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思いの外上手くいかない理想の異世界生活!  作者: ミカル快斗
第一章 各々の思惑が始まる一日目
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第十九話 アビウスの回想 〜アビウス編〜


〜アビウスの視点〜


――――始まりの大地ストファー、教会ノイリ周辺――――【現在時刻、13時55分】



 〈確か、”この辺り”だった筈だな……〉


 〈我の目的地、『教会ノイリ』……。 其処の地下墓地に、彼女は眠っている筈……〉


 「待っててくれ……『ネリアス』。 今直ぐに、我が其方の下に向かってやるからな……」


 アビウスは、始まりの大地ストファーに在る『教会ノイリ』へと足早に向かっていた。


 アビウスが、これ程にまで教会ノイリに急ぐ理由……。

 それは、風の噂でカツての自身の仲間である『ネリアス』が死んだと言う事を小耳に挟んだ事が要因だ。


 アビウスは、本当にネリアスが亡くなって仕舞ったのかを今すぐにでも確認する為に、彼女が埋葬されていると噂されている教会ノイリへと直行している途中なのだ。


 「はぁ……はぁ……。 流石の我も、この長旅に少々疲れが出始めたが、まだ休む訳にはいかない……。 後、少しで辿り着くのだからな……」


 アビウスは、生まれ故郷こそ『始まりの大地ストファー』内に在るのだが、成長した今現在は、『試練の大地シビキイ』と言う名の大地で暮らしていた。


 そしてその、アビウスの住んでいる試練の大地シビキイの”とある街”から、始まり大地ストファー内の”教会ノイリ”へと出発してから、本日でまるまる”一週間”が経過して仕舞ったが、それでも、アビウスは自身に降り掛かる疲労感を追い払いながら、必死に教会ノイリへの歩みを進めた。


 そして、汗を垂れ流すアビウスは辺り一面を見回しながら物思いに耽った。


 〈……然し、この大地も最早”懐かしい”ものだな……〉


 〈この大地には、数十年程前迄は、我の故郷である獣人族の住む"村"が、沢山存在していたのだがな……〉


 やがて、目に涙を浮かべながらアビウスは”昔の事”を思い返し始める……。

 嘗て、この地で経験した、”嫌な思い出”と……”楽しかった思い出”と……”辛い思い出”の事、そして……。


 ネリアスや仲間達、そして『竜胆園鯛造』の事を……。



◇■◇■◇■◇■◇■


 今から、数十年前の始まりの大地ストファー。


 嘗てこの地には、様々な獣人族達の村があった。


 活気溢れる長閑ノドカな村で生まれ育ったアビウスは、強くなる為に必死に”剣術”を習っていた。


 然し、この様な充実した日々が、これからも続いてゆくと自身が思っている”矢先の出来事”だった。


 全世界中に、”奴隷制度”が可決されたとの張り紙が散りばめられ始めたのだ。


 そして、その張り紙はアビウスの村にも届けられた。


 〈な、なんだ……これは? 奴隷制度とは……一体なんなのだ?〉


 張り紙を見た幼き頃のアビウスは驚愕した。


 「ふざけんなよ……っ! これが『平和維持連盟』のやり方かよ……っ!」


 すると、その張り紙を見た村の大人達の顔色が青ざめている事にアビウスは気が付いた……。


 〈村の大人達が顔を強張らせている……? それに、平和維持……連盟?〉


 この世界には絶対的な力を持った”三大勢力”が存在している。


 ――――《平和維持連盟》、《犯罪取締連盟》、《魔族抹殺連盟》――――


 そして、この三大勢力の一つ、平和維持連盟が一体どう言う意図なのか、数百年前に撤廃された筈の奴隷制度を”復活”させたのだ。


 「これは”不味い”ことになったぞ……ッ! このままだと、村の子供達が危ないぞ……ッ! おい、子供達には、この村を離れる様に伝えてくれ……ッ!」


 「え、えぇ……! でも、一体なんて言えばいいの……?」


 「村の子供達には、これからお前達は『英雄の大地ヤシウユ』若しくは『新世界の大地カイシンセ』へと向かう様に言っといてくれ! 早くしろっ! 奴隷制度が可決された今、イズれこの村も狙われる事だろうからな……!」


