第二十二話 瞬殺の審判 〜死神クリス編〜
〜死神クリスの視点〜
――――終焉の大地ゴイサ、悪鬼旅団本拠地前――――【現在時刻、17時50分】
異世界を滅ぼす手筈を整える為にも、手始めに悪名高い《悪鬼旅団》を乗っ取る事を計画しているクリスは、悪鬼旅団本拠地の”門番”に気付かれぬ様に声を潜めた。
〈矢張り、”監視の目”は有りますよねぇ……。 仕方ありませんねぇ。 さっさと片付ける事と致しましょうか……フフフッ!〉
クリスは不気味な笑みを浮かべながら、門番に向かって”スキル”【瞬殺の審判】を繰り出した……。
「―――瞬殺の審判」
すると、その言葉を隣で聞いていた晋也が、クスクスっと吹き出した。
「え? ふふっ、いきなり何ですかクリスさん? そんな”厨二病臭い台詞”を喋り出したりなんかしてさ?」
と、晋也がニヤけながら言葉を漏らした瞬間だった……。
「フガッッッ!!??」
「………えっ?」
門番の男が突如として、口から”大量の血飛沫”を辺り一面に吐き出すと、そのまま白目を向きながら”絶命”した……。
この”異様な光景”を間近で目撃した晋也は思わず驚きの声を上げる。
「んなッ!? く、クリスさん……!? あ、貴方……一体何を……ッ!?」
〈おやおや、そう言えばワタクシの”スキル”の事を、晋也さんには伝えておりませんでしたねぇ……? 少々、怖がらせてしまいましたかねぇ……?〉
「フフフ、一応説明をしておきますと今のは、このワタクシのスキル【瞬殺の審判】の効果なのですよ……フフフ!」
「しゅ、瞬殺の審判……だって?」
晋也は、怪訝な表情を浮かべながら、クリスの顔を見詰める……。
「まぁまぁ、此処で見詰め合っていても何も始まりませんよ? 門番も無様に死んだ事ですし、さっさと”中の様子”を確かめる為にも、早速内部に入り込みましょうよ?」
「あ、あぁ……。 分かりましたクリスさん……」
クリスと晋也は、悪鬼旅団本拠地の中の様子を調べる為にも、誰にも気付かれぬ様に”忍び足”で侵入を開始した。
――――悪鬼旅団本拠地内部――――【現在時刻、17時58分】
〈フゥ……。 難無く内部に侵入する事が出来ましたが、他の”見廻り”も居る事でしょうし、晋也さんが襲われない様に気を張りながら行動しなくてはなりませんねぇ……〉
すると、クリスと晋也が本拠地内部に侵入した途端に、何処からともなく荒々しい口調で大声を発する男達の”怒声”が聴こえ始めた……。
『うおーーーーーッッッ!!!』
「うわッ!? い、今の声は……?」
「フム? 恐らく、アチラの方から聴こえましたねぇ……? では、足音を立てない様に気を付けながら今の声が聴こえて来た場所にへと向かってみましょうか……」
「あ、はいッ! 分かりましたクリスさん……!」
クリスと晋也は、声が聴こえて来た方向へ近寄って行くと、その怒声を上げている男達の会話が少しずつ”聴き取れる”程迄に鮮明になってきた……。
〈……どうやら、あの扉の向こうで、”集会”でも行っているのでしょうねぇ……。 なんせ、今宵は週に一度の”報告会”の筈ですからねぇ……〉
事前に、今夜《悪鬼旅団本拠地》内にて、悪鬼旅団員の”中心人物”達がこの場に一堂に会すると言う情報を得ていたクリスは、ニヤリと嗤った……。
「要するに、今この扉の向こうに居る方々を”皆殺し”にすれば否応無しに、この悪鬼旅団と言う”組織自体”を、我が手中に収める事となりますねぇ……。 フフフッ!」
「み、皆殺しって……!? と、取り敢えず俺は何も出来無いから、その辺の事はクリスさんに任せるからなッ!」
「フフフ。 勿論、この場では晋也さんは何もしなくても宜しいですよ。 まぁ、先ずは聴こえてくる会話を盗み聞きして”情報の収集”でも勤しみましょうか……」
「じょ、情報収集か……! 確かに、それも大事なコトだよなっ!」
