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思いの外上手くいかない理想の異世界生活!  作者: ミカル快斗
第二章 各々の方針が固まる二日目
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第五十八話 暗躍者アルマンドと暗殺者アドムンハ 〜佐藤琴子編〜


〜佐藤琴子の視点〜


――――果樹の迷宮、入口付近――――【現在時刻、9時35分】



 『魔王ベルファス』が、『暗躍者アルマンド』の魔の手に掛かり、呆気なく消滅させられた事に対して、人一倍"責任"を感じている琴子は、力無く地べたにへたり込んでいた……。


 「ベルファス……様……。 私の、所為で……。 ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……」


 瞳に光を無くした琴子は、ひたすら虚空に向かって謝り続けていた―――。


 そして、その様な悲痛な琴子の姿を見てて、とても居た堪れない気持ちになった『バルルーナ5世』が、琴子の身体を揺さぶりながら強気に声を掛けた。


 「しっかりして下さい! 琴子さんっ! 正気に戻って下さいよッ!」


 バルルーナ5世は、絶望している琴子の肩を力強く揺らしながら精一杯問い掛けるものの、琴子からの返答は一切無かった……。


 「うぅ……ッ。 琴子……さん……ッ」


 バルルーナ5世が瞼に涙を溜め込んでいると、事の発端である『アルマンド』が琴子達の顔を一瞥してから声を発した。


 「んじゃ、そろそろ移動するか……」


 悲壮感溢れる琴子達とは対照的に、無事に魔王の殺害を終えたアルマンドは、晴れやかな笑顔で颯爽とこの場から離れて行こうとする―――。


 然し、突如として”とある男”から呼び止められた。


 「おい、アンタ。 どっかに行く前に、俺と少しばかり話しをしてくれねぇか?」


 「ん、まだ俺に何か用か……?」


 この様な”非常事態”には元から慣れているのか、肝が据わっている様子の『アドムンハ』が、今この場から立ち去ろうとしている暗躍者アルマンドに向かって呼び止めると、アルマンドは足を止めながら問い掛けた……。


 「……貴様は確か、元夢幻旅団員の『殺し屋アドムンハ』だな? で、一体俺と何を話したいんだ?」


 「ふむ、そうだな……。 まぁ、その事については一旦、其処の《果樹の迷宮》の中に入って”二人切り”で話そうじゃねぇか。 この場には、”あの女”が居るからよ」


 と、アドムンハが親指を後ろに居る"琴子"に向けながらアルマンドにそう言うと、アルマンドは顔から生気が失われた表情をしている琴子の顔を見詰めながら納得したかの様に静かに頷いた―――。


 「あぁ、なるほどな。 確かに、さっきまで俺が”人質”に取っていた女の近くで呑気にも談話をし続けるってのは、流石の俺でも少々気が滅入っちまうからな……。 仕方ねぇ、確かに俺は一旦此処から離れるべきだな」


 「そう言う事だ。 じゃ、俺の後を付いて来てくれ。 あ、別に”罠”とかじゃねぇから安心しな?」


 「あぁ、分かった。 貴様の後を追えば良いんだな?」


 アドムンハの言葉に従って、彼の後を付いて行くアルマンドは、ゆっくりと琴子達の下から離れると、そのまま果樹の迷宮の中でアドムンハとの”密談”を行った……。


 そしてその一方で、呆然自失の琴子を慰めようと『バルルーナ5世』と『ナルル』と『バーバル』が奮闘し続けていた―――。


 「こ、琴子さん! ほらほら、僕の自慢の”変顔”を見て下さいね……っ! ほら、縦に伸び〜る、縦に伸び〜〜るぅッ!」


 「ギャハハ! サッスガ、バルルーナサマ! ギャグセンスガ、タカスギルッテ〜! ウガウガ!」


 然し、琴子はバルルーナ5世”お得意の変顔”を見てもなお、ピクリとも眉一つ動かさず、ずっと遥か虚空を見詰め続けながら謝っていた……。


 「……………ベルファス……………様……………ごめん…………なさい……………」


 「コトコ……。 ワラッテクレナイ……。 ウガウガ……」


 その哀れな琴子の姿を見て、バルルーナ5世は思わず心情を吐露する……。


 「琴子さん……。 僕は、一体どうすれば良かったんでしょうかね……? 魔王ベルファスさんを助ける事も出来ずに、おまけに憔悴しきった女の子の事すら上手く慰める事も出来無い……。 こんな僕が……ッ! バルルーナ王国の皆と、それだけでは無く、魔族の皆さんに……ッ。 顔向け出来るんですかね……っ?」