 《英雄の大地ヤシウユ》、そして《新世界の大地カイシンセ》。

 この2つの”偉大なる大地”だけは、三大勢力の影響を受けない事は、獣人族の耳にも入っていた。


 詰まり、この2つの大地の内部に、子供達の事を逃げ込ませて仕舞えば、少なくとも子供達の事だけは守れると村の大人達は判断したのだ。


 そして、幼き頃のアビウス達は、村の大人達から言われた通りに、数人の護衛担当の大人と一緒にヤシウユとカイシンセへと向かう事となった。


 「それでは、行って参ります。 この村に残られる皆様方にも、どうか御武運が有られる事を……」 


 アビウスは、礼儀正しく村の大人達に別れの挨拶を行うと、護衛の大人達と一緒に村を発った。


 「えぇ、アビウスこそ無事にね……」


 村に残る大人達の中には、自身の”両親の姿”もあった。

 アビウスと仲間達は、不安感に苛まれながらも、目的地にまで歩みを進めた。


 すると、アビウス達が村を発ってから数日経った頃の出来事だった。


 大人子供関係無く、この世で”獣人族”こそが一番奴隷として高く売れる事実に気が付いた《悪鬼旅団》なる集団に目を付けられたアビウスの”故郷の村”は、そのまま悪鬼旅団達の猛攻に為す術も無く一人、また一人と次第に捕らえられ始めた……。


 然し、それでも”獣の血”が入った獣人族は、己の中の野生の衝動を解放しながら必死に諦めずに抵抗を続けていると、逆に悪鬼旅団の数人の団員達を”返り討ち”に出来る程にまで、対抗手段を自力で生み出していった。


 このまま、獣人族の”逆転劇”かと思ったのも束の間、悪鬼旅団にも”プライド”と言う物が有った。


 このまま引き下がれない悪鬼旅団は、大金を掛けて”協力者”を募り始めた。


 そして、その協力者の中には、高い依頼料で受けた仕事はきっちりこなすと言う通称、《夢幻旅団(ムゲンリョダン)》なる悪鬼旅団の”上位互換”とも言える旅団の団員達の姿もあった。


 やがて、アビウスの故郷の村は、敵の軍勢によって、必死の抵抗も虚しく、無慈悲にも”捕まり尽くされて”しまったのだ。


 そして、そんな故郷の村での悲惨な争いの顛末を知らない幼き頃のアビウス達は、運良く敵に出会う事も無く順調に目的地にまで向かう事が出来ていた。


 然し、そうは言っても”運の強さ”とは、そうそう長く続くものでは無かった。

 目的の場所にまで、後少しで辿り着きそうな頃の出来事だった。


 其処で、《夢幻旅団の団員No.6》に位置する”凄腕の殺し屋”『アドムンハ』に運悪く見つかって仕舞う……。


 殺し屋アドムンハは、悪鬼旅団から捕まえる事の依頼を受けていない”護衛の大人の獣人族”を真っ先に射殺すると、そのまま銃口を丸腰のアビウス達に向けながら静かに語り出す。


 「俺は所謂”プロ”なんでね。 依頼にない対象は、真っ先に排除する主義なんだ。 恨むなら、子供の獣人族だけを求めた”依頼人”の事を恨むんだな?」


 「くっ……! 最早、これまでか……ッ!」


 アビウスは、唇を噛み締めながら悔しそうな表情を浮かべると、不意に殺し屋アドムンハがアビウス達に向かって”とある提案”を行った。


 「因みに、俺の依頼内容とは、”5人の獣人族の子供”を捕まえる事だ。 今、この場には”9人のガキ”が居るが、どうだ此処で一つ《ゲーム》をしてみないか?」


 「ゲーム……だと?」


 「あぁ、そうさ。 本来なら、依頼に含まれてない4人のガキは、この場で”射殺”してやろうかと思っていたが、気が変わってな。 ほら、鬼ごっこスタートだ」


 アドムンハの口からスタートの合図が発せられると、アビウスを含めた獣人族の9人の子供達は、アドムンハの魔の手から逃げ出す為に、一斉に散り散りになりながら必死に駆け出した……。