そして、クリスと晋也は扉に耳を当てながら、中から聴こえてくる会話を盗み聞きする……。
すると、やがて鮮明に、その扉の向こうに居る悪鬼旅団員達の会話が聞こえ始めた……。
――――悪鬼旅団本拠地内部、集会室――――【現在時刻、18時3分】
『お〜い、”団長”〜! 今週の新入りでっせ〜!』
『おう! おい坊主、名は何と言うんだぁ〜?』
『は、はいっ! 僕の名前は《ロメオ》です……っ! 先輩方、これから宜しくお願いします……っ!』
「ガッハッハ! ロメオか……! 良い名前をくれた母ちゃん父ちゃんに感謝しろよ……! 分かったな!!」
「は、はいぃ! わ、分かりました〜!!」
と、中から聞こえて来た話し声は、”野太い二人の男の声”と”可愛らしい声色の少年の声”だった。
〈おやおや、どうやら”新入団員”の発表をしていたみたいですねぇ……。 まぁそれよりも《団長》が確実にこの中に居る様子ですねぇ……。 フフフ……ッ!〉
そしてクリスと晋也は、悪鬼旅団員達が話している情報を得る為にも更に耳を澄ませる。
『そんで、今週の成果はどうだったんだぁ〜? 折角、こんな”可愛い新入り君”が新たに仲間に加わったんだ。 お前等も先輩の意地ってモンを見せてみろってんだッ!』
『えっと、その前にロメオ以外の入団希望だった者達から頂いた”伝言を預かっている”のですけども〜……』
『んあッ!? なんだ、その伝言とやらはッ!』
『いやぁ〜、非常に申し上げ難いのですがねぇ〜……?』
『おい、気になるから躊躇わずに早く言えッ! その伝言って何なんだよッ!?』
『えっとですね〜? 他の入団予定だった四人全員が、悪鬼旅団への”入団希望を取り下げたい”との事でしてねぇ〜?』
『んなッ!? なんだとぉ〜ッ!? な、何故そんな事が……!?』
『恐らく、《英傑旅団》と《夢幻旅団》のせいっすよ……。 つい最近、あの旅団の奴等の給料が倍近くになったもんで、巷では悪鬼旅団はもう”オワコン”だな。 過去の栄光に縋るだけのゴミみたいな集団に成り下がっちまったな〜とか、何とか……』
『なに〜!? お、オイッ! その話は本当なのか!? 早く答えろ《ワルヤーッ》!!』
『まぁまぁ、落ち着いて下さいって、《ズモハー団長》……。 あの旅団の奴等は、少人数でやってるから給料を倍に出せるってだけっすよ。 詰まり、数年もしたらオワコンになってるのはアッチの旅団に決まってるじゃないっすかぁ〜……』
『う〜む……。 まぁ、取り敢えず、そう言う事にしとくか……。 で、では、気を取り直して、お前達の”今週の成果”を各々聞こうじゃないか……!』
悪鬼旅団の団長ズモハーがそう告げると、直ぐ様《参謀のムゴズ》が眼鏡をクイッと上げながら進行を始めた。
『では先ずは、其処に居る、”賞金稼ぎ”の異名を持つ《ボルモ》から今週の成果の程を発表して下さい』
『んおっ! 俺からか! ……えーと今週の成果は、ルメーラ王国の”魚釣りイベント”に参加して見事に一位になったぜぇ〜っ!』
『おぉっ! 中々やるっすねボルモ!』
『へへへッ! んで、それからしっかりと、その優勝賞金の”金貨300枚”を頂いたぜぇ……! 後は、そこ等に居た子供を3人拉致って、奴隷商に売っぱらって3人で合計”金貨50枚”も稼いだぜぇ……!』
そう言ってボルモは、机の上に”大量の金貨が入った袋”をドサッと自慢気に置いた。
すると、そのボルモの報告を聞いた団長ズモハーは思わず高笑いを上げた。
『うむ! ……中々に素晴らしい出来だなボルモよッ! 流石は賞金稼ぎの異名を持つ男だな……! ハッハッハ! ボルモ、お前にはこれからも期待しているぞ……!』
『ヘヘっ……! そんなに褒められたら照れるじゃねぇかよ! ……もうっ!』
ボルモは頬をポリポリと掻きながら、嬉しそうな顔を浮かべた。
そして、続け様に参謀ムゴズがワルヤーに向かって今週の報告を求める。
『それでは次は、《用心棒ワルヤー》。 今週の成果を報告して下さい』
