第四十二話 ロスル・ル・ナータ 〜悪魔アモン編〜
〜悪魔アモンの視点〜
――――楽園の大地エクラン、ビュルクナー平原――――【現在時刻、16時34分】
楽園の密林内に居る『魔王ベルファス』に、《魔族抹殺連盟》の二人組を倒した事の連絡を入れ終えた『悪魔アモン』は、『ドルネイン』と共に世間から”安全な街”と謳われている街ルタイアへと向かっていた。
「おい、アモン? ルタイアって言う街の方向は、この先で合ってんだよなぁ?」
「えぇ、そうですよドルネインさん! このまま真っ直ぐ進んで行けば、何れ街ルタイアに辿り着きますよっ!」
「おぉ、それなら良かったぜ! んじゃ、アモン! ほら、俺の背中の上に乗れっ! 俺が、お前をおぶって、そのまま全速力のダッシュを決めて、一瞬にして街ルタイアに辿り着いてやっかんなっ!」
ドルネインはそう言うと、その場に屈みながら、アモンの方を見る。
「えぇっ!? そんな、悪いですよドルネインさ〜ん……っ!」
「そんな遠慮しなくても良いぜアモンッ! まだ、この辺りに《魔族抹殺連盟》の奴等が徘徊してるかも知んねぇんだぜぇッ!? だからバレねぇ内に、さっさとルタイアって街の中に避難するべきだろうがッ!」
「わ、分かりましたよ〜! ……あの〜……余り激しく動かないで安全に走って下さいね……?」
「おうッ! 任せとけや!」
〈うぅ〜、ドルネインさんの事を疑う訳じゃ無いけど、何だか心配だなぁ〜……〉
一抹の不安を抱えつつアモンは、目の前で屈んでいるドルネインの背中にピタッと身を寄せて、立ち上がるドルネインの背中からズリ落ちない様に、ドルネインの両肩にそっと手を置いた。
「よーし! おっとアモン! そんな”生易しい掴まり方”じゃ直ぐに落っこちまうぞ! もっとガシッと掴まれ!」
「え!? ……まさか、乱暴に走る気では無いですよね……!?」
「うっせー! 乱暴に走るに決まってんだろが!! ほーら、行くぞーーーッッッ!!!」
「ちょ、待って下さい! 僕は、そう言う感じの激しい動きは怖くて苦手なんですってばっ! だから、今すぐに降ろして下さいよ! ちょっと、聞いてるんですかっ! ドルネインさ――――」
ドンッ!
と、あたふたとアモンが喋ってる最中に、ドルネインは地面を力強く蹴ると、そのまま猛スピードで大地を駆け出した!
〈うわわわわッ!? ド、ドルネインさんって、こんなにも足が速かったの……ッ!?〉
まるで”暴走機関車”が如くスピードで、街ルタイアに向かっていると、やがて遠くの方に薄っすらと街らしき物陰が見え始めた為、ドルネインは更にスピードを上げて一直線に向かってゆく!