 〈クソ……ッ! 奴隷なんぞになってたまるか……ッ!〉


 アビウスの後ろでは、次々に捕らえられてゆく仲間達の”悲鳴”が聴こえていた……。


 その声を聴いたアビウスは、恐怖に怯えながら必死に逃げ続けた。


 そして、数十分程の時間が経過した頃だった……。


 「おっ、これでヨウヤく依頼の人数の5人だな。 んじゃ、残りの奴等は頑張って生き長らえるんだぜ……」


 と、アドムンハが”気絶した様子の五人の子供”を引き連れながら撤退してゆくのを、残った四人の子供達は悲しそうに眺めていた……。


 〈我は……。 逃げ延びたのか……。 然し、護衛の大人達が殺されて仕舞った以上、目的地へと向かう手段を封じられてしまった……〉


 「うわぁ~んッ! 私達、これからどうなっちゃうんだろぉ〜ッ!?」


 〈『サヨコ』は泣き喚いているな……。 だが、この状況だ……。 気持ちは我も痛い程に理解る……〉


 「これからどうなるだぁ〜? まっ、必死に生きてりゃ、なんか良い事でもあんだろ!」


 「全く、相変わらず『アケミ』は”能天気”ですね……」


 「うっせーなッ! そう言う『ネリアス』も相変わらず、”お硬い口調”してんなッ!」


 殺し屋アドムンハの魔の手から逃れたのは、”アビウス”、”ネリアス”、”アケミ”、”サヨコ”の四名。


 そして、”見知らぬ土地”に取り残された事により必然的に結束力が強まった四人は、常に辺りを警戒しながら自分達の”帰巣本能”を頼りに始まりの大地ストファーにある自分達の故郷の村へと怯えながら”帰る”事にした。


 「やっぱり、村の事が心配だからね……。 村の大人達は、私達に無事に目的地にまで辿り着いて欲しいんだろうけどね……」


 「まぁ、サヨコの気持ちもアタシは解るよ……。 やっぱ、”両親”の事が気掛かりだかんなぁ〜……」


 「そうだな。 一旦、村へと引き返す事とするか……」


 「村に何事も無ければ良いのですが……」


 すると、故郷への帰り道の道中にて、とある一人の”黒色の和服の男”が何も無い空間から突如としてアビウス達の目の前に現れた。


 「んなッ!? 何者だッ!!」


 「おい、オッサン! どっから現れやがった!」


 アケミが和服の男に向かって威嚇すると、和服の男は笑みを浮かべながら返答する。


 「おやおや、どうやら此処が”異世界”の様ですね……。 全く、『ソアボ様』ったら、何もこんな場所に転生させなくても……」


 立派な髭を蓄えた黒の和服の男は、アビウス達の姿をまじまじと眺める……。


 「おや? どうやら、君達は人間では無いみたいですね? 獣みたいな”耳と尻尾”が生えていますなぁ……?」


 「んなッ! 矢張りお前も、私達を”狙う者”かッ!」


 と、アビウスはアケミと一緒に威嚇しながら、護身用に身に着けていた木の剣を、和服の男に向かって思いっ切り振り落ろした。


 スカ……ッ!


 然し、そのアビウスの剣撃を和服の男はヒョイっと軽い足取りで避けた。


 「おっと、危ないではありませんか。 そもそも、その様な”雑な剣撃”では、この私を倒す事など夢のまた夢ですな」


 「なんだと……ッ!?」


 「どれ、折角ですから私がお嬢さん方に稽古を付けて差し上げる事と致しましょう。 ふむふむ、女神様から授かった、この”スキル”を早速使う時が来た様ですなぁ?」


 「なに? ……スキルだと?」


 「おっと、それよりも先ずは、この私が一体”何者なのか”の説明を致しましょうか」


 アビウス達は、その和服の男の話を詳しく聞いてみた所、どうやらこの和服の男は、”此処とは違う世界”から来た人間らしく、その上この世界の仕組みを良く知らない様子だと言う事を伝えられた。