『俺っすね! 俺は数日前に、この本拠地に無断で入って来た”不届きなガキ”を取っ捕まえましたよ……! ……まぁ、因みにそのガキが其処に居る《ロメオ》なんですけどもね……』
『な、何だとぉ〜? おい、説明しろロメオッ!』
団長ズモハーは、ロメオの方に顔を向けながら凄んだ。
すると、その団長ズモハーの恐ろしい顔を見たロメオは慌てて説明する。
『す、すみません……。 僕、どうしても悪鬼旅団に入団したくて……だから、ついその気持ちが抑えられなくて……』
『え? その話が本当だとしたら、俺はメチャクチャ嬉しいんだが?』
ロメオの話を聞いた団長ズモハーは、照れ臭そうに鼻頭を掻く。
『……まっ、要するに今週の俺の成果はロメオを”正式に採用”したって事っすね』
そのワルヤーの報告を聞いた団長ズモハーは、安堵したかの様に、胸を撫で下ろしていた。
『そ、そうか……。 その時、もし他の”血気盛んな団員”がロメオの事を見付けてたら、恐らく問答無用で殺してたかも知れねぇからなぁ……。 いやぁ〜、ロメオを見付けたのがお前で良かったぜ……! ありがとな用心棒のワルヤー!』
『ヘヘっ……! 俺の”用心深さ”がロメオを救ったみたいっすね!』
団長ズモハーから感謝の言葉を贈られたワルヤーは、鼻の下を擦りながら屈託の無い笑みを浮かべた。
すると、この様な”無駄な会話”を静かに盗み聞きしていたクリスが、まるで痺れを切らしたかの様子で晋也に向かって問い掛ける。
「フム、もう”有益な情報”は特に得られそうも有りませんねぇ? そろそろ、”襲撃の頃合い”かと存じますが……」
「えっ、もう襲うのか……? なんか面白いから、もう少しだけ話を聞いてみても……」
すると、クリスは晋也に向かって、とある”提案”を行った……。
「一先ず、この場はワタクシ一人で解決を致しますので……。 此処らで一つ、晋也さんに”頼みたい事”が有るのですがねぇ?」
「えっ、そんな急に言われてもなぁ……?」
「まぁまぁ、先ずはワタクシの話を御聞き下さい。 これから、ワタクシは悪鬼旅団と戦いますが、晋也さんはその間に、《街トナデン》にへと向かって行って頂きたいのですよ……」
「街トナデンだって……? それで、その街は一体”何処”に……?」
「ほら、この小窓から外を見てみて下さい。 彼処に、一つの街の姿が見えるかと思いますが彼処こそが、街トナデンですよ……フフフッ!」
すると、クリスが悪鬼旅団本拠地の小窓から外に向かって指を向けたその先には、確かに小さな街の姿が在った……。
「あれが、街トナデン……」
「まぁ、要するに”別行動”を提案しているのですよ. 悪鬼旅団を乗っ取る事はこのワタクシに任せて、晋也さんには彼処の街を滅ぼして来て欲しいのですよ……」
等と、急に提案された晋也は、頭を悩ませる。
「街を滅ぼすって言われてもな……。 俺に出来んのかぁ……?」
「フフフ……。 出来る筈ですよ。 晋也さんの、その『恐ろしい力』が有ればねぇ……!」
「……! そっか、俺の、この呪われた【極度の不幸体質】を利用すんのか……。 確かに、この力を"悪用”すれば、街の一つや二つ滅ぼす事なんて朝飯前か……!」
晋也は自身の心の中が、徐々に”希望”に満ち溢れて来ている事に気が付いた。
何故かと言うと、今迄、散々忌み嫌っていた自分の能力が、”悪用”と言う形で利用出来ると知って仕舞ったからだった……。
〈フフフ。 嬉しそうに微笑んでいますねぇ晋也さん? 良い感じに、”悪の道”に足を踏み入れる覚悟が出来た様子ですねぇ……!〉
「フフフ……。 と言う訳で、これからワタクシは、この悪鬼旅団を”制圧”致しますので、晋也さんは早急に街トナデンへと向かって下さい」
「あ、あぁ分かった……! 戦えない俺がこの場に居続けるとクリスさんの迷惑になるかも知れねぇからな……。 んじゃ、行ってくる……!」