「ちょ、ちょ……ちょッ!? 待って下さいってばッ! 速過ぎる……ですってばぁ〜ッ! うぐっ……振動が、あり過ぎて……上手く……喋れ、ないッ!」
ガタガタと激しく揺れる安定感の無い走りをしているドルネインに対してアモンが文句を垂れていると、ドルネインが慌てて注意を入れる。
「オイオイ! 俺が猛ダッシュで走ってる最中は、口を開けてると舌噛むかも知んねぇから余り喋らねぇ方が良いぜッ! まっ俺は、このスピードに慣れてっから、走りながら喋っても舌を噛む確率は精々『30%』程だけどなぁ〜ッ!」
〈え、30%って割と高くない!?〉
と、アモンは自身が舌を噛む危険性が有る為、心の中で人知れずツッコミを入れた……。
そして、ドルネインの猛ダッシュの御蔭か、特に他の魔族抹殺連盟の面々と出会う事無く、なんとか無事に街ルタイアにへと二人は辿り着いた。
「おっし、この街がルタイアだなッ! うしっ、無事到着だぜぇ〜ッ!! おい、アモン! 着いたぜッ!」
アモンは、クラクラと回る頭を押さえながら、ゆっくりとドルネインの背中から降りる…。
「うぅ……。 クラクラ目が回ってるし、その上めっちゃ疲れた……」
アモンが”グロッキー状態”になっていると、そんな状態のアモンに対して、ドルネインが元気付ける為に陽気な口調で声を掛けた。
「おらッ! 元気だせよ〜! 早く、この街の奴等にお前達”魔族の安全性”とやらを説明すんだろッ!? さっき、お前から聞いた魔王ベルファスからの情報によると、この街の住民達は優しいって事だから、ちょっとでも”同情心”を擽ってやる様な事を言ってやりゃあ、イチコロだぜぇッ!」
〈全く、誰の所為で僕がこんな事になっていると思ってるんだか……。 はぁ……〉
アモンは溜息を吐きながらも、ドルネインに向かって御礼の言葉を贈った。
「……うん。 まぁ確かに、ドルネインさんの言う通りですよね。 僕は、こんな事で疲れ切ってる場合じゃありませんよね……っ! 僕は、魔族の皆の為にも、精一杯人間たちを説得しなければ……っ!」
ドルネインの言葉を聞いて、再び心の中で闘志が宿ったアモンは、意気揚々と街ルタイアの中にへと入ってゆく。
「おうッ! やっと、元気が出たみてーだなッ! んじゃ、さっさと街の奴等の説得に取り掛かんぞッ!」
「はいっ! 御蔭で目が覚めましたよ、ドルネインさんっ!」
――――街ルタイア――――【現在時刻、16時47分】
街ルタイアにやって来た二人は手始めに、道行く人達の顔を見回しながら自分達の話を聞いてくれそうな人を探していると、早速一人の真面目そうな雰囲気を纏っている”騎士の男”を見付けた。
「あっ! ドルネインさん! 先ずは、優しそうなあの人に話し掛けませんかっ!? それに、なんか見た目からして格好良いですしっ!」
鼻息混じりに騎士の男に向かって指を向けているアモンに対して、バツの悪そうなドルネインは咄嗟に止めに入る。
「……いや待て、アイツは止めとけ……。 アイツは《英傑旅団》の一員だな……。 そもそも、この街の人間じゃねぇ……」
「……えっ? でも英傑旅団って確か、良い人たちの集団じゃ無いんですか……? 寧ろ、僕にとっては”好都合”なんですけど……」
アモンがそう言うと、ドルネインは頭を掻きながら面倒臭そうに話す。
「そりゃあ、お前にとってはそうだろうがよぉ……? 一応俺は、犯罪集団である《夢幻旅団》の一員だから、英傑旅団の奴等と顔を合わせる訳にはいかねぇんだよなぁ〜……。 だから、お前が一人でアイツに話し掛けろ」
「そっか……。 なるほど、分かりましたっ! それじゃ、あの人の事は僕に任せて下さいねっ!」
アモンは、胸を張りながら自信満々に返答する。
「あぁ……。 そうして貰うと助かるぜ……。 んじゃあ、一応俺も別の奴を説得しに行くからな……? まっ、取り敢えず一人でも頑張れよ! アモンッ!」
「はいっ! ドルネインさんも、どうか気を付けて……!」
ドルネインは、英傑旅団員の目から少しでも離れる為に、駆け足で酒場の中に入って行った。
そして、酒場に入っていくドルネインの後ろ姿を見送ったアモンは、早速その英傑旅団員の下へと向かって行くと、そのまま元気良く話し掛けた。
「あ、あのーっ! はじめましてっ! あの、実はですねっ! 貴方に"お伝えしたい事"がありまして……っ!」
後ろから聞こえて来るアモンの声に気が付いた英傑旅団の男は、振り返りながらニコッと笑顔を浮かべながら反応した。
「……おや? やぁ、はじめまして。 どうしたんだい坊や? 僕に伝えたい事って、何かな?」
英傑旅団の騎士の男は、優しい口調でアモンに語り掛けた。
〈良かった! やっぱり、良い人っぽいよこの人!〉
安堵したアモンは、神妙な面持ちで声を発する。
「えっと、ですねっ! 勿論、貴方は”魔族”の事は知っていますよね……?」
「あ、あぁ……。 そりゃあ、僕でも流石に魔族の事は知ってるけど、もしやその魔族が何か”問題”を起こしたのかい?」
「いえ、それが”まるっきり逆”だったんですよっ! 実は、魔族と言う種族は皆さんが思ってるよりも、ずっと優しい種族だったのですっ!」
「なっ、なんですって……!?」
アモンは、必死の形相で英傑旅団員に向かって、心の底から魔族が安全な種族だと言う事を訴え掛けた……!