 そしてアビウス達は、この和服の男の”瞳”を見て彼が嘘を言っていない事を瞬時に察すると、そのまま(ココロヨ)く仲間に引き入れる事にした。


 「成程。 どうやら、貴方は我等の”救世主”になってくれるのやも知れぬな……」


 「ほぉ? この私が救世主ですと?」


 不思議そうな顔を浮かべる和服の男に対して、アビウス達は今この世界で起きている”情勢”を教えた。


 「ほほぉ。 奴隷制度ですか……。 なんと下劣な真似を……」


 「んで、アンタの名は? アタシの名はアケミだぜぇ!」


 「我の名は、アビウスだ」


 「あ、えっと私の名前は、サヨコですっ!」


 「……ネリアスです」


 アビウス達は、一斉に和服の男に向かって自己紹介をすると、それを聞いた和服の男の方も自分達に向かって自身の名を明かしてくれた。


 「ほぉ。 アケミさんに、アビウスさんに、サヨコさんにネリアスさんですね? ふむ、申し遅れました私の名は、『竜胆園鯛造』と申します。 以後お見知り置きを」


 お互いの名前を知ったアビウス達は、親睦を深める為に”他愛の無い話”を続けた。


 「ふむ? 私の話が聞きたいですと? 宜しいでしょう。 それでは、先ず私の”一人息子”の事に付いて話すと致しましょうか……」


 「鯛造さんの一人息子についてか……」


 鯛造の話を聞いてみると、どうやら、”竜胆園家”は代々剣術の腕を磨き続ける由緒正しき一族だったらしく、息子が立派に成長する前に、自分が”不慮の事故”で亡くなって仕舞ったが為に、竜胆園家の様々な剣技を子孫に伝授する事が出来なかったと悔やんでいると言う事を知る……。


 そして、その様な素晴らしい剣技の数々を、自分の息子に伝授する事が出来なかった分を、代わりに心優しいアビウス達に”伝授したい”との事だった……。


 「竜胆園家の剣技……? それを我等に教えてくれるって言うのか?」


 「えぇ。 これは君達にとっても”悪くない話”だと思いますが……。 如何でしょう?」


 すると、アビウス達は互いの顔を見合わせながら、コクっと頷いた。


 「分かった。 我等の村に無事に辿り着けた暁には、是非とも伝授させて頂くとしようか」


 「ふふっ、”良い顔付き”ですな……!」


 こうして、竜胆園鯛造を仲間に加えたアビウス達は、長い道程ミチノリを経て、故郷の村に辿り着くと、その余りな惨状に思わず驚愕した……。


 「い、一体何だコレは……っ!? む、村が”壊滅”しているだと……っ!?」


 「マジかよ……ッ! アタシ等の両親は何処に行っちまったんだよッ!」


 「恐らく、捕まっちゃったんだよっ! うわぁぁんッ! 母上様〜ッ! 父上様〜ッ!」 


 「泣き止みなさいサヨコ。 残酷ですが、これも現実なのです……」


 「うえぇぇんっ! ネリアスの薄情者ーーッ!」


 と、多種多様の反応を示しているアビウス達の様子を見た鯛造は、皆の気を紛らわせる為に、”とある物”をプレゼントした。


 「皆さん。 一先ず、これを見て頂けませんかな?」


 鯛造は、自身が肌身放さず持ち運んでいた”スーツケース”の中から、《四種類の和服》を取り出した。


 「……む? 何ですかそれは?」


 「和服ですよ。 今取り出したのは”子供用”ですが、いつか成長した時の為に”大人用のサイズ”も持ち合わせていますよ」


 「いや、でも一体何故、そんな都合良く和服を持っているのだ? それも丁度四人分……」


 「ふむ……。 それに限っては、本当に”偶然”としか言い様が御座いませぬなぁ。 たまたま、私の”門下生”に新品の和服を手渡す為に常日頃から用意していたスーツケースを持ち運んでいる時に交通事故に遭い、そのまま天界に運ばれて異世界に転生しましたからなぁ……」


 「成程な。 そのスーツケースの中には、元々沢山の種類の和服が入っていたと言う訳か。 それでは、御言葉に甘えて有り難くその”新品の和服”とやらを受け取らせて貰うぞ」


