥ずかしくなっちゃいますよ……っ!」
陽太は顔を赤らめながらシーニに向かって慌てて注意すると、シーニは残念そうな表情で肩を竦めた―――。
「あらあら、お気に召さなかった? 折角、御礼の気持ちを込めて、”サービス”して上げたと言うのに……?」
「いや……まぁ、僕は別に嫌な気持ちはしないですけどもっ! だけど、なんか恥ずいんですよっ!」
「ふふっ、初心なのね。 さてと、そろそろこの辺りで良いかしらね……」
〈ふぅ……。 どうやら、やっと終わったみたいだな……〉
そして、漸く陽太から大量の魔力を吸収する事を終えたシーニは、目がトロン……っと虚ろになりながらも何とか平静を保っていた―――。
「あ、あれっ? だ、大丈夫ですかシーニさん……? 何だか、目が虚ろになっていますけど……」
「ふふっ、大丈夫よ。 途轍もない程の濃厚で膨大な魔力が、勢い良く私の体内に入って来たものだから、少しだけ身体が『拒否反応』を起こしていただけよ? これ位なら、直に慣れるわ」
「えっ、拒否反応って……!? さっきの『壊れちゃう』って発言って、僕を揶揄う為の冗談じゃなくて本心だったんですか……ッ!?」
「まぁ、あの発言は冗談半分って感じだったけど、今となっては、もうどうでも良い事よ。 それよりも、漸く私は凄まじい量の魔力を秘める魔女になれたわ……! ふふっ、これからも貴方の魔力を私の中に、”定期的”に注入させてね? 御願い……ね?」
興奮した様子の黒魔女シーニは、色っぽく吐息を漏らしながら陽太の事を誘惑する。
「……まぁ、別に僕自身には何とも無いから吸い取らせる事については良いんですけど……。 えっと、定期的にって事は、もしかして僕は、暫くの間シーニさんと一緒に行動を共にしなくちゃいけないって事ですか……?」
するとシーニは、困惑気味の陽太の上唇に人差し指を押し当てながら、陽太に問い掛けた。
「……あら? そんなに私と居るのが嫌なの……? 私の事、そんなに嫌いなのね……?」
「……えっ!? いやいや、嫌いだなんてそんな……ッ!? 嫌いな訳無いじゃないですか……ッ!?」
「じゃあ、"好き"なの?」
黒魔女シーニは、いたずらっぽく微笑みながら、陽太の事を揶揄った―――。
「え、好きっ!? え、えっ! え〜っとあの〜、僕はシーニさんと、出会ったばかりなので、そんな突然好きになるなんて……っ!?」
陽太は、突然の事にガチガチになりながら、片言で言葉を発すると、そのまま慌てて黒魔女シーニから目を背ける。
「あらあら、目を伏せちゃって可愛いのね? それじゃ、私と一緒に行動を共にするって事で良いわね?」
「え? あ、はい……良いですけど……」
「ふふっ、チョロいわね」
黒魔女シーニは、クスクスと妖艶に嗤った―――。
「えっと、何か言いました……?」
「いえ、別に何も。 それじゃあ、早速これから《アメリア魔法国》に行くから私に付いて来なさい。 えっと、今更聞く様だけど貴方の名前は……?」
「あっ、陽太です! 僕の名は、『加藤陽太』って言いますっ!」
「陽太ね? ふふっ、そのアメリア魔法国にて、《ウィザードフェスティバル》が開かれるのは明日だから、早速その下見に行きましょう」
「ウィザード……フェスティバル? って、なんですか?」
陽太は、首を傾げながらシーニに聞き返す。
「まだ理解出来ないの? さっき、貴方に説明して上げたじゃないの?」
「あぁ、そっか! 世界中から、名だたる魔法使い達が一斉に集まるって言う……?」
「なんだ、良く覚えてるじゃないの? それじゃあ、行くわよ『チョロい陽太』君〜?」
「……分かりましたよ。 チョロくて悪かったですね……っ!」
「ふふっ。 プクゥ〜って頬を膨らませちゃって可愛いのねぇ? まるで、”小動物”みたい……」
「もうっ! 小動物で悪かったですねっ!」
かくして、陽太は腹を立てながらも、黒魔女シーニと共に《アメリア魔法国》へと向かう事になったのだった……。
【現在位置】
【始まりの大地ストファー、ポラ平原】
【現在の日時】
【4月8日 9時27分 春】
【加藤陽太】
【状態】:怒り
【装備】:スクールブレザー
【道具】:無し
【スキル】:大魔道士
【思考】
1:全く……。
2:早速、行動の自由を奪われちゃいましたよ……。
3:まぁ、シーニさんは可愛いから、そこまで嫌じゃ無いですけどね!
【基本方針】:取り敢えず、黒魔女シーニと行動を共にする。
【黒魔女シーニ】
【状態】:歓喜 クラクラ
【装備】:黒のローブ 黒のトンガリ帽子 蒼の魔法杖
【道具】:深紅の魔石 至極色の魔石 漆黒の魔石
【スキル】:魔石生成
【思考】
1:うぅ……っ。 本当に凄い魔力……。
2:立ちくらみしちゃう……。
3:こんなの、初めて……っ♡
【基本方針】:もっと陽太からいっぱい魔力を貰う。アメリア魔法国で開催されるウィザードフェスティバルで優勝して、世界中に自分の名を轟かせたい。