 バルルーナ5世が、上擦った声を上げながら顔を伏せると、直ぐ様ナルルとバーバルがフォローを入れる。


 「オイオイ、バルルーナサママデ! オチコンデドウスンダ? ウガウガ〜ッ!」


 「バルルーナサマ……? フガフガ……、ゲンキダシテクダサイ……。 ボルダホ……?」


 二人の言葉を聞いた途端に、ハッとした顔を浮かべたバルルーナ5世は慌てて涙を袖で拭った―――。


 「あぁ、気を遣わせてしまい申し訳御座いません……。 ナルル、バーバル……。 そうですよね。 僕が落ち込んでいる場合じゃないですよね……。 今は取り敢えず、精一杯琴子さんの事を励まして差し上げないと……ッ!」


 「イイゾ、イイゾ〜ッ! ソノイキダ、バルルーナサマ〜ッ! ウガウガ!」


 決意が漲ったバルルーナ5世は再びやる気を取り戻すと、我を忘れながら精一杯琴子の事を励まし続けるのだった―――。


 そして一方その頃、密談を行っているアドムンハとアルマンドの様子はと言うと……。



――――果樹の迷宮、内部――――【現在時刻、9時41分】


〜暗躍者アルマンドの視点〜



 「おい、アルマンド。 お前達の”最終目標”とは、確か”魔族の殲滅”だったよな? そこで一つ相談なんだが、この俺も魔族を殺す事に関して協力してやっても良いぜぇ?」


 「ほぅ? それで、一体何を要求するつもりで?」


 「あぁ、ここからが”交渉”の話なんだが……。 俺がお前達に協力してやる代わりに、何処かで危機に瀕している《バルルーナ族》の事を見掛けたら、何も言わずに助けてやって欲しいんだ。 まっ、要するに”バルルーナ族を傷付けるな”って言った話だ……」


 「……なるほど。 詰まり、魔族を狩る事の手伝いをしてやるから、代わりに貴様と同種族であるバルルーナ族の事は殺さないでくれって事だな?」


 「あぁ、そうだ。 勿論断わってくれても全然構わない。 ただ、その場合には俺は魔族を殺す事に関しては、一切手伝わねぇがな?」


 「ふむ、どうしたものかねぇ……」


 アルマンドは、顎に手を当てながら長考した……。


 この話に乗るべきか、断るべきか……。


 無論、自身は魔族を抹殺する事が目的なので、シンプルに人手が増える事は喜ばしい事なのだが、果たして《元夢幻旅団員》と言った肩書きが有るこのアドムンハの一言一句を、完全に信頼出来るのかと問われたのなら、答えは”否”だった……。


 そもそもそれ以前に、本来なら魔族と仲が良いと言う事で有名なバルルーナ族であるアドムンハが、本当に心の底から《魔族抹殺連盟》の手助けをしてくれるのかどうかさえ、甚だ疑問であった……。


 すると、思考に時間を費やしているアルマンドに向かって、アドムンハが急かし出す。


 「おい、一体何時まで悩んでんだ? さっさと決断しろよ?」


 すると、急かされたアルマンドは、舌打ちをしながら返答した―――。


 「チッ、仕方ねぇ。 この際だ、一先ずは貴様の言う事に乗ってやろう。 だが、もし貴様が魔族の事を殺さずに見逃していると知った日には、これからは魔族だけでは無くバルルーナ族でさえも”抹殺の対象”にさせて貰う事になるが、それでも良いか?」


 「あぁ、良いよ。 って事で、”交渉成立”だな? お互い頑張ろうぜアルマンドォ〜?」


 すると、突如としてアドムンハが陽気な口調で握手を求めて来た……。


 不審に思いながらアルマンドは仕方なく握手に応じると、アルマンドは握手をしながら小声でアドムンハに耳打ちして確認を取った―――。


 「本当に魔族を殺してくれるんだろうな……? バルルーナ族と魔族は仲が良かった筈なんだが……?」


 アルマンドから魔族との関係性を問われたアドムンハは、冷たい口調で返答する。


 「あ? 俺は別に魔族の事なんか、心底どうでも良いからなぁ……。 俺にとっての魔族ってのは、居ても居なくても変わらねぇモンだしな。 あ、ついでに”友好の証”として、お前にこの『暗殺用の細い針』を”500本”渡しておくから上手く活用してくれよな?」


