第三十二話 犯罪取締連盟 〜竜胆園鯛造編〜
〜竜胆園鯛造の視点〜
――――街デイルン――――【現在時刻、14時48分】
ネリアスの墓参りを済ませた鯛造とアビウスの二人は、教会ノイリの地下墓地にて起きていた”惨状”を誰かに知らせる為にも、教会ノイリから近くに在る《街デイルン》へと赴いていた。
〈此処が、街デイルンですな……。 さてと、早速誰かに教会ノイリでの出来事を知らせなくては……!〉
「はぁ……はぁ……やっと、着いたぞ……っ! 此処が、街デイルンだ……」
すると、アビウスが酷く疲労している事に気が付いた鯛造が、心配そうな顔を浮かべながらアビウスの背中を優しく摩った。
「おや? アビウスさん、大丈夫ですかな……? とても辛そうに息を切らしている様子ですが……」
「いえいえ、何のこれしき……大した事では有りませぬ……。 我に構わず、早く行きましょう鯛造さん……」
「ふむ、アビウスさんがそう言うので有れば、承知致しましたぞ……」
そしてアビウスと鯛造は、この街の何処かに自分達の話を聞いてくれそうな人は居ないかと捜していると、やがて《英傑旅団》の団員服を着ている一人の団員の男を見付けた。
〈あ……っ! あれは、英傑旅団の団員さんですなぁ……っ! ほっ、良かった……! 彼なら、きっと話を聞いてくれる筈ですな……!〉
鯛造は、ホッとした様子を英傑旅団員の下へと駆け寄った。
すると、此方に駆け寄って来る鯛造とアビウスの姿を目視した英傑旅団員の男が、笑みを浮かべながら二人に向かって呼び掛けた。
「おや? お二人さん。 そんなに慌てて、何か有ったのですか?」
すると、その英傑旅団の団員の呼び掛けに対して、鯛造は神妙な面持ちで返答する。
「……団員さん、心して聞いて下さい……。 実は、ノイリと言う名の教会にて、神父とシスターが殺害されると言う残忍なる事件が起こって仕舞ったのです……」
すると、その鯛造からの話を聞いた英傑旅団の団員は驚きの顔を浮かべながら、慌てて鯛造に聞き返した。
「な、なんですって!? ま、まさか教会ノイリと言う”神聖なる場所”でその様な出来事が……!? そ、それで貴方は犯人の姿を見たのですかッ!?」
その問い掛けを聞いた鯛造は、ゆっくりと頷く。
「えぇ、確かにこの目で見ましたぞ……。 そして犯人は、《墓荒らし》の通り名を持つ『ギョン』と言う男で間違い無いですぞ……。 そして、更にその犯行動機は何処かの国に依頼されたとかで……」
鯛造は、自身が知り得る情報の全てを英傑旅団員に伝えると、その話を聞いた英傑旅団員は頭を抱える……。
「何という事だ……。 そんなにも恐ろしい事が起きていたとは……。 いやはや、危険を顧みる事なく、一早く情報提供して下さった、貴方のその勇気ある行動に敬意を表しますッ!」
英傑旅団の団員の男は、敬礼をしながら鯛造に向かって御礼の言葉を贈った。
「いえいえ、礼には及びません。 それよりも、今直ぐにその事件現場となった教会ノイリの方に迄、来て頂けませんか……?」
「なるほど。 事件現場へですね……? 私も、是非ともソチラへと向かいたいのは山々なのですが……。 実は、この街デイルンでも立て続けに”事件”が起こっていまして、私はその事件を対処している最中なのですよ……」
すると、この街にも事件が起きていた事を知らされた鯛造は、顎に手を当てながら聞き返した。
「……ほぉ? 立て続けに事件ですって? この街で今まさに、他の事件が起きていたのですね?」
「えぇ……。 つい先程、数時間程前にこの街で”強盗事件”が有ったらしく、今私達はその事件の捜査を担当しているのですよ……」
と、この話を聞いた鯛造は考え込んだ。
〈成程。 取り敢えず教会ノイリでの出来事は、この者に無事に伝える事が出来たが……〉
〈どうやら、まだ私達にも”やるべき事”が有るのかも知れぬなぁ……。 おっと、念の為にも、この者とも自己紹介を行わねば……〉
そう決めた鯛造は、英傑旅団の団員に向かって自己紹介を始めた。
「なるほど、そうでしたか……。 あ、申し遅れました……私の名は『竜胆園鯛造』と申します……。 そして、隣に居るこの者は……」
「我は『アビウス』と申す……」
すると、その鯛造とアビウスと言う名前を聞いた英傑旅団員の男が、ハッとした顔を浮かべながら慌てて聞き返した。
「んん? ……鯛造……アビウス……だって? ハッ!? も、もしかして、貴方達は……?」
「む、なんですかな?」
英傑旅団の団員の男は、目を丸くしながら慌てた様子で二人に対して問い掛けた。
「御二人って、もしや……『サヨコ先輩』と『ジルバー先輩』の御知り合いの方ですか……?」