晋也は、そうクリスに告げると、足早に街トナデンへと向かって行った。
「頼りにしていますよ晋也さん……」
クリスは、晋也の後ろ姿を見届けると、ゆっくりと、”戦いの準備”を始めた……。
そして、そんなクリスの漏れ出る”殺意”対して全く気が付かない様子の悪鬼旅団の団員達は、相変わらず呑気に報告会を続けていた……。
『次、《狂王バーシト》、今週の成果を発表せよ』
『はい……そうですねぇ。 取り敢えず今週で”税金を100%”にして国民から金を搾り取っていますが、今の所反発する様な奴等は居ませんからねぇ……。 なので来週は更に”税金を200%”に上げようかなと思いますよぉ……。 ぐふふ……っ!』
すると、こんな狂王バーシトの阿呆みたいな発言を聞いた『参謀ムゴズ』が流石に黙っていられなかったのか口を挟んだ。
『いや待て、特に反発が出ていないのなら寧ろ税金は増やさない方が……。 取り敢えず”現状維持”を保つ事を命ずる……狂王バーシト……』
『えぇ〜? でもでも、税金を増やせば手っ取り早くお金を増やせるのにぃ〜?』
『……そんな身勝手な考え方をしてると、数年後に”革命”を起こされて滅ぶぞ全く……。 では次に、現在”賞金首”に掛けられている《ザマ》、今週の成果を発表せよ』
『……はい……誠にすみません……。 今週……ヘマをしちまって、《英傑旅団》の奴等に”賞金”を掛けられちゃいました……。 本当にすみません……』
『ザマ……お前マジかよ……。 まぁいい、連中に捕まらない様に気を付けとけよ?』
ザマの報告を聞いた団長ズモハーは、やれやれと頭を抱えた……。
『はい……。 精進しますズモハー団長……』
ザマは、酷く落ち込んだ様子で静かに椅子に腰を掛けると、そのまま力無くテーブルに突っ伏した……。
そして、参謀ムゴスは次の報告を呼び掛ける。
『次は、”血塗れ”の通り名を持つ《アイグ》。 今週の成果の報告をせよ』
『えーと、取り敢えず今週は肉屋でアルバイトしてそれなりに金を稼ぎました』
そう言ってアイグは数枚の金貨が入った袋をストンッ……と置いた。
『そうか……まぁ、頑張ったな……うん』
アイグの成果を聞いた団長ズモハーは、憐れんだかの様に口を噤む……。
すると、このアイグの”湿気た結果”を聞いたボルモが血相を変えながら、アイグに向かって怒鳴り付けた。
『おいおい! この結果は、無いだろアイグよぉッ! 流石のズモハー団長でさえも、この微妙な結果を聞いてちょっと気を遣っちゃってんじゃん!? それに何だよ! ”肉屋のアルバイト”って! 悪事を働けよッ! せめてモンスターを討伐して金を稼げよッ! んだよ、その肉屋のアルバイトって!』
『まぁまぁ、落ち着くっすよ……ボルモ。 そりゃあ、言いたい事は分かるっすけど……』
『はぁ……それでは次は――――』
と、参謀のムゴズが溜息を吐きながら声を発した”その瞬間”だった。
そのムゴズの背後から突如として”何者かの冷酷な声”が響いた……。
「フフフ……楽しそうですねぇ……。 所で、”団長”と”副団長”は何方ですかねぇ?」
クリスは、薄ら笑いを浮かべながら弾む様な調子で問い掛けた。
すると、急に現れた謎の男に対して怪訝な顔を浮かべた団長ズモハーは、隣りに居る”腕利きの部下”に向かって目の前の謎の男を殺害する様に命令する。
「あぁ……? 急に誰だぁ? ……おい、《怪力のヤルキ》、《剛腕のキウ》。 殺っちまえ」
「へいっ! アニキィ!」
「ヘヘっ……! 分かりやしたぜ団長……!」
と、団長ズモハーから命を受けた二人の団員が、血気盛んにクリスに向かって一斉に殴り掛かる。
「はぁ……貴方達の様な”下っ端”には用は無いんですけどねぇ……」
「なんだと……!?」
「殺されてぇのかなぁ〜?」
「【瞬殺の審判】」
「!?」
「!!??」
と、クリスが、そう静かに言い放った、次の瞬間……!