 「……そうか。 有り難く貰っておく。 では頼んだぞアドムンハ」


 暗躍者アルマンドは、友好の証と称してアドムンハから束で手渡された細い針を袖の中に忍び込ませると、そのまま何時でも取り出せる様な形で”10本の針”を袖の内側に装着した。


 〈なるほど、思い掛けず”便利な物”を貰ったな……〉


 すると、装着をし終えたアルマンドに向かって、アドムンハが何事も無かったかの様な軽い口調で声を発した。


 「んじゃ、もう行っていいぜ? お前も今直ぐにこの場から離れてぇだろ?」


 「……はぁ。 俺は貴様の思考が全く読めないが、まぁ良いだろう。 それでは、さらばだ……」


 暗躍者アルマンドは、そう言い残すと足早に果樹の迷宮から出て行った。


 そして、アルマンドが去ってから数分経った後に、一人で果樹の迷宮内に残っていたアドムンハが、ニヤリと顔を歪めながら”独り言”を呟いた―――。


 「……この世界には、《バルルーナ族》以外の種族なんて"必要ねぇ"んだよ。 暗躍者アルマンドとか言ったか? お前の事も、何れ俺がこの手で葬ってやるよ……。 お前が憎しみを抱き続けている魔族共と一緒にな……。 フッ、フハハハハッッッ」


 そのアドムンハによる悪意に満ちた笑い声は、果樹の迷宮内で人知れず反響してゆくのだった―――。



【現在位置】

【果樹の迷宮、入口付近】


【現在の日時】

【4月8日 9時47分 春】



【佐藤琴子】

【状態】:呆然自失

【装備】:眼鏡 学校の制服

【道具】:無し

【スキル】:無し

【思考】

1:……。

2:………。

3:…………。

【基本方針】:虚無



【バルルーナ5世】

【状態】:必死

【装備】:英雄の王冠 英雄のマント 英雄の槍

【道具】:回復瓶2個 解毒瓶2個 回復薬DX3個

【スキル】:バルルーナ王族の魂

【思考】

1:ほ〜ら、びよ〜ん、びよ〜〜っん!

2:縦だけじゃなくて横にも伸びますよ〜っ!

3:そ〜れ、びよ〜ん、びよ〜〜ッん!!

【基本方針】:精一杯、琴子の事を励ます。



【ナルル】

【状態】:悩み

【装備】:騎士団長の服一式 断罪の槍

【道具】:戦闘力の実 瞬発力の実 持久力の実 防御力の実 各2個

【スキル】:騎士団長の誇り

【思考】

1:コンナコトニナッタノモ……フガフガ……。

2:"マゾク"ノセイダヨナ……ボルダホ……?

3:モウ、マゾクヲ……フガフガ……ウラギッテモ……イイノデハ……ボルダホ……?

【基本方針】:魔族を見放すか悩む。仲間を護る。



【バーバル】

【状態】:応援

【装備】:応援団長のハチマキ 応援団長の服 白い軍手

【道具】:石化玉 凍結玉 怯え玉 混乱玉 催眠玉 ホイッスル 各1個

【スキル】:大応援

【思考】

1:ガンバレ、ガンバレ!

2:バルルーナサマ、ガンバレーッ!

3:コトコモ、ガンバレヨーッ! ウガウガ!

【基本方針】:琴子とバルルーナ5世を応援する。



【果樹の迷宮内部】



【アドムンハ】

【状態】:冷静

【装備】:特殊機密暗殺部隊隊長の戦闘服 サイレンサー銃

【道具】:弾薬1000発分 細い針500本 太い針500本

【スキル】:絶対冷静

【思考】

1:魔王ベルファスが死んだからには、もう今の魔族に”利用価値”はねぇな……。

2:最早、魔族と絡むメリットも一切無くなっちまった事だし、これで魔族の事を気に掛ける必要もねぇや。

3:さてと、これからは魔族だとしても容赦無く殺す事が出来るな。

【基本方針】:バルルーナ様を護る。魔族を殺す。バルルーナ様の脅威になり得る者は速やかに殺す。イズれ魔族抹殺連盟を滅ぼす。



【果樹の迷宮周辺】



【暗躍者アルマンド】

【状態】:冷静

【装備】:黒と赤の陽炎の服一式 細い針10本

【道具】:細い針490本

【スキル】:完全無力

【思考】

1:どうやら、アドムンハは本気で魔族を殺してくれるらしいな……。

2:ふふっ、頼もしい助っ人が加入したな……。

3:魔族の根絶まで、後少しだ……。

【基本方針】:魔族を抹殺する。新たに魔王になった『アモン』を見付け出して今の内に殺しておく。

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