すると、サヨコとジルバーと言う聞き馴染みの有る名前を聞いた鯛造とアビウスも、同じく目を丸くしながら聞き返した。
〈なにッ!? ジルバーさんに、サヨコさんだとッ!?〉
「それは、本当かっ! た、確かに、二人が無事に英傑旅団に入ったと言う情報は仕入れていたが、まさか……この場面で”繋がる”とは……! それで、その二人は今何処に……!?」
馴染み深い名前を聞いたアビウスと鯛造は、決死の表情になりながら、勢い良く英傑旅団の団員に詰め寄った。
「おぉッ! 御二人の、その”反応”っ! や、矢張り、御二人は先輩達が話していた人達だと言う事ですね……っ! えっと、そうですね……。 今、先輩方は”此処の周辺をパトロール中”ですので近くに居るとは思うのですが……。 然し、現在の位置は私には把握しかねています……。 すみません……っ!」
「いえいえ、どうも御丁寧に……。 おっと、所で貴方の御名前も聞いても宜しいでしょうか……?」
「あ! 申し遅れました……っ! 私の名前は『ギルム』と申します……! 《英傑団員No.29番》の新米です……!」
「ほぉ、ギルムとは中々に、格好良い御名前ですなぁ……!」
すると、鯛造から名前の事を褒められたギルムは、照れ臭そうに頭を摩る。
「えへへっ、有り難う御座いますっ! よしっ! それでは、先程の貴方から頂いた教会ノイリで起きた事件の報告を、『犯罪取締連盟』の方に迄、私の方から連絡致しますので、少々お待ち下さいね……っ!」
〈犯罪取締連盟……。 この世界に置ける”警察”の役割を担っている集団ですなぁ……〉
そしてギルムは、犯罪取締連盟に向かって、これまでの出来事を自身のスキル【犯罪取締連盟瞬間報告】を介して瞬時に報告する。
「ギルムさん? さっきから独り言の様に話していましたが……?」
「あ、すみません! 実は私のスキル【犯罪取締連盟瞬間報告】を発動して、犯罪取締連盟の皆さんに今迄の出来事の全てを連絡していたんですよっ! もう暫くすると、この場に応援に駆け付けて来てくれる筈ですから、安全の為にも此処で貴方達も少しの間待っていて下さいねっ!」
「ふむ、左様ですか……。 それなら仕方無いですね、アビウスさんも異論は無いですね?」
「えぇ、勿論。 それに下手に移動するよりも、この場に居た方が、さらなる情報を得られそうだしな……」
と言う訳で、アビウスと鯛造はギルムに言われた通りに犯罪取締連盟の応援が駆け付けて来るのを、ひたすら待ち続ける事にした。
すると10分程の時間を掛けて、やがて遠くの方で”とある人物の声”が聴こえ始めた。
「おーい! すまん、すまんっ! かなり待たせちまったな〜! おいギルム、事件が起こった街は此処で合ってるかッ!?」
「『探偵ジンラ』さん……! はい! そうです!」
〈探偵……? 何やら、面白そうな人がやって来ましたなぁ……〉
サングラスを掛けている小太りの男こと探偵ジンラがギルムに向かって手を振りながら話し掛けていた。
そして、その茶色いコートを着ている小太りの男に対して、鯛造が興味深そうに話し掛けた。
「ほぉ~、どうやら貴方が犯罪取締連盟の方の様ですなぁ〜……! それなら、早く教会ノイリの方へと急ぎましょうぞ……!」
すると、逸る気持ちを抑えられない鯛造に対して探偵ジンラが冷静な口調で言葉を返した。
「いや、その教会ノイリの方には、もうとっくに腕っ節が強い奴等を派遣させているから、貴方達は安全のためにも此処で待っているんだ……。 直ぐ近くに、犯人である『墓荒らしギョン』が潜んで居る可能性が有る限り、目撃者である貴方達はこの街に残っている方が安全だからな……」
「ほぉ、確かにそうですな。 だが然し、そもそもこの街には”強盗犯”がまだ潜んで居る可能性も――――」
と、鯛造が言い終わるよりも先に、ジンラが言葉を遮りながら話し出した。
「安心しろ! この街には、もう強盗犯が居ないと言う事は俺のスキル【悪意感知推理】によって、既に判明している……! だから、後はこの街で聞き込みをして逃げて行ったであろう怪しい人物の詳しい情報を聞くだけだ……ッ!」
「成程……。 そのスキルの御蔭で、この街にはもう強盗犯の脅威は無いと言う事を知っていた訳ですな? 承知致しました……。 それでは、教会ノイリでの後処理は犯罪取締連盟の方々にお任せ致しますぞ……」
〈さてと……。 それでは私達は、今日の所はこの街の宿にでも泊まる事と致しましょうかねぇ……?〉
すると、蚊帳の外に成りつつ有るアビウスが、ジンラに対して真剣な眼差しを向けながら呼び掛けた。
「なぁ、ジンラよ……。 我等にも、何か役に立てる事が有るか……?」
すると、そのアビウスの問い掛けに探偵ジンラが首を傾げながら答えた。