「ブギョルベッ!!!」
「ビッジョッピ!!!」
悲痛な叫び声を上げた怪力のヤルキと剛腕のキウの頭が、一瞬にして”潰されたトマト”みたいに弾け飛んで行った……。
「……なっ!?」
〈おや、返り血が服に……。 後でキチンと拭いておかないと”シミ”になって仕舞いますねぇ……〉
返り血を浴びたクリスは、無表情で再び団長ズモハーに向かって問い掛ける……。
「どうやら、命令を下した貴方が団長の様ですねぇ……?」
そのクリスの言葉を聞いた団長ズモハーは、この謎の男に対して自分では”絶対に勝てない”と瞬時に悟る……。
すると、団長ズモハーは、皆を庇うかの様に慌てて返答する……。
「お、俺が団長ズモハーだ……ッ! ほ、他の奴等は関係ねぇぞ……ッ! 殺すなら、せめて俺だけにしてくれ……ッ! 頼むッッッ!!!」
「ズモハー……団長……!」
その団長の言葉を聞いた団員達は、思わず感涙を流し始める。
然し、”この世界を滅ぼす”と言う事を目的としているクリスには、慈悲は無かった。
「まぁ、そうは言われても、この場に居る他の者達もワタクシは決して”見逃しません”けどねぇ? 何故なら、他の人達の中にも”副団長”や”重要な役割”の人が居る筈ですよ……? だって今日は……週に一度の報告会の日でしょう?」
「お前……!? 何故その事を……? 一体何者なんだ……? お前……ッ!?」
その問い掛けに対して、クリスは、まるで煽るかの様な口調で言葉を発する……。
「ワタクシは”100年前”からこの世界に飛ばされて来たんですよ? この世界で今何が起きてるのかは”手に取る様に”分かりますがねぇ……」
「何……? まさか、お前……”人間”じゃねぇのか……? 一体”何族”だ……?」
「おやおや、そんな事よりも、早く他の者達の役職も明かしてくれないと、問答無用でこの場の皆々を殺しますよ……? フフフ……」
すると、観念したのか団長ズモハーは唇を噛み締めながら口を開いた……。
「くっ……。 し、新入りのロメオ以外全員……悪鬼旅団の”重要人物”に間違い無い……」
「ですよね……。 所で、皆さん。 これからワタクシはこの悪鬼旅団を”乗っ取ろう”と思うのですが、このワタクシの計画に協力してくれると言う”賢明な御方”は御座いませんかねぇ……?」
すると、そのクリスからの半ば”脅迫めいた言葉”を聞いた《用心棒ワルヤー》が、いち早く反応した。
「お、俺は……勿論”協力する”っすよ……! お、お前もそうだよな……? ロメオ!」
「う……うん……。 僕もワルヤーさんと同意見です……」
〈フム、このワルヤーとロメオと言う名の御二方は、中々に物分かりが良くて”使えそう”ですねぇ……?〉
ロメオは、顔を伏せながらコクコクと頷いていると、そのワルヤーとロメオの反応とは対照的に、《狂王バーシト》が嫌そうな口調で話し出した。
「いや、ワシは嫌だぞ〜! だってコイツに付いてったらこき使われそうじゃ〜ん!」
〈おや、この御方は扱いづらそうですので、残念ながらこの場で”サヨナラ”ですねぇ……〉
「フゥ〜……。 やれやれ、物分かりが悪い様ですねぇ。 致し方有りませんねぇ……」
するとクリスは、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「【瞬殺の審判】」
「………ほぇ――――ッ!」
と、狂王バーシトが反応した瞬間に、バーシトの身体は四方八方に”爆散”して仕舞った……。
「バ、バーシト……! くそっ、またしても俺の可愛い団員を殺しやがったなテメェッ!」
「おやおや、貴方も死に急ぎたいのですかねぇ?」
と、クリスからの警告の言葉を聞いた団長ズモハーの身体は、恐怖によって固まって仕舞う……。
「……畜生、分かったよ。 俺の権限……いや、”この場に居る者達の権限全て”を……お前に渡すから、だから……だからこれ以上……! 俺の大事な仲間を殺すのは……止めてくれぇッッッ!!!」
すると、悪鬼旅団内の権限を全て譲渡された死神クリスは、にこやかに嗤った。
〈フフフ、宜しいでしょう。 では、この団長さんは”用済み”ですので始末致しましょう……!〉
「頼む……ッ! 今生の頼みだから、どうか他の団員達の事は見逃してくれぇ……ッ!」
クリスに逆らう事を諦めた様子の団長ズモハーは、せめてこの場に残っている団員達には手を出さないでくれと、必死の懇願を行った……。
「そうですか。 貴方のその熱意に対して心底感服致しました。 ではでは、貴方はもう用済みなので安心して死んで下さい」
「……?」
そして、クリスは例の如く言葉を紡ぎ始める。
「【瞬殺の審判】」
「なっ……ぐあぁっ…!!」
途端に、団長ズモハーの腹部に大きな穴が空くと……そのまま団長ズモハーは呆気なく息を引き取った……。
バタン……ッ!