 「えぇ、どうぞ。 お好きな色をお選び下さいな」


 「へへへ、んじゃアタシは”紅色の和服”もーらいっと!」


 〈我は、”紫色の和服”を頂こうかな……〉


 アビウス達は、鯛造から受け取った和服の着方を教えて貰うと、やがて全員が和服に着替え終わった。


 「お〜っ! とても似合っていますよ皆さん!」


 「そうか? そう言って貰えると嬉しいものだな……!」


 「ヘヘ、なんか良いな! こんな感じの服ってのも!」


 「ふふっ! 心機一転だねぇ〜っ!」


 「……良い着心地です」


 すると、鯛造から貰った和服に着替えたアビウス達から、次第に笑みが溢れ始めた。


 そして、何者かの手によって滅ぼされた故郷の村に居続けるのは危険だと判断した鯛造とアビウス達は、何処かに身を潜める事が出来る様な場所が無いかと辺りの捜索を開始する。


 そして鯛造達は、丸一日掛けて、ヨウヤく森の中に在る良さげな建物を見付けると、直ぐに建物の中へと入ってゆく。


 「ふむふむ。 これならば、少し掃除する程度で住める様になりますな。 それに此処は森の中ですし、この埃の積もり具合からして、暫く人が立ち寄った形跡もありませぬからな。 この建物を私達の住処にするには、申し分ないかと」


 「そうだな。 それにこの近くには、川が有るから身体は其処で洗えば良いし、この辺にも我等が食べられそうな植物も沢山生えている事だからな」


 「うおっしゃーっ! そんじゃ、一先ず此処がアタシ達の”仮拠点”になるんだなっ! んじゃ、早速アタシが何か食えそうなもん取ってくる!」


 今迄の野宿暮らしとは打って変わり、それから暫くの間アビウス達は五人で、仲睦まじく暮らす事となった。


 そして、その様な出来事から幾数年が経ち、今の”服のサイズ”では現在の“体型“に合わなくなって来た所で、鯛造が大事に保管していた”大人用の和服”をスーツケースから取り出して来た。


 「おやおや、いつの間にか、皆さんも”成長期”に入られた様子ですな。 それでは、早速この大人用に着替えて下さいな」


 「おぉ、気が利くな鯛造さん。 ……然し、あれからもう”七年”か。 時が流れるのは早いものだな」


 「うむ。 当時に比べて、奴隷制度の話は聞かなくなりましたが、それでも直、奴隷制度を続けている国も在ると聞きましたからな……」


 「まっ、んな事よりも新しい和服が先だっ! 有り難く頂くぜタイゾウさんっ!」


 そして、アケミ達は、各々が好きな色の和服を手に取る。


 アビウスは”紫色の和服”を、ネリアスは”黄色の和服”を、アケミは”紅色の和服”を、サヨコは”蒼色の和服”を鯛造からそれぞれ有り難く頂いた。


 そして再び、アビウス達は日々の鍛錬に励んでいく。


 ある日、アケミが剣を振ると一瞬だけ、空気中に”火花が飛び散る”と言った出来事があった。


 すると、その事に気が付いた鯛造は、アケミの剣の振り方をじっと観察すると、そのアケミの腕の動き、そして腰の使い方等の細かい動作の見直すべき所をアケミに詳しく指導する。


 そして、注意された所を直しながら、再びアケミが剣を振り上げると、アケミの剣の先から凄まじい勢いで”炎が舞い上がった”のだ……!


 「うおっ!? んだこりゃあッ!?」


 〈おいおい、アケミの奴……。 ”火傷”とか、していないのだろうな……ッ!?〉


 皆は慌てて、アケミが火傷をしていないか確認しに向かったのだが、何とアケミはあんなに凄まじい炎に一瞬で包まれたと言うのに火傷どころか一切の燃えた痕跡が無かった……。