「ん? 何を言ってるのですか、貴方達はとっくに役に立っているんだぞ? 教会ノイリでの事件を一早くギルムに知らせてくれただけじゃなく、犯人の正体とその動機までも教えてくれた事だけでも、充分貢献しているんだぞ……! だから、後の事は全面的に俺達に任せておけっ!」
探偵ジンラは、自身の胸をドンッと叩きながら、誇らしげに笑みを浮かべた。
「だ、そうですよアビウスさん?」
「そうだな……。 ちゃんと、我等も役に立てていたのだな……!」
すると、機嫌を取り戻したアビウスと隣に居る鯛造に対して、ギルムが宿泊施設の場所にまで案内してくれる様だ。
「それでは、鯛造さんにアビウスさん。 現在、私達《英傑旅団》が宿泊している宿屋にへと御案内致しますね。 墓荒らしギョンや、その仲間の犯罪者達がいつ何処で目撃者の貴方達を襲って来るのか分かりませんからね……」
「成程。 確かに、唯一の目撃者である私達を、一体どのタイミングで始末して来るのかが解りませんからなぁ……。 それでは御言葉に甘えて、匿らせて頂きますぞ……」
「えぇ、任せて下さいっ! 貴方達の事は、私達《英傑旅団》と《犯罪取締連盟》が、精一杯バックアップして差し上げますので御安心して下さいね……!」
「うむ。 それに、英傑旅団の皆様が宿泊していらっしゃると言う事は、その場で待っていれば、何れパトロールから戻って来たサヨコさんとジルバーさんとも出会えそうですからなぁ……!」
「あぁ確かに、鯛造さんの言う通りだ。 サヨコにジルバー……か。 やっと、懐かしの其方達と再会出来るのだな……」
と言う事で、アビウスと鯛造は英傑旅団に暫くの間保護される事となり、パトロールに出掛けているサヨコとジルバーの帰りを宿屋にて心待ちにするのであった……。
【現在位置】
【街デイルン、宿屋前】
【現在の日時】
【4月7日 15時17分 春】
【アビウス】
【状態】:疲労
【装備】:紫色の和服 破滅の剣
【道具】:無し
【スキル】:閃光斬り
【思考】
1:ふぅ……色んな事があって疲れたな……。
2:やっと休めるな……。
3:鯛造さんに引き続き、サヨコとジルバーとも再会が出来るとは……。
【基本方針】:サヨコとジルバーの帰りを待つ。アケミとも再会したい。鯛造と一緒に行動する。鯛造と一緒に座衛門達の仲間に入りたい。旅の疲れを癒やす。
【竜胆園鯛造】
【状態】:疲労
【装備】:黒色の和服 スーツケース 信念の剣
【道具】:様々な和服 財布
【スキル】:指導効果最大
【思考】
1:サヨコさんに、ジルバーさん……。
2:残るは、アケミさん一人ですね……。
3:まぁ、今は疲れた身体を癒やす事に専念致しましょうか……。
【基本方針】:サヨコとジルバーの帰りを待つ。アケミと再会したい。アビウスと一緒に行動する。ギョンに依頼した国を突き止めたい。疲れを癒やす。
【ギルム】
【状態】:健康
【装備】:英傑旅団の団員服 英傑の剣 双翼の腕章
【道具】:メモ帳
【スキル】犯罪取締連盟瞬間報告【効果】:犯罪取締連盟に所属している人物だけに対して、一連の出来事の報告が一瞬にして完了する。因みに部外者に情報が漏れる事は一切無い。
【思考】
1:まさか、ジルバー先輩とサヨコ先輩が会いたがっていた人達と出会うとは……。
2:今直ぐに、この事をジルバー先輩とサヨコ先輩に教えて上げたいのに……。
3:あの二人は、犯罪取締連盟に入らないで好き勝手にパトロールしてるだけだから、私のスキルで先輩達にアビウスさんと鯛造さんの事を教えて差し上げる事が出来無いのが、とても歯痒い……っ!
【基本方針】:鯛造とアビウスを守る。捜査は他の団員と犯罪取締連盟に任せる。
※先輩の知り合いであるアビウスと鯛造の事を全面的に信頼しました。
【探偵ジンラ】
【状態】:健康
【装備】:サングラス 茶色のコート 黒の帽子 鞄
【道具】:様々な人物の資料
【スキル】悪意感知推理【効果】:村や街や王国に入った瞬間に、嘗てその場所で悪意を持っていた人物から漏れ出していた悪意の大きさからその人物の正体を推理して突き止める事が出来る。
【思考】
1:恐らく、この街の強盗事件の犯人は《夢幻旅団No.15》の『エザック』だろうな……。
2:そして、教会ノイリでの事件の犯人は《夢幻旅団No.17》の『ギョン』と言う情報を得た……。
3:なので恐らく、ギョンに殺人を依頼したのは《セイラ王国》の人間の誰かだろうな……。
【基本方針】:犯罪者を捕まえる。英傑旅団と協力する。夢幻旅団と悪鬼旅団の動向を警戒する。
※推理の結果、黒幕はセイラ王国の誰かと言う事と、アビウスと鯛造の事は信頼出来ると判断しました。