「ひ、ひぃぃいいッッッ!!?? だ、団長が何の為す術も無く殺されちまったぁぁああッッッ!!??」
〈さてと、それでは後に残された者達のこれからの”処遇”をどう致しましょうかねぇ……?〉
クリスは、団長ズモハーの亡骸をグリグリと踏み付けながら、残りの団員達に向かって声を発した。
「聞きましたか皆さん? これでこの悪鬼旅団の権限は全てワタクシに”譲渡”されました。 なので、これからワタクシに逆らう者は一切の躊躇いも無く……殺しますからね……?」
「て……てめぇ……! よくも、よくも団長を〜ッ!!!」
「そ、そうだ! おい、テメェ許さねぇぞッ!」
〈おやおや、此の期に及んで愚かな人達だ……〉
団長の仇と言わんばかりに、”二人の大男”がクリスに向かって突進した……。
「【瞬殺の審判】」
「ピギュッ!!!」
「グボォ!!!」
然し、二人の大男はクリスの圧倒的な力に為す術なく、呆気なく命を散らして仕舞う……。
「《ゴリッペ副団長》!! 《暴君ブンゲ》!! くっ……!」
〈おや、どうやら今の男が副団長だったのですね? まぁ、最早どうでも良い事ですがねぇ……〉
すると、賞金稼ぎボルモが皆を制止しながら声を荒げた。
「くそっ……! 死んだ団長の為にも……俺等はここで”無駄死に”する訳にはいかねぇ……ッ!! みんな! 気持ちを抑えろぉーーーッッッ!!! 奴に殺意を向けるなーーーッッッ!!!」
生き残った団員達は、自身の内側から湧き出して来る”怒りの感情”を必死に押し殺しながら、ひたすらに堪える……。
そして、数分程の静寂が訪れると、やがてクリスは口を開いた。
「フフフ……漸く大人しくなりましたねぇ……? それでは皆様、一旦ワタクシに向かって”自己紹介”をして下さい。 因みにワタクシの名前は《死神クリス》と申します。 以後お見知り置きを……」
「し、死神ぃ……ッ!?」
と、クリスから衝撃的な言葉を聞いた悪鬼旅団の団員達は、力無く床に座り込んで仕舞う……。
「おやおや、どうやら”立つ事の意志”すらも消失して仕舞った様子ですねぇ……? フフフッ!」
かくして、死神クリスは難無く悪鬼旅団を乗っ取る事に成功したのだった……。
【現在位置】
【悪鬼旅団の本拠地】
【現在の日時】
【4月7日 18時36分 春】
【死神クリス】
【状態】:ウキウキ
【装備】:漆黒のシルクハット 漆黒の紳士服 漆黒のステッキ
【道具】:水晶玉
【スキル】:瞬殺の審判
【思考】
1:フフフ……上手くいきましたねぇ……。
2:晋也さんも今頃上手くやってますかねぇ……。
3:取り敢えず、利用出来る物は全て利用しましょうねぇ……! フフフ……。
【基本方針】:この世界を破壊する。最終的に天界を乗っ取る。晋也との約束を守る為に琴子には手を出さない。
※団長ズモハーを殺害し、悪鬼旅団を乗っ取りました。
【参謀ムゴズ】
【状態】:戦慄
【装備】:眼鏡 神父の服
【道具】:悪鬼旅団の活動報告書 御供え物
【スキル】虚言の祈り【効果】:神父に成り済ます事が出来る。しかも絶対にバレない。
【思考】
1:くそっ……! 何でこんな事に……!