 「ふむ、どうやらアケミさんは、”新たなるスキル”を会得した様子ですな」


 「んなッ!? ス、スキル……? アタシがぁ!?」


 そうアケミは、振り上げた剣から炎が舞い散ったその瞬間にスキル【火炎演舞】を新たに習得していたのだ……。


 すると、この素晴らしい結果に喜んだ様子の鯛造は、大きな笑い声を上げながら、アケミの頭を力強く撫でる。


 「良くやったアケミさん! これで君も、立派な竜胆園家の門下生だ!」


 「そ、そんなに褒めんなよ〜っ! は、恥ずいだろうがよっ!」


 アケミは思わず顔を赤らめる。


 そして、アケミがスキルを習得した数日後には、続け様にサヨコもスキル【渦巻き斬り】を覚えた。


 「やった! 私もアケミに続いてスキルを覚えられたよっ!」


 「お、やるじゃねぇかサヨコ! きっと、タイゾウさんも泣いて喜ぶぞ〜っ!」


 そして更に数日後には、ネリアスまでもがスキル【雷鳴演舞】を習得した事に依って、未だにスキルを習得していないのはアビウス一人だけになって仕舞った……。


 〈く……ッ! 何故だ、一体何故……。 我だけがスキルを習得出来ぬのだ……ッ!〉


 当初、自分だけがスキルを習得出来ていないと言う現状に直面したアビウスは、深く落ち込んだものの、鯛造がアビウスに”焦る事は禁物”だと優しく励ましてくれた事によって、アビウスは再び立ち直る事が出来た。


 そして、アビウスは今まで以上に集中して日々の鍛錬に励んでいた……。


 とある日、そんなアビウスにもスキル習得の”兆候”が見え始めた。


 アビウスの振る剣の動きが日に日に速くなっていくのだ。


 皆は、アビウスがもう少しでスキルを習得出来ると確信し、アビウスを応援し続ける。 


 「頑張れーアビウスーッ! お前ならいけんぞぉーッ!」


 「ファイトですよーっ! アビウスちゃ〜んっ!」


 「………頑張れ、アビウス」


 「きっと上手くいきますよ。 だから肩の力を抜いて、意識を集中させるのです」


 そして……。


 皆の必死の声援が届いたのか、アビウスは”閃光の如く速さ”で練習用の丸太の人形を一瞬にして切り裂く事が出来た……!


 そう、まさにこの瞬間、アビウスは遂に自分のスキル【閃光斬り】を習得する事が出来たのだった。


 「た、鯛造……さんっ! 皆……っ! 出来た……遂に我にも……っ! 出来……たっ!」


 アビウスは、余りの嬉しさに目から涙が止まらなくなった……。


 そして、そのアビウスの嬉しそうな泣き顔を見た皆も思わず貰い泣きをして仕舞う。


 こうして、アビウス達は竜胆園鯛造の指導の御蔭で、全員が自分のスキルを習得する事が出来た。


 然し、それから3年後、平和に暮らしていたアビウス達に再び魔の手が襲い掛かった!


 敵は、《夢幻旅団のNo.12》の『ジルバー』と言う名の男……。


 嘗て、アビウス達を襲った《No.6のアドムンハ》と比べると若干格下だが、それでも戦闘能力に長けた夢幻旅団の団員である以上、幾ら成長したアビウス達とは言え、勝つ事は至難の業であった……。


 然し、ジルバーは戦うつもりが無いらしく、アビウス達にとある提案を(オコナ)った……。


 果たしてその提案とは……?