すると、そのアモンの言葉を聞いた騎士の男の目の中に、徐々に涙が溜まってゆくことにアモンは気付く……。
「な、何と言う事だ……ッ」
「……え!? な、何で泣いてるんですか……!?」
アモンが驚愕しながら、慌てて問い掛けると、その英傑旅団の騎士の男は、懐から”一枚の白いハンカチ”を取り出すと、涙を拭きながらアモンに向かって涙ぐんだ理由を教えた。
「いやー、ごめんごめんっ! まさか、”僕と同じ考えをしている人が居たんだ”って思ってね……! だって、僕もずっと前から魔族はとても優しい種族だって事を、みんなに向かって訴え掛けてたんだけど、まるで聞く耳を持ってくれなくてね……?」
「そ、そうだったんですか!?」
「うん。 だから、君みたいな優しい子と出会って、ついつい感極まっちゃって……。 それで涙ぐんじゃったんだよね……」
その英傑旅団員の言葉を聞いたアモンは、途端に心を躍らせる。
そして、アモンは英傑旅団員に対して、どう言った経緯で魔族が優しい種族だと知ったのかを尋ねた。
「……所で、一体何故……魔族が優しい種族だと分かったのですか……? その事を知る何かしらの”切っ掛け”があったんじゃないでしょうか……?」
すると、そのアモンからの質問に対して英傑旅団員は快く丁寧な口調で答えてくれた……。
「そうだね……。 少し長くなるけど良いかな?」
「はいっ! 勿論、良いですともっ! 是非とも聞かせて下さいっ!」
「うん、分かった。 えっと実は、僕には『妹』がいるんだけどね……? その妹がまだ幼い頃に、僕が剣技を覚えたてで、"とある森"でもっと強くなる為に必死に剣技を磨いてる最中に、その妹がどうやら僕の後をこっそりと尾いて来ていたみたいでね……?」
「なるほど……? そ、それでどうなったんですか……?」
「確かその時、僕は慌てて尾いて来た妹を問い詰めたんだよ。 一体どうやって、この危険な森の中を誰にも襲われずにこの場に迄、辿り着く事が出来たんだい!? ってね……」
「うんうん……。 それで、それでっ!?」
アモンは、興味津々に騎士の男の話に聞き入る。
そして、騎士の男は暫しの沈黙の後に続きを話し出す。
「……するとね? 妹は後ろを指差しながら、こう答えたんだよ……。 『この可愛らしい”物体”が私を守護ってくれたんだよ〜』ってね……?」
「えっ!? その可愛らしい物体って何なんですか……っ!」
「それがね? 僕は、妹の指差した方を見ると其処には、可愛らしい姿をした”一人の子供の悪魔”が居たんだ」
〈そっか、その魔族の子供が妹さんの事を人知れず護ってくれてたんだね……っ!〉
「……その頃の僕は、悪魔と言う存在は”本の中”でしか見た事がなくて、しかもその本の影響で悪魔の事をとても怖くて恐ろしい存在としか思っていなかったんだけど……。 でも、その悪魔は僕が知っていた悪魔とは全く違かったんだよ……」
すると、その"本の影響"という言葉を聞いたアモンは、途端に怒りを顕にする。
「まったく、この世界に有る古文書は全てが、まるっきり"出鱈目"何ですよっ! 特に、魔族に対する脚色が酷いんですよねぇ〜っ! あぁ〜、思い出したら腹立って来ちゃったぁ〜ッ!」
そんな、御立腹な様子のアモンの事を宥めながら、騎士の男は昔話を再開させる。
「落ち着いて……っ! 僕も、その本に書いてあった事は"嘘"だと思うよ。 それで話を戻すけど、その子供の悪魔はとても優しい瞳で僕達の事をジ〜ッと眺めていたんだよ……」
「優しい瞳……ですか」