2:落ち着け……奴に逆らうと殺されるぞ……。
3:まぁ、狂王バーシトが死んだ時は、少々気分が晴れましたけどね……。
【基本方針】:死神クリスに逆らう事はしない。死に別れた嘗ての恋人『ネリアス』の御墓参りに行く。
※ネリアスが死んでいる事を知っています。
【用心棒ワルヤー】
【状態】:ヘラヘラ
【装備】:ゴーグル バンダナ 悪鬼旅団の団員服 鉄砲
【道具】:弾薬50発分 葉巻き数本
【スキル】遠距離絶対命中【効果】:標的が遠くに居れば居るほど標的に命中する確率が上がる。逆に標的が近くに居れば居るほど標的に命中する確率が下がる。放たれる銃弾は標的へと”自動追尾”をした上で、標的以外の人物を上手く避けてくれる為、赤の他人に誤爆する可能性は一切無い。
【思考】
1:ヒュー! 強いっすね! 死神と言う奴は!
2:こんな強い奴が味方になるなら心強いっすね!
3:団長……安らかに眠るっすよ……。
【基本方針】:強い奴に付いて行く。自分の家族を殺したバルルーナ王国の騎士団長の『ナルル』を自分の手で殺す。
※ナルルと因縁を持っています。
【新入りロメオ】
【状態】:恐怖
【装備】:悪鬼旅団の団員服
【道具】:ロゼリアの写真
【スキル】:無し
【思考】
1:怖いよぉ〜……。
2:……数年前に奴隷商人に売られて仕舞った、お姉ちゃんの行方を詳しく調べる為に悪鬼旅団に入団したってのに……。
3:邪魔しないでよぉ〜……。
【基本方針】:悪鬼旅団の権限を利用してこの世界の何処かに居る姉『ロゼリア』を探し出す。死神クリスの事も上手く利用したい。
※ロメオはロゼリアの実の弟です。
【賞金稼ぎボルモ】
【状態】:困惑
【装備】:獣の毛皮 ハンマー
【道具】:大量の金貨が入った袋
【スキル】妄想の豪運【効果】:自分は運が良いと思い込めば思い込む程に、本当に自分の運気がドンドン上がる。効果は数時間程で切れるので、効果が切れたと思うタイミングで再び自分は豪運だと妄想しなくてはいけないので大変だ。
【思考】
1:俺は豪運だ……だから此処では絶対に死なない……。
2:俺は豪運だ……俺は絶対に殺されない……。
3:俺は豪運だ……絶対に生きて家に帰れる……。
【基本方針】:とにかく自分は豪運だと思い続ける。
【賞金首ザマ】
【状態】:失神寸前
【装備】:シマシマの服
【道具】:自分の手配書
【スキル】:無し
【思考】
1:あわわわわ……。
2:あばばばば……。
3:あああああ……。
【基本方針】:死神クリスに従う。《英傑旅団》と《犯罪取締連盟》から逮捕されない様に気を付ける。実家に帰りたい。
【血塗れのアイグ】
【状態】:平然
【装備】:血塗れのコック帽 血塗れの料理人服 血塗れの包丁 双翼の腕章
【道具】:数枚の金貨が入った袋
【スキル】抜群の切れ味【効果】:食料品や人間を切る時の切れ味が抜群に良くなる。
【思考】
1:死神かぁ〜、切って見てぇなぁ〜……。
2:そこの新入り君も切りてぇなぁ〜……。
3:ヤベェ! この衝動を抑えるには”料理”をするしかねぇ……!
【基本方針】:死神クリスや団員の皆に自分が作った絶品料理を食わせたい。
【卑怯なるゲノン】
【状態】:安堵
【装備】:黒の服
【道具】:無し
【スキル】認識されない存在【効果】:自身の身体を”透明状態”にしてから再び自分から姿を出現させない限り、絶対に他人から認識されない。他人どころか”武器”と相手の”スキル”にすらも認識されない為、このスキルを使っている間は実質”無敵”である。
【思考】
1:最初から姿を消してて良かった〜……。
2:俺は今週何の成果も得られなかったからずっと姿を隠してたけど……それが功を奏した〜!
3:さてと……このまま”トンズラ”しますかな……。
【基本方針】:兎に角、絶対に姿を現さない。今すぐに、この場から逃げ出す。
※スキルの効果の御蔭でクリスにすら認識されていません。
【団長ズモハー死亡確認】
【副団長ゴリッペ死亡確認】
【暴君ブンゲ死亡確認】
【狂王バーシト死亡確認】
【怪力ヤルキ死亡確認】
【剛腕キウ死亡確認】
【門番ガオス死亡確認】
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