 「唐突な事で申し訳御座いませんが、貴方方アナタガタに”協力”を願いたいのです……!」


 〈協力……だと?〉


 話を聞いてみると、どうやらジルバーは夢幻旅団を抜けて、これからは真面目に生きる為に《英傑旅団(エイケツリョダン)》に入団したいとの事だった……。


 そして、その英傑旅団に入団する為には、今や絶滅危惧種にまでなって仕舞った"女の獣人族の保護”が必要との事……。


 なので、自らが英傑旅団に入団するのに必要な条件を満たす為にも、是非とも一緒に付いて来て欲しいとの事だった。


 然し、流石のアビウス達もこの様な話を簡単に信じる程に愚かでは無かった。


 このジルバーとやらの戯れ言に対して、無視を決め込もうとしたアビウス達であったが……。


 一人だけ、蒼色の和服を着た少女……。

 サヨコだけが、ジルバーの言葉に興味を示す……。


 「待って! 私、この人に付いて行く! 私は、この人の助けになりたいよっ!」


 「なっ! お前は馬鹿かサヨコッ! コイツは、あの私達の仲間を攫った”夢幻旅団の団員”なんだぞッ!?」


 「でも、きっと彼は心を入れ替えたんだよっ! だって、このジルバーって人の目、凄くキラキラしてるじゃないっ!?」


 そう言われてみると、確かに男の目は”正義感に満ち溢れている”様な目付きをしていた……。


 「と言う訳で、私は行くからねっ! バイバイみんな!」


 「ちょっと、待てってサヨコッ!」


 皆は、ジルバーに付いて行こうとするサヨコを必死に引き留めたが、サヨコは意地でもジルバーに付いて行こうとする……。


 そして、その一連の流れを静かに見詰めていた鯛造が、痺れを切らしたかの様にサヨコに詰め寄った。


 「な、なに鯛造さん……? は、反対されても私はジルバーと一緒に、”英傑旅団の本拠地”に行くからねっ!」


 すると、鯛造は静かに口を開くと、ゆっくりとサヨコに問い掛けた。


 「サヨコさん。 これからは何が起こっても自己責任ですぞ。 だから、君が決めた事を私達が止める権利は有りませぬ。 ただ、後悔だけは決して致しませぬ様に”心得よ”……ッ! ……それだけ、伝えたかったのです。 態々引き留めてすみませんでした。 それでは、お行きなさいサヨコさん……」


 「鯛造さん……っ! 今迄、こんな泣き虫な私の事を面倒見てくれて本当に有り難う! それでは、行って参ります……ッ!」


 そして、その鯛造の言葉に対して、サヨコはコクリと頷くと、ジルバーと共に英傑旅団の本拠地がある場所へと旅立って行った……。


 然し、これで一件落着かと思われた数日後に、今度は”悪鬼旅団”の率いる大量の団員達がアビウス達が暮している住処に襲い掛かって来たのだ……!


 この襲撃による負傷者は出なかったものの、アビウス達は散り散りになって仕舞った……。


 そして遂にアビウス達は、数年経った今現在でも未だに再会を果たす事は出来なかったが、つい先日迄『試練の大地シビキイ』の街に在住していたアビウスが、とある酒場で”情報収集”をしていると一組の旅人達の話し声が聞こえて来たのだ……。


 聞き耳を立ててみた所、どうやら半年前に始まりの大地ストファーの”古代遺跡”で大きな抗争が起こり、大勢の犠牲者を出したとの事だった……。


 然しこの話は、アビウスの耳に前から届いている情報だったので、アビウスは特に気に留める事は無かったが、その旅人達は次の瞬間にアビウスにとって、”一番知りたくて”、そして”逆に一番知りたくもなかった”情報も話していた……。


 その内容とは……。


 「なぁなぁ、半年前の”あの事件”ヤバかったよなぁ〜!」


 「あぁ……! 今でも話しを聞くだけで身震いしちまうぜぇ……!」


 「しかも、あの事件は絶滅危惧種の”獣人族の女”も巻き込まれたんだったよなーっ!」


 「あぁ、確か……名前は……。 ”ネリアス”……だっけか? 確かそんな名前だった気がするよ……」


 「然し、何で寄りにも寄って、絶滅危惧種の獣人族の女を殺しちゃうかな〜? 捕まえれば”大金を手に入れるチャンス”だってのに……勿体無い……!」


 「いや、待てよお前……。 確かに数年前までは獣人族の女は高値で取引されていたが、全世界で絶滅危惧種にまで認定されちまった獣人族の女は、もう取引に出す事は正式に御法度になったぜ……」


 「はぁ!? マジかよ……! じゃあ、だから生け捕りになる事も無く……ただただ惨たらしく殺されちまったってのか……!?」


 「全く、嫌な事件だったぜ……。 因みに、その遺跡の事件に巻き込まれた犠牲者の亡骸は、始まりの大地ストファーに在る『教会ノイリの地下墓地』で、丁寧に一人ずつ身元不明の奴の墓まで作られて埋葬されているらしいなぁ……」


 と、その様な会話を聞いたアビウスは……数秒の間”思考が止まって”仕舞った……。


 〈…………う………嘘だ……。 ネリアスが……死んだ………?〉


 〈………そんな…………馬鹿な……事が……!?〉


 アビウスは、その瞬間に急激に得体の知れぬ”疲労感”を覚えた……。

 そして、その日は混乱した頭を整理する為に、足早に家に帰ると、そのまま深い眠りに就いた……。


 そして、次の日。

 起床したアビウスは、一旦ネリアスが亡くなって仕舞ったと言う事を全面的に信じてみる事にした。


 もし、本当に自分達の故郷の村が在った『始まりの大地ストファー』に在る教会ノイリの中にネリアスの墓が在るならば、今すぐにでも、その場所へ向かわなければいけないと思ったからだ……。