「うん。 そしてその、つぶらな瞳を見た瞬間、僕は悪魔に対してとんでもない”勘違い”をしていたって事を理解したんだよ……。 そうか、悪魔って僕が思っているほど全然悪い生き物じゃ無いんだって事をね……!」
すると、その言葉を聞いたアモンは声を高らかに胸を張り上げた。
「そりゃそうですともっ! ”僕達魔族”は、困っている人や助けを求めている人を見掛けたら放って置けない性分ですからね……っ! だから、その悪魔の優しい行動は偶然なんかじゃなくて必然なんですよっ!」
「……え? 僕達……魔族だって……ッ!?」
「あっ!? しまったっ!」
アモンは、ついうっかり口を滑らし、自分が魔族だと言う事をバラして仕舞うと、慌てて口を両手で塞いだ。
然し、英傑旅団の騎士の男は、そんなアモンに対して特に追求して来なかった。
「ふふっ。 そんな警戒しないで下さいよ。 僕は、魔族の事は信頼してるからね。 それに、君がさっき言ってくれた『魔族は、困っている人や助けを求めている人を見掛けたら放って置けない性分』と言う言葉に嘘偽りは無い筈ですからね!」
「あ、あはは……。 ま、まぁ……納得してくれたなら良かった……かな?」
アモンは心臓をバクバクと鳴らしながら、心の底から安堵した。
「あっ! そう言えば、まだ互いに”自己紹介”をしていなかったね! 僕の名は、『ロスル・ル・ナータ』だよっ! 気軽にロスルって呼んでねっ! 英傑旅団内では《団員No.7》の称号を持ってるよっ!」
「は、はいっ! ロスルさんですね? えっと、僕の名はアモンですっ! これから、宜しくお願いしますねっ!」
かくして、悪魔アモンは《強力な助っ人》と出会う事に成功し、心の中でガッツポーズを決めるのであった。
【現在位置】
【街ルタイア】
【現在の日時】
【4月7日 17時9分 春】
【脱獄犯ドルネイン】
【状態】:焦り
【装備】:黒色と黄色のシマシマ模様の囚人服
【道具】:無し
【スキル】:渾身の鉄拳
【思考】
1:ふぃ〜、危ねぇ〜危ねぇ〜っ!
2:危うく、英傑旅団に俺の存在がバレる所だったぜ……ッ!
3:流石に、この街で騒ぎになるのは不味いからなぁ……。
【基本方針】:街の皆に、この囚人服はコスプレだと言い張る。英傑旅団に見付からない様に行動する。魔族と人間とその他の種族との関係性を修復する。
※一旦、アモンと別行動を取りました。
【悪魔アモン】
【状態】:嬉しい
【装備】:人間の変装服
【道具】:拘束縄
【スキル】:魔王様へのテレパシー
【思考】
1:ロスルさん……いい人だなぁ〜……。
2:でも、ドルネインさんとは敵対してるみたいだし……。
3:どうしようかなぁ……。
【基本方針】:魔王様の言う事は絶対厳守。ドルネインを監視する。魔族の安全性をみんなに伝える。
※一旦、ドルネインと別行動を取りました。
【ロスル・ル・ナータ】
【状態】:感激
【装備】:英傑旅団の団員服 英傑の剣と盾 大き目の袋
【道具】:金貨50枚 銀貨50枚 銅貨50枚 白のハンカチ
【スキル】晴れ渡る天空【効果】:どんなに天候が悪い時でも、剣を天に向かって翳す事で、やがて雲間から陽が射して、途端に空が晴れ渡り綺麗な青空が広がり出す。
【思考】
1:よし! もっと色んな人に魔族が安全だと言う事を教えなきゃ!
2:妹の『ムニル』も昔から魔族と仲が良かったし!
3:どうやら、僕達の家系は魔族の優しさを皆に知らせる為に存在しているのかも知れないなっ!
【基本方針】:困っている人を助ける。魔族の安全性を皆に教える。犯罪者は更生している様なら一応捕まえない様にしとく。
※ロスルはムニルの実の兄です。