 そして、アビウスは、ネリアスが好きだった”食べ物”や”玩具”を買い始めた……。


 そしてそれ等を、ネリアスのお墓が在る始まりの大地ストファーの教会ノイリにまで持って行き、ネリアスの墓に御供え物を届ける為にアビウスは、試練の大地シビキイから始まりの大地ストファーに迄、遥々歩みを進めていたのだった……。



◇■◇■◇■◇■◇■◇



 そして、アビウスは回想を終了し、再び教会ノイリに向かって歩み続ける……。


 〈フッ……。 少し”昔の事”を思い出していた……。 我もまだ精神が未熟だな……〉


 「む、どうやらやっと教会ノイリの姿が見え始めたな……。 って、むむ……っ!?」


 すると、チラリと教会ノイリの方を見てみると、其処に良く見知った様な風貌の人物が居る事に気が付いた……。


 「……え? その姿は……。 た、鯛造……さんっ!?」


 アビウスは、声を荒げながら慌ててその見知った風貌の人物の下へと駆け寄ると、そのアビウスの声に気が付いたのか、黒色の和服の男が驚いた様子でアビウスの姿を見詰めていた……。


 「えぇっ!? そ、その懐かしい声はアビウスさん……ッ!? これは……ッ! そうか君もネリアスさんの墓に御供え物を……ッ! ネリアスさん……君が私達の事を導いてくれたと言うのか……?」


 数年振りに、アビウスの姿を見た鯛造は、余りもの嬉しさに涙ぐむ……。


 そして、その当時のままに立派な髭を蓄えている鯛造の姿を見たアビウスも、つられて泣きだして仕舞う……。


 「うぅ……鯛造さん……ッ! 我は貴方と……ッ! ずっと、ず〜っと……! 御会いしたいと願っておりました……っ! ヒック……ッ!」


 「えぇ……っ! えぇ……ッ! 私も、まるで本当の愛娘の様に可愛がっていた貴女と再び出逢う事が出来て……とても嬉しいですぞ……っ!」


 「うえ〜ん……! 鯛造さ〜ん……!!」


 「よ〜しよし……っ! 私の胸の中で好きなだけ泣くと良いよ……っ!」


 かくして、アビウスと鯛造は、お互いに寄り添いながら、奇跡的な再会を強く噛み締め合いながら喜んだ……。


 因みに、天界でセウンとタクヤが見ていた鯛造の姿は、この場面の数秒後だったのだ……。



【現在位置】

【教会ノイリ前】


【現在の日時】

【4月7日 14時5分 春】



【アビウス】

【状態】:感激

【装備】:紫色の和服 破滅の剣

【道具】:御供え物

【スキル】:閃光斬り

【思考】

1:鯛造……さん……!

2:あっ! 鯛造さんも……御供え物を持っているな……。

3:鯛造さんも、我と一緒の考えでネリアスの墓に向かってたのだな……。

【基本方針】:ネリアスの墓に御供え物を届ける。鯛造に座衛門達の様な素晴らしい人間が居た事を話す。アケミとサヨコとも再会したい。



【竜胆園鯛造】

【状態】:感動

【装備】:黒色の和服 スーツケース

【道具】:御供え物 スーツケースの中に和服や財布が入っています

【スキル】指導効果最大【効果】:指導する際に、指導した相手が稀にスキルを自力で習得する事が出来る様になる。

【思考】

1:アビウスさん! 君が生きてて本当に……良かったッ!

2:ネリアスさん……。 君は亡くなって仕舞ったが、君も私達の立派な家族だ……!

3:アケミさんに、サヨコさん……。 君達も、どうか無事に生きててくれよ……。

【基本方針】:ネリアスの墓に御供え物を届ける。アビウスと一緒に行動する。アケミを捜索する。無事に英傑旅団に入団する事が出来たらしいジルバーとサヨコとも会いたい。